第26話 凸待ち配信のその後
「ふぅ、ようやく終わったー」
配信を閉じ、後ろにあるベッドに倒れ込むように飛び込む。
一時間近く座っていただけに体中がとても固い。
ベッドのふわふわ感がとても気持ちぃ~。
「それにしても最後に三組も来てくれたけど、今何分かな?」
時計を見るとは時間は既に23時半を回っていた。
予定の30分も超えちゃってる。
「ご飯も食べたしお風呂にも入った。今日の洗濯とかも来夢がしてくれたし、もう寝ようかな」
それにしても、今日は本当にいろんな人が来てくれた。
夢見サクラさんは義姉さんとの逆凸コラボで僕のところに来てくれたし、何よりも小学生の時にいた和服のお義姉さんだったなんて、不思議なめぐりあわせだよ。
その次に来てくれた飛鷹凛音さんは……なんというか、テレビで見ていたイメージとはだいぶ違った人だったな~。
何よりも凛音さんが「りんえ」さんだったなんて思いもしなかったよ。
だって『Rinne』ってアカウント名だったんだよ!
凛音さんだったら『Rinnne』じゃないの!?
『n』が一個たりないじゃん!
でも、あの飛鷹凛音さんが僕のことを……早く気づかせてあげないと!
行き過ぎたガチ恋は黒歴史に発展しかねないことをっ!
おかげで思い出した。
僕が凛音さんにガチ恋した時の黒歴史を……。
「ああぁぁ~!」
いや、今は忘れよう。
あれはなかった過去として封印したんだ。
でも僕のことを好きでいてくれるだけでも嬉しかった。
会うのが少し怖くなったけど。
そして最後に三条ヶ原楓さん。
多分だけど今回の凸待ちで一番仲良くなれたと思う。
なんていえばいいのかな?
気の合う女友達?
絡みやすい友達?
……友達がいたことないから何て言えばいいのかわからない!
でも現役声優に僕の声をほめてもらえたのは、僕にとっては貴重な経験だったかも。
今までは家族以外に披露する相手もいなかったし、コメント欄では『似すぎて逆に引く』って書かれることはあっても、直接言ってもらってるわけじゃないから嬉しいって実感はあまりわかなかったからなー。
………………よくよく考えたらこのメンツ。新人Vtuberの凸に来るような人たちじゃなくない?
むしろベテランの人のところに来るような人たち。
僕なんてまだ10万人にも満たしてない個人Vtuberだよ!
今後どこまでいけるかもわからないし。
もしかしたら今後落ちていくことがあるかもしれない。
今回の貴重な体験は思い出にしておこう!
そして僕は睡眠に入った。
この時の僕は気づいていなかった。
僕のチャンネル登録者数が、すでに10万人まで一万人を切っていたことを。
そして、再びトレンド入りしたことを。
~~~~~~~~~~
とある掲示板
神無月ヤマトについて語ろう。
201:名無し
凸待ち配信、終わったな~……
202:名無し
>>201
何たぞがれてんの?
203:名無し
>>202
いや~、どうなるか楽しみだっただけに、終わるのはあっという間だったな~、と思って
204:名無し
>>203
分かる!
205:名無し
>>203
だよな!
206:名無し
>>203
途中までどうなるかとドキドキしながら見てたもん
207:名無し
>>206
ホントにそれ! いい意味でも悪い意味でも……。
208:名無し
>>207
マジで、最後の方は見てる俺ですら諦めた。
209:名無し
>>208
私なんてお祖母ちゃんの写真に神頼みしちゃったよ!
210:名無し
>>209
なんでお祖母ちゃん?
211:名無し
>>210
お祖母ちゃんが撫子さんの大ファンだったから……撫子さんの子供を救うためなら神様になってくれるかな~、と思って。
そしたらそのあとすぐに夢見サクラさん? が来てくれた!
212:名無し
>>211
お祖母ちゃんすげぇ!
213:名無し
>>211
仏壇に神頼みするのはどうなん?
214:名無し
>>213
あ、お祖母ちゃん生きてます。現在ぴんぴんしながら撫子さんのドラマ周回してます。
215:名無し
>>214
生きてんのかよ!
216:名無し
>>215
縁起でもない話はやめて話を戻そう。
誰の凸がよかった?
217:名無し
>>216
凛音
218:名無し
>>216
凛音
219:名無し
>>216
サクラの逆凸
220:名無し
>>216
三条ヶ原楓さん
221:名無し
>>216
凛音一択
222:名無し
やっぱり凛音多いなw
223:名無し
>>222
それはそうよ。案だけポン出しまくればw
224:名無し
好きな人の前だと感情の制御がまったくできてなかった。
225:名無し
ドラマとの恋愛では大違い
226:名無し
ヤマトとの恋愛ドラマだったら取り直し地獄だろうな~
227:名無し
ヤマト本当に凛音とコラボするのかね?
228:名無し
>>227
どうして?
229:名無し
>>228
コラボしたらヤマトの貞操が危ないよ
230:名無し
>>229
いやいや、流石に凛音さんでもそのくらい制御はできるやろ。
231:名無し
>>230
今日の配信見てもそういえる?
232:名無し
>>231
ごめん。今日の配信見た後だと全然自信がない。
233:名無し
>>233
だろ?
234:名無し
正直サクラや楓とのコラボの方が安心して見れる。
235:名無し
>>234
確かに、サクラさんはヤマトのことを弟としてみてる節があるし、楓さんは完全に友達以上になれない感がする。
236:名無し
>>235
それに、凛音は2、3歳しか離れてないけど、他の2人は20越えやろ?
237:名無し
>>236
楓に関しては三十路
238:Kaede
>>237
誰が三十路や! こちたらまだ25ぞ!!
239:名無し
>>238
え、本物!?
240:名無し
>>238
なんでいるの!?
241:Kaede
>>240
いたら悪い?
242:名無し
>>241
いえいえ、
243:名無し
>>241
滅相もございません! いつでもいてください!
244:Kaede
まぁもう寝るけどなw あまり私の悪口言ってると特定するからな! お休み~
245:名無し
>>244
お休みなさーい
246:名無し
……もう行った?
247:名無し
>>246
多分……
248:名無し
いやー、本当におっかねぇばばっ、お姉さんでしたね~
249:名無し
>>248
どうした?
250:名無し
>>249
あの人のことだ。寝ると言ってまだ見てるかもしれない!
251:名無し
>>250
つまり今日はこれ以上ふざけたことが言えないということ?
252:名無し
>>251
そうなるな
253:名無し
じゃあ今日はもう終わりか?
254:名無し
>>253
そうだな
255:Kaede
>>254
え、もう終わりなの?
Kaedeのそのコメントを最後に、その日は誰もコメントを書き記さなかった……
~~~~~~~~~~
凛音side
私は今、さっきの凸をものすごい後悔してしまっている。
残っていたアーカイブを見返しても、さっきまでの私はヤバすぎる。
言ってしまえば私じゃない私がヤマト様と会話しているような感じ。
あーなんであんなこと言ってしまったの、私!?
「何がてぇてぇコラボよ! 何がオフコラボよ! 何がお泊りコラボよ! バカバカバカ! 私のバカ!」
あまりの恥ずかしさに、枕を何度もベッドに力強くたたきつける。
「はぁ、はぁ、はぁ。あー、ヤマト様に嫌われたー! 絶対に嫌われたよー! さようなら私の初恋……」
私の自爆で終わってしまった初恋。
その悲しさに浸っているとき、誰かから電話が来る。
相手の名前を見て、一気に体が強張る。
相手は『神無月撫子』さん
ヤマト様の実の母親。
「こ、こんばんわー」
『こんばんわー。夜分遅くにごめんなさいね』
「いえ、明日は撮影もありませんので。どうしたんですか? 撫子さんは明日も撮影ですよね」
『ええ、明日は私がメインのシーンだから。そんなことより、見たわよ。凸待ち配信』
「え」
終わった。
まさか見られていたなんて。
『凸るのが遅かったこと以外なかなか良かったっわよ』
「え?」
『特にコラボの
想定していたこととまったく別の展開。
てっきり怒られるものかと思っただけに、心のどこかで落ち着いてしまっている。
『新しい凛音ちゃんが見れて私は面白かったわよ。まぁ、ヤマトは引いてたけど』
「や、やっぱりそうですよね……私、嫌われちゃいましたかね?」
『そんなことないんじゃない?』
「え?」
『ヤマトはただ単にぐいぐい来られて引いちゃっただけだろうし。何よりそんなことで人を嫌いになるような子じゃないわよ、あの子は。母親の私が言うんだから安心しなさい!』
「は、はい!」
なんだか撫子さんの話を聞いていると本当に安心できてくる。
『まぁ母親と言っても、会うことはほとんどないけど』
あ、気のせいかも。
『そんなことより、ヤマトとコラボするのはいいけど手を出すのはヤマトの同意が取れてからにしなさいね。それさえ取れれば私は何も言わないから。まぁヤマトの方から断るでしょうけど』
「え、いいんですか?」
『同意が取れてからね? 無理やりしたら凛音ちゃんでも怒るわよ?』
「は、はい!」
マジトーンで怖すぎる!
でも同意が取れれば……
一緒に手を繋いだり、抱き枕にして一緒に寝たりできる!
「へ、へへへっ」
『わ、私明日も早いからもう切るわね。お休みなさ~い』
抱き着いたりや、コスプレごっこ。
夫婦ごっこもいいかな!
妄想がどんどん膨らんでしまう。
気づいたときには日がすでに上っておりお昼頃にようやく眠ることができた。
~~~~~~~~~~
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