4-3:魔女狩りゲーム ~夢追う代償~
またも犠牲が出たことで、残り7名の参加者たちはさすがに戦慄を覚えていた。だが、同時に自分の願いや夢がかなうことも逆にあるのかもしれないという淡い妄想を抱いていた。これこそが、キサラギ自身の目的なのかもしれないが、それは彼自身に聞かなければわからない。参加者たちはキサラギの目的もなにも知らずに自分のためだけにゲームを続けていく。
「じゃあ、今回も裁判にかける人間を決めたいと思うのですが、犬上さん北条さんはどうでした?」
「人間だったよ。多分、あの子マジモンの司祭だったのかもね。他に司祭を騙るやつもいなかったし。まじで魔女サイド優秀かも」
犬上は口元を覆って考えているふりをしていたが、内心ワクワクしていた。志望者がいる中でも彼女は誰が裏切者なのかを推理するのを楽しんでいるのだ。そんなことも気づかない他の人たちはというと、矢坂に注目していた。
「な、なんやお前ら。こぞって俺見て......」
「犬上さんの言葉で、間接的ではありますがあなたが魔女であることが裏付けられました。矢坂さん、なにか弁明することはありますか?」
天童が机の上で腕組みをすると、他の参加者も矢坂の言葉に注目していく。
「せ、せや! 犬上! おまえ、魔法使いやろ! 俺を売って人間アピールしたいだけやろ!」
「私が魔法使いならそんなことしないわよ。たとえどれだけ線が細くてもあなたを守れるよう話を逸らすわよ。どうせ、そんなことしても火に油ってやつでしょうけどね。で、さっきのターン一言も話さなかった美咲っちはどうよ」
富山はため息をついて口を開いた。
「私は村人なんだけど......。はじめからこの人嫌いだし怪しかった。正直北条さんを残して矢坂さんがどうでるかを観たかったのはあったけど、それじゃ自分が殺される側に回されそうだと思ったからやめたの。前のターン矢坂さんを指名したのはそれ」
「思ったよりえげつないこと考えるんですね......」
三吉が眉をひそめていると富山はぴしゃりと言い放つ。
「それであなたが魔女だったら、役者になれるわね。自分の妻子以外はどうでもいいとかいいながら、よくそんな善人ぶれる言葉が出るわ。吐き気がする」
富山の言葉に三吉は少し眉を動かした。その動作を犬上だけが反応していた。他の者は、矢坂を指名するかどうかで悩んでいた。そこに藤宮が口を開きだした。
「やっぱり裁判かけるの、矢坂さんでいいんじゃないかな? 緑川さんの必死さからしてもそうだし。この人の願いは他の人にも悪影響になりかねない。正直、あの宗教の開祖だった古川さんは悪い人じゃないとは思う。でも、この人からはお金の匂いしかしない......。勘だけど」
そういうと、矢坂は立ち上がって藤宮の胸倉をつかむ。
「金儲け考えて何が悪いねん! 世の中結局金やねん! お前の隣のガキも言うてたけどみんな金が好きやねん。俺も好きや。宗教続けるには金がいるねん。どんな手使っても儲けを出す。そうでないと、俺の居場所は......。居場所も金もないのに、願いもくそもないんじゃ! ボケ!!!」
飯田が止めに入ろうとするも、藤宮はそれさえも止めて自分で矢坂の腕を振り払う。自分の力だけには自信があった矢坂だったが、目の前にいるもやしのような男に腕を振り払われたことで彼の怒りは最高潮に達した。彼の拳があがった瞬間、富山が呼び鈴を鳴らした。
『おやおや、指名以外での殺害・暴行は禁止ですよ? 矢坂亮様、席にお付きください。退場にしますよ?』
「ていうか、割とそれ狙いだったんだけど......」
ぼそりと富山が言うと、他の数名もうなずく。キサラギはその言葉に状況をなんとなく悟った。
『なるほど。それでは、満場一致で矢坂亮様が魔女であるということで間違いないでしょうか?』
キサラギの言葉で彼らは再度首を縦に振る。すると、どこからともなく<彼>たちが現れて立ち上がっていた矢坂を持ち上げて壁に張り付けていく。
『矢坂亮様、あなたは多数決により処刑されます。お疲れ様でした』
「ふざけんな......。 ふざけんなぁあああああああああああああああ!!」
さきほどまでとは異なり、電動ノコは素早く矢坂の体を切り裂いた。これまで以上に威力が増していたのか、はたまた魔女狩りが成功した証だったのかはわからない。<彼>たちが矢坂の死体を回収するとまたもキサラギは夜のターンに移していった。
『それでは夜のターンに映ります。全員、目を閉じて顔を机に伏せてください。魔女の者は一人、殺害したい参加者を指名してください。......。僧侶であるものは一人、調べる死亡者を指名して下さい。......。かしこまりました。それでは、皆様顔を上げてください』
キサラギの言葉と共に参加者は顔を上げた。ほとんどの参加者は通常通り起き上がるも、天童だけはキサラギの言葉に違和感を抱いていた。
「司祭はともかく、魔法使いのパートがなかった? もしかして、本当に矢坂さんは魔女?」
「分からないよ? たまたま満場一致だったって可能性もある」
飯田の言葉に訝しげな顔を浮かべながら天童が閉口すると、キサラギが割って入ってきた。
『残念なことに、富山美咲様。あなたは魔女によって殺されました。よって富山美咲、脱落』
「え、私?」
「は? 普通犬上さんじゃねえのかよ」
「セオリー上は......。ですけどね」
混乱が赤い部屋中で舞い上がる中、富山美咲は<彼>たちによって壁に磔にされていく。電動ノコはゆっくりと降りていき、血しぶきは床へと落ちていく。だが、床も赤いせいで死亡者の血痕は見えないようにされていた。
キサラギは平然とゲームを続けていく。部屋の赤色で彼らに闘争心を植え付けて、蝕んでいくようで、参加者たちはもっとこのゲームにのめり込んでいくのであった。
【4thステージ:魔女狩りゲーム】
参加者残り:5 名
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます