5-4:かくれんぼゲーム ~みいつけた~

 飯田と天童は絶望に打ちひしがれていた。どこが安全で、どこが即死罠のある部屋なのかどうかさえも検討がつかない。罠のあるなしに、ほとんど規則性はなくキサラギへたどり着くことさえも不安になっていた。


「3階で分かってる罠の数は2つか......。待てよ? なあ、以前に2階を探索したとき、3階確認したよな?」


「お前が罠に囲まれた部屋があるって言って、ほいほいついていった時か?」


「そうじゃなくて、もっと前だっての。俺も忘れてた。この先はたしか罠だ」


天童は自分がもたれかかっていた先の扉を叩いた。現に天童が扉を開けようとするも反応がなかった。1度罠が発動した部屋は入ることができない仕様になっていたのか、それを知ってか知らずか天童は開かなかった事実を飯田に伝える。



「本当に開かねえのか?」


「触ってみてよ」


天童の言った通り、扉を開けようとしたがビクともしなかった。飯田は半信半疑だが、いけないという事実にホッとした。


「ま、行けないなら行けないで、罠を探す手間が省けるから助かるけどな」


「だとしたら......」


天童は今まで以上に慎重に考えた。正直、ここで立ち往生したり、閉じ切った扉とは別の扉を開くより別の場所からのアクセスを考えるべきだと考えていた。もし、この部屋にあるもう一つの扉から部屋へ移動できたとしてもキサラギはいるだろうかと思った。だが、彼は確かめたくてうずうずしていた。


「どうしたんだよ。考え込んでて......」


「もしかしたら、この先の部屋にキサラギがいる可能性が高い」


「ほんとか?」


「考えて見ろ。スタート位置の真上にキサラギさんが隠れると思うか? 俺は初めにいったよな? 隠れるなら遠い場所にするって」


「そうだとしたら、スタート位置の真上の部屋より奥って可能性もあるだろ」


「そうだ。そして一番可能性が高いのは真ん中だ」


「真ん中?」


「現状、3階の真ん中はその両隣の部屋から行き来することはできない。そして、2階から3階の真ん中の部屋へたどり着くことも不可能。存在するとしたら、今ここから行くルート、スタートの真上の3階の部屋からのルート、一番奥のルートの3つだ」


彼の考察に飯田は少し合点がいった。とはいえ、この先をいけるとは限らないとも思った。それでも彼の考えに乗るしかなかった。


「......。二人ともお陀仏かもしれんが、分かれるか?」


飯田の誘いに天童は自分の思う通りだと考えていた。結局、自分たち参加者は自分のことしか考えていない。そう踏んだ天童は、実質2つの選択肢を与えて分かれて捜索するように誘導していた。天童は操りやすい駒を見つけて、ニヤケそうになったものの、それを押さえて飯田に説明した」


「そうだな。ここからは二手に分かれよう。僕はスタートの方からいく。一番可能性が少ない方だ。言っている意味は、分かるね」


「ああ、こんなゲーム終わらせてやる!」



飯田は目を輝かせて天童が下に降りるのを見守った。その後、飯田は部屋に勢いよく入った。シンと静まり返り、赤い壁を覆うように別の壁が瞬時に周りを囲んだ。飯田はまずいと感知して、床にある2階への通行口を開けようとするも、どこにもそれは見当たらない。天井には当然梯子はない。突如として、足元の壁からノズルが出てきてそこから液体が出てきた。


「な、なんだ!! くそ! こんなところで終わりたくねえぞ! 天童! くそ! あいつ、分かってここに誘ったのか? あいつが、俺を信用したから......」


液体は飯田の靴を濡らしていく。水とは違う、ぬめりとテカり具合が飯田を不安にさせた。少し移動しようとすると、靴が滑っていき体中にその液体がまとわりついていく。


「くっせ! こ、これ......。油か? もしかして......」


息を呑む瞬間、天井から火のついたマッチ棒が1本また1本と落ちてくる。油に火が回り、飯田の体にも燃え移っていく。


「うわあああああ! やめてくれ、やめてくれ!! 俺が何したっていうんだ! 俺が、何したっていうんだよおおおおおおおおおおおおおお!!!」


彼の断末魔は誰にも聞こえず、天童の方にも聞こえていなかった。

人知れず、死んでいく飯田の一方で、天童は2階のスタート位置の真上に来ていた。



「ん? いまなにか聞こえたような......。だとしたら、ありえるのか?」


天童はすばやく梯子を上り、自分の身を3階に乗り出した。

だが、特に罠も発動せず、部屋は静かだった。


「よし、行けるぞ!」


彼は自分の勘と思考だけを頼りに、もう一つ奥の部屋へと向かう。

さらに扉を開けて部屋に入ると、罠は発動しなかった。天童は意気揚々とキサラギがいないことを確認し、真ん中へと向かう扉を開いた。


「おや、誰か来たようですね」


天童の目線の先には、キサラギがいた。

天童はキサラギを見てホッとしながら指さし、子供のように言った。


「キサラギみいつけた」


キサラギは天童に拍手をしながら、彼に近づく。


「おめでとうございます、天童竜成様。見事、アカイハコからの5つのゲームを攻略しました」


ようやく天童がアカイハコのゲームにすべて勝利した。そして、参加者全員から未来や幸福を奪い取り、自分の幸福を勝ち取ったのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る