第31話 オフコラボ feat. 夢見サクラ #1

「それじゃあ説明するけど、まずはこっちにあるカメラで顔認証をしてね。そしたらこっちの配信画面に映るようにしてるから」


僕らは今、来夢に最終確認を受けている。


というのも使いやすいように少しプログラミングをいじったみたいで、いろいろ注意しないといけないことが多いみたい。


「お兄ちゃんと霧江さんは顔認証するとそれぞれの活動モデルが、認証が済んでいない私やお義姉ちゃんが顔認証すると顔をもとに作られた3Dモデルが出てくるからね。顔認証してないとメインのカメラに映らないから気を付けて」


要するに顔認証してから配信しろっていうことだね。


「それと一回席を離れるとモデルは消えるからもう一回顔認証をやり直してね」

「分かりました。それで来夢さん。触ったらいけない機能などはありますか?」

「触ったらいけない機能は電源だけですね。そこを触ってしまったら配信が終了してしまいます。あと、もしアプリが落ちてもあわてずにアプリを開いてください。もう一度顔認証からになりますが配信はできます」

「分かりました」


要するに電源ボタンは爆破ボタンで、アプリが落ちるのはスマートフォンがスリープ状態に入るってことだね。


……これを一か月でするなんて、やっぱり来夢はすごい子だ!


「それじゃあ私は隣の部屋で配信を見ていますので、何かあったら連絡します」

「ありがとうございます」

「気にしないでください。実施テストも兼ねているので」


これで音楽制作もしてるんだよ。

凄くない?


「来夢さんとてもすごい方ですね」

「自慢の妹です」

「ふふふ、お二人を見ていたらものすごく伝わりました。それでは配信しましょうか」

「そうですね」


***

『ご主人様、お帰りなさいませ。本日は僕の配信に来て下さりありがとうございます。あなたの執事、神無月ヤマトと』

『皆さん、いい夢見てますか? ガーデンランド所属の夢見サクラで~す。こんサクラ!』



ただいま~。

こんサクラ!

こんサクラ!

ただいまザクラ

ただいま~

ただいまザクラいいな!

……ヤマトファンはいつものない感じか?

まぁ、オフコラボらしいからね。

オフコラボっていうことはヤマト東京に行けたんだ!



『皆様、本日はお騒がせしてすみませんでした。僕神無月ヤマトは無事に東京に降り立つことができました』



おお!

よかった!

ということはいまガーデンランドのスタジオ?

ガーデンランドってオフコラボはスタジオ配信だっけ?

確かそうだったはず……



『いえ、実は私の家で配信しています』



え!

ヤマトと二人っきり!

サクラにとってヤマトは男性だからてぇてぇ配信か!



『あ、隣の部屋にはカナママと妹がいますので二人きりではないですよ』

『そうそう、妹ちゃん凄かったですよね』



妹居るのか……女子会?

そこに行きたい?

妹さんの声が聞きたい

カナママはいいから妹の声を聞かせてくれ!

カナママ:

今言ったやつ出てこ~い

カナママいるじゃん!

え、なに、ヤマト? の妹ってそんなにいい声なの?

妹ちゃんがどんなにすごかったのか聞かせて!

妹ちゃんの声は神の声だぞ!



思った以上に来夢の声の中毒にかかった人が多かった。


『えーっと、妹ちゃんの声は聞かせられないかもですけど、凄いことをした話は聞かせてあげますよ~。あ、でもこれ話して大丈夫ですかね?』

『今妹に確認取ったところ問題ないそうです』

『分かりました。それではお話いたしますね。ヤマト君の妹さんがどれだけすごかったのか』



気になる!

ヤマトみたいに無限の声の持ち主とか?

妹すごいところも気になるけどあの声を聴きたい!

妹の声ってそんなに中毒性あるんだ。

こんなに行き来しているサクラ見るの初めてだから相当すごいんだろうな。



『実は今配信しているのは私のパソコンなんですけど妹ちゃんの作ったアプリを使って配信してまーす!』



は?

アプリ?

え、どいうこと?

妹ちゃんが作ったって……え?



『詳しく説明するとこのオフコラボは急に決まったもので、僕はオフコラボしたことがなく、サクラ様は事務所でしているので家でのオフコラボは初めて。誰もやり方わからなかったので立ち絵にしようとしたんです』

『そしたら妹ちゃんが配信に便利なアプリを作っていたらしくて、実施テストを踏まえてそのアプリを使い配信することになったんです』



え、妹ちゃん何者?

そもそも何歳?

神無月家天才のそろい踏みやろ

あれ? ヤマトがデビューしたのは約1ヶ月前……。制作時間たりなくない?



『制作時間? よくわからないですけど妹は僕がVtuberをすると知って、半月でプログラミングを覚えて残り1ヶ月でこのアプリを完成させたみたいですよ』



……はぁ!?

いやいや、無理だろ!

ヤマトにしては下手な冗談じゃん!

普通アプリの開発は6ヶ月から1年よ!

本当に1ヶ月だったら人間の域超えてるって!



『ヤマト君違いますよ。2日でプログラミングは覚えたらしいです。それで残りの時間を休みの日や学校の休み時間などを使って作成したって言ってました』

『ああ、道理で速いと思いました。学校があるのに1ヶ月でアプリを完成させるなんておかしいと思ったんですよ。学校でしていたのなら納得ですね』



いやいやいや、納得じゃねぇから!?

何この人たち、感覚狂い過ぎでしょ!

天才と天然にしか理解できない領域すぎる……

妹ちゃんって何歳なんですか?



『妹の年齢? それは教えられませんけど、僕より下ではありますね』



そらそうだよな!

ヤマトは確か中卒でいま15歳

双子と想定して今高校一年生。

普通の兄妹だとして中学生より下……

今の中学生ってプロ顔負けのプログラミングできるんだ……。

俺プログラマーだけど、アプリの開発は6ヶ月から1年は会社全体だから、ふつう一人でやるとこれの数倍はかかる。



え、ガチ?

アプリの制作ってそんなにかかるんだ……。


隣にいるサクラ様も僕と同じ反応のようで驚きを隠せていない。


『そういえば妹ちゃん、プログラミングは物語を描くみたいで楽しいって言ってました。あとタイピングについては撫子さんのMytubeの編集をしたら身に付いたらしいです』

『あ、ああ、だからあんなに早かったんですね。それがアプリ作成の秘訣かもしれませんね』



それでも普通もっとかかるから……。

妹ちゃんが何者なのかの謎が深まった。

とりあえず人の領域にいるってことは分かった。

もう、これ以上俺たちを狂わせないでくれ、妹ちゃん……



『い、妹ちゃんの話はここまでにしましょうか』

『そ、それもそうですね。それでは謝罪も済んだところでオフコラボ始めていきたいと思います! 今日のお相手はガーデンランド所属の四期生夢見サクラ様です!』

『ご主人様の皆さんよろしくお願いしまーす』



逃げた、

逃げた!

逃げたけどあのままじゃオフコラボが妹ちゃん話になっていた……

そう言えばこれ謝罪から始まったんだったな……。



『私から誘っていてあれなんですけど、ヤマト君は私とコラボしてよかったんですか?』

『え、どうしてですか?』

『ヤマト君のガチ恋勢は多いですし、本当に私から誘っておいて悪いんですけど炎上したらどうしようって思って……』

『ああ、多分大丈夫ですよ。僕にガチ恋してくださっているご主人様たちはとてもいい人なので、僕が女性とオフコラボしても炎上はしないんじゃないでしょうか。……ただ』



ヤマト様親衛隊003584

見張ってます

¥12,000


ヤマト様親衛隊000254

監視中

¥3,000


ヤマト様親衛隊011124

ただいま何も問題なし

¥2,000


ヤマト様親衛隊

僕はヤマトちゃん派だから問題ないけどね!

¥1,000



『親衛隊の皆様に見張られているので、少しでも何かしてしまうと炎上しちゃうかもしれません』

『親衛隊なのにですか?』

『あ、でもサクラ様には被害が行かないようにします。もし言ってしまったらその時は本気で怒りますので、もしかしたらガチ恋もやめさせるかもしれません』

『そこまでするんですか?』

『はい、ガチ恋を許している条件に「他人に迷惑をかけない」というのがありますので』



え、そんなのあったんだ。

これは常識だろ

いや、行き過ぎると常識から離れてしまうから条件着けるのは間違いじゃない。

サクラに被害が出たら、ヤマトがガーデンランドに潰されるだろ。



『サクラ様はガチ恋を容認してるんですか?』

『私は容認してませんね。ガチ恋されても私の方から返せるものがありませんので』


意外。優しい人だからガチ恋を容認していると思っていた。……いや、優しいからこそ容認していないんだ。

だってサクラ様の家は……。


『ただ見に来てくださっている方にはいつも感謝はしていますね。私の配信を見に来てくださってありがとうございますって』

『それは僕もですね。1ヶ月Vtuberをして分かったんですけど、やっぱり一人じゃできませんもんね』

『そうなんですよ。私は事務所があって同期がいて先輩がいて、そして後輩ができて、こうして友達もできました』

『僕もですよ。行きたくなかった東京で今日楽しいと思えたのはサクラ様が案内してくれたからです。本当にありがとうございます』

『いえいえ』



……浄化されそう

普通にいい配信じゃないか!

てぇてぇ配信なんて言ってごめんなさい!

二人とも礼儀正しいせいか、普通の雑談なのに上流貴族の交流に見える!



『上流貴族……あ、ヤマト君、少しわがまま言ってもいいですか?』

『え、いいですけど……』

『実は私してみたいロールプレイングがありまして、少しだけでいいのでお嬢様と執事でロールプレイングをしてもよろしいでしょうか。できればヤマト君の声は低めでお願いします』

『「分かりました、お嬢様」』


こうしてなぞのロールプレイングが幕を開けた。

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