第24話 凸待ち配信 #2

夢見サクラ


大手Vtuber事務所ガーデンランドの四期生。

ガーデンランドのコンセプト「清く、正しく、美しく」を体現したお嬢様Vtuberでありながら、過去に一度大炎上した経験も持つ。


Vtuberとしての顔以外にもライトノベル作家としての顔も持っており、先日6巻が出たばかりでアニメ化も決定している。


小説のイラストレーターは花村カナが担当している。


そんな大物がなぜか僕の凸待ち配信に凸してくれた。


「えーっと、ガーデンランドに所属している夢見サクラさんが来てくれました! 初めましてー」

『一応、初めまして~』



マジか!

大物中の大物!

誰?

Vtuberヤマトしか知らない

マジか!



「知らないご主人様もいますので一応紹介しておきますと、今来てくれた方は夢見サクラさん。先ほど説明したガーデンランドに所属するVtuberで常識組の人です」


よかったー!

凸0回避できたよ!

僕はこのまま夢が正夢になるものかと……。


あれ? 目から涙が……。



あれ?

サクラって今日配信してなった?

俺二窓してるんだけど、どっちの配信からもヤマトとサクラの声が聞こえる。

ということは……



『夢見サクラでーす。それよりもヤマト君。実は私たち、逆凸企画してるんだけど挨拶お願いしていいかな? こっちにもヤマト君のこと知らない人いるみたいだから』

「え、あ、はい、えー」


しまった!

僕が逆凸されたときに相手にする挨拶考えてなかった。


お帰りなさいませ、は少し違う。

ただいま参りました? 微妙に違う。


よし、普通にしよう!


確か、夢見サクラさんのファンネームは『木の枝』さん。


「初めまして、『木の枝』の皆様。神無月ヤマトと申します。しがない執事をしておりますのでお見知りおきを」

『はい、ということで一人目は今話題の新人Vtuberの神無月ヤマトさんに逆凸させていただきました~。ほら、カナちゃんも何か言ってください』

『えっ!?』


その時通話アプリから聞き覚えのある声が、というよりもカナママだよね?


「あの~、できればもう一人の方も挨拶していただけると……」

『そうですよね。ではお願いいたします』

『あーはい、イラストレーターの花村カナで~す。ご主人様の皆様よろしくお願いしま~す』

「はい、ということで僕のもとに夢見サクラ様とカナママが来てくださりました」


セットしていたテキストボックスに『夢見サクラ様』『カナママ』と打ち込む。


ようやく、ようやくここに名前を載せることができた!


『どうしますかヤマト君。こちらも逆凸した皆様に質問したいことがあるのですが……』

「では、サクラ様の質問から答えていきましょう。ですがその前にカナママ……いえ、義姉さまに聞きたいことがあるんですけど」

『な、何かな~?』

「家族会議の内容って何ですか?」



やっぱりそれか!

まぁ分かっていた。

我々も気になってたし。

これを聞かないと夜しか眠れない!



「え~っと、お義父さんから連絡があってね」

『父さまから?』

「うん、その内容が『今回のヤマトの凸待ち配信、家族の凸は禁ずる』っていうのなんだ~」



父親命令!

家の大黒柱!

撫子ママの旦那さん。

確か声優さんだったよね?



『え、理由は?』

「ヤマトはVtuber始めてから一気に人気になったけど、その半分は家族やライムさんの影響力だから、その影響力がなくなった今の自分の力を知ってほしかったみたい」

『……いつものですか』

「そう、いつもの」

『え、なになに?』



神無月家で話が完結してて草

俺たちにも教えてくれ!

とても気になります!


神無月家推し

いくら払えば教えてくれますか?

¥2,000


「そのですね。僕の父さまなんですけど、ごく稀に試練だと言って、僕たち子供に試練を課せてくるんですよ。僕は2年前だったんですけど、1日10キロマラソンでしたね。父さまはいないんですけど、妹に監視されながらしたのを覚えています」

『私は結婚する時だったな~。結婚したければ将棋に勝って見せろ! って言われて、やったことなかったから大変だったよ。まあお義父さん弱すぎて1戦目で圧勝したんだけどね』

「確かに、父さま将棋好きの割には弱いですからね」

『つまり、二人のお父さんが試練を出すのは子供たちを思ってのこと、ということですか?』

「そうなりますね。おかげで、僕が今までどれだけの人に支えられていたのかが分かりました」



確かに。

撫子ママたちが来ないだけで凸0人達成しそうだったからね

おかげで、サクラが来た時の嬉しさは俺たちも味わえた!

子供思いのお父様じゃないですか!



『なぞも解けたようなので本題に入りましょう! 私たちからヤマト君に聞きたい質問は2つです。一つ目に、私たちの第一印象をお願いします』

「第一印象ですか。……すみません。サクラ様にはあったことがないので何とも。カナママに関しては小さいころにはいたのでお姉ちゃん、ですかね」

『えーっと、カナちゃんはいいとして、実をいうと私とヤマト君、小さいころに会ったことあるんですよね……』

「は?」



え、

どいうこと?

幼馴染?

ラブコメ?



僕とサクラさんがあったことある?


いや、そんなはずはない。

もし本当なら、僕が彼女の声を忘れるわけがない。


『私たちが小学生のころなんですけど覚えてますか?』


小学生、確か咲良さんの年齢は21歳。

これが本当なら僕が15だから、『21-15=6』

だから可能性があるとしたら僕が小学生の時……あっ!


「も、もしかしてですけど和服のお姉さんですか?」



和服?

いや小学生だろ。

流石に和服はないでしょw

しかもリアルの話をがっつりしてるし……


『一応正解です』

「思い出しました! 一人だけ学校に和服で来ている6年生!」

『昔は和だけでしたので』



え、マジ!

こんな偶然ある?

今のサクラからは想像できない


見知らぬロリコン

和服女児小学生。めっちゃ気になる!

¥7,000


おまわりさ~ん。ここに変質者が~



『その時のでいいので第一印象をお願いします』

「分かりました。あの時のことは鮮明に覚えてますよ。一人だけ和服だけで目立っていただけでなく、僕たち下級生にとても優しくてよく遊んでくれたし、当時の一年生はみんなサクラ様にあこがれてましたよ」

『な、なんかそういってもらえると嬉しいです。今でも一年生にもらった千羽鶴は飾ってますよ』

「ああ、卒業式にあげたやつですね!」

『え、あれってヤマトたちにもらったの?』

『そうですよ』

『あれの半分は私と一郎君が折ったんじゃなかったかな~』

「あーそれも覚えてます。確か、一年生たちでやろうと言ったのはよかったものの、折れない人もいて千羽に足りなそうだったから、進みが早い僕に押し付けられたやつですね」

『あの時は大変だったな~』



第一印象から思い出話に……

3人とも企画のこと忘れてない?

なんかほのぼのする話~

楽しそうに会話する3人が脳裏に浮かぶうぅぅ!



ヤバい、懐かしすぎるがあまりに忘れていたけど今配信中だった。


「サクラ様、思い出話はここまでにして次に行きましょう」

『そうですね。じゃあ次の質問です。私とカナちゃん、1日一緒にいられるならどちらがいいですか?』

「サクラ様で」



即答っ!

それはそう!

まぁ、ヤマトとカナママは一応義姉弟だから。

当り前の答えだね。



『ヤマト~、少しは考えるそぶりを見せたら~?』

『因みに理由を聞いてもいいですか?』

「えーっと、シンプルに僕とカナママは義姉弟ですし、カナママと言ったら1日の半分が兄さまの話でつぶれるのは目に見えているので」

『そりゃあ、私と一緒にいるんだから、一郎君のすばらしさを布教しないと~』



いちろー(ヤマトの実の兄)

俺も加奈ちゃんのすばらしさ布教する~!

¥10,000


兄登場!

なぜこっちに



「兄さま、カナママと会話するならサクラ様の配信でしてください」

『あはは、さっきまでこっちにいましたよ。それにしてもいちろー先輩は相変わらずですね』

『そこが一郎君のいいところ!』


あ、そうか。

サクラさんは義姉さんたちの後輩か。


『それでは次はヤマト君の質問に行きましょう。何でも聞いていいですよ』

「では僕からは5つほど」

『多い~』

「一つ目に僕の第一印象をお願いします」

『そうですね。小さい頃のヤマト君を知ってるのもありますけど、普通にいい子ですね。お父様はああいってましたけど、ヤマト君一人の力でも人気になれると私は思いますよ』

「あ、ありがとうごじゃいます!」


ゆ、有名なVtuberに褒められてしまい噛んじゃった。

ご主人様は気づいてない、よね?



噛んだ。

噛んだ

こんなヤマト珍しい

噛んだヤマト様もかわいい~。



普通に気づかれてる!

少し恥ずかしいー。


『私はママとして、最高の子だと思うよ』

「どうしたんですか? 真面目過ぎて少し怖いです」

『いつも通りだよ!』


いつも通り?

いつも通り……?


「……そうですね」

『何その間!』

「次の質問行きます」

『逃げたね~』

「次の質問はあなたにとってヤマトは男の子ですか? 女の子ですか?」

『私は男の子ですね』

『私は女の子かな』



お、別れた

これで一致すればヤマトの性別が判別するかと思ったのに!

性別戦争はまだ続くのか……



「一応理由を聞いても?」

『そうですね。小学生のころヤマト君はわんぱくだったので、男の子っていう印象が強いですね。あと私元気な男性が好みなので』

「へ、へ~、そうなんですね……」



あ、照れてる。

可愛い。

「りんえw」さん、強大なライバル現る。

これはヤマトの小さいころを知っている分サクラが優位か?



『私は普通に声かな。男の子だったら高い声出すのは難しいのに、ヤマトは簡単に出せるから』

「なるほど『ありがとうございます』」

『あ、私の声ですね!』



いつ聞いても全く違和感がない。

チューニングなしだからね

いつ見ても凄すぎて逆に引く……



「それでは次です。今後コラボするとして何かやりたいことはありますか?」

『うーん。私はいろいろありすぎますね。歌コラボに雑コラボ、オフコラボなんかもいいですね。ヤマト君が凄すぎて一つに決められません』

「あ、ありがとうございます」

『私は一緒に絵を描きたいな。それでヤマトの新衣装を作る』

「それは、……ものすごく面白そうですね! いつかやりましょう!」

『え、うん』



言ってる本人が嫌そう!

もしかして、ヤマトに抜かれることを心配して……

ヤマトは天才だからね。

本職をも脅かすヤマト様、素敵!



「それじゃあ4つ目です……。え、これ本当に聞くの?」

『どうしたんですか?』

『何でも言っていいよ~。全部答えるから~』

「それじゃあ、ぱ、パンツ何色ですか!」

『……え!?』

『ヤマトのエッチ~。いつも見せてるでしょ~』

「ち、違います! ご主人様たちが聞けって。それにいつも見てるんじゃなくてカナママが見せてきてるんですよ!」



なんかしれっと俺たちのせいにされた!?

え、カナママそんなことしてるの?

女の子同士だからありなのか?

いや、モラルはあるだろ。

サクラの頭がショートしてる!



『ちょ、ちょったまってね。気持ち落ちゃ着けるから』

『サクラちゃん噛み過ぎ~。ちなみに私のパンツは——』

「あ、カナママのはいいです。分かってるから」

『へ?』



え、

どいうこと?

姉弟だからか?

え、俺たちどんなパンツ履いてるか気になるんだけど。



『へ~、そんな下着きるんなら当ててもらおうか~!』

「え、普通に猫ちゃんパンツですよね?」



いやいや、この年になって猫ちゃんパンツは……。

ちょっとエッチかも……。

流石にそれはない。



『な、なんでわかったの?』



え、

は?

まじぃ?



「だって言ってたじゃないですか。仕事をするときは勝負下着って言いながら猫ちゃんパンツを見せつけて」

『ああぁぁぁ!! いつ話したんだ! 私のバカ!』



まじ!

勝負下着なの?

可愛い勝負下着だこと。

普通にエロい。



『なんかカナちゃんの下着見たら自分の下着がまともに思えてきました』

「そうですか、それではお願いします。パンツは何色ですか?」

『きょ、今日は、水色の紐……パンです。……やっぱり恥ずかしい!』

「ありがとうございまーす!」


なかなかにいい情報? が知れた。


……僕のことを男の子だと思ってる人からしたら、僕って相当変態なのかな?

今更気にしてもしょうがないか。


「では最後です。何か宣伝したいことなどはありますか?」

『宣伝、ですか?』

「はい、何でもいいですよ」

『じゃあ二つ言わせてもらってもいいですか?』

「どうぞ」

『では一つ目に、この度皆様の応援のおかげで『現実世界にエルフが現れました 5巻』が販売されました』

『原作者は夢見サクラ先生、イラストは私花村カナが担当しています。ぜひ購入してください!』



買ったー!

今作もよかった!

アニメ化おめでとー!

あれってVtuberの書いた小説だったんだ



「その作品、僕も読んでます! まだ5巻は買ってないので今から楽しみです。では二つ目どうぞ」

『はい。5月5日に私の所属するガーデンランドで新しく入った5期生6人の組み分け配信を行います。この配信はガーデンランドにとって恒例儀式となっていて、毎回面白い名言が飛び出しますので是非見てください』

「僕も毎年見させてもらっています! 今年も楽しみですね。ということで一人目、二人目のお客様は『夢見サクラ』さまと『カナママ』でしたー。ありがとうございまーす!」

『こちらこそ、ありがとうございまーす!』


そして通話が切れる。


「いやー、よかったです。本当に、凸0人回避できて」



俺たちも安心できた

途中親衛隊のスパチャが飛びまくってたからなー

終わりそうなタイミングで来るとか、マジ神タイミング!



「それじゃあ、凸0人回避できたということで、時間ですので今日はこのくらいに——えっ」



お、どうした?

この流れは……。

また誰か来たか?

なかなか配信を終われないw。



え、この人間違いじゃないよね? 僕この人とまったく関わり合いないんだけど……。


もしかして母さん経由?

だとしたらなんでこのタイミング……。

まぁ、何でもいいか。来てくれただけでありがたいし。


「皆様、もう一人来てくれました。では挨拶お願いします」

『……』

「あ、あの、挨拶を……」

『ひゃ、ひゃい!』



この声。

可能性はあると思ってたけどマジか!

私この声は知ってる!

むしろこの配信に来ている人の大半はこの人を知っている!



『ひゃ、初めまして。女優をしています飛鷹凛音と言います! よろしお願いします!』

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