4-2:魔女狩りゲーム ~命の重みと夢の重み~

 第4ステージ【魔女狩りゲーム】が始まった。これまで人が死ぬ様を見てきたと思い込んでいた参加者だったが、大村のむごたらしい死により、改めて自分の置かれている立場を理解した。それでも彼は自分の叶えたい願いのためゲームを続けていく。


『さて、昼のターンです。お好きに話し合っていただき、裁判で処刑するものを一人選んでください。必ず選んでください。それでは、決まりましたら呼び鈴を鳴らしてください。よろしくお願いします』


スクリーンに映し出されていたキサラギはスクリーンごといなくなり、またも参加者たちだけの時間が始まった。だが、こんどは誰かを断罪しなければならない。それでも全員は冷静に次に誰を犠牲にするかを協議し始める。


「まず役職明かせる人は明かしていこう。もちろん魔女の人は嘘ついてくれなくていいんだけど......」


まず飯田がトップバッターとなり、極めて白いように見られるような言葉を選んだ。すると飯田に呼応するように、緑川が手を挙げて役職を明かした。


「私は司祭だったわ。さっきみたいに、夢や願い事で狙われそうな北条君を調べたんだけど、人間っていう結果がでたわ。役に立てずごめんなさい」


緑川の言葉は参加者のほとんどを納得させていた。だが、矢坂は人の願いや夢を否定していく。


「いや、別にそれは構わんのやけどさ。こいつはどっかのタイミングで殺してええやろ。女の子らもこいつキモいて思てるやろ?」


「そういうあなたも、こちらとしてはあまり実現してほしくない願いなのですよ。あんな暴動を起こすような集団の復興なんて......。あなたも十分に処刑対象だと自分は思います」


矢坂の、人の願いだけで命の価値を値踏みする性格が災いしてか、天童に痛いところをつかれて矢坂は唇をかむ。さらに天童は周りの参加者に聞き込みをしていく。


「でも困りました。これでは誰を生贄にすればいいのか......。緑川さんの言葉を信じるなら北条さんを吊っても無意味ですし......。他に司祭を名乗り出る人間はいませんか? もしくは僧侶、勇者でも構いません」



その言葉を皮切りに、犬上が手を挙げた。天童は犬上を指さして発言を促した。


「私、僧侶なんだけどさ。勇者は多分さっき死んだ子なんじゃないの? 死ぬ間際にそんなこと言ってたし......。明確な役職はわからないけど、あの子が白確定なら次の夜指名しなくて済む。後、葵っちの言葉が信用ならないなら、一旦北条吊れば? そしたら私が確認できるし」


そういうと、飯田が頷き北条を指さす。


「そうだな。あんたには悪いけど、処刑されてくんないかな?」


飯田が呼び鈴を押そうとした瞬間、両隣にいた藤宮と三吉がその手を制した。

藤宮と三吉は互いに見合って会釈した後、藤宮が飯田の顔を見た。



「ちょっと待ってよ。少し気が早すぎるんじゃない? もう少し他の人の意見を聞こうよ!」


「そ、そうですよ! 結局矢坂さんと同じで、皆さん偏見で処刑する人間を選ぼうとしてるだけじゃないですか! そういうことじゃなくて、より多くの人間が生き残る方法を考えましょうよ!」


「じゃあ他の人間の候補あるのかよ? 他に怪しい人間がいるのか? あ?」


飯田は少しイラつきながら返すも、藤宮と三吉はすぐに目を伏してしまった。今度こそと思い飯田は呼び鈴を鳴らした。


『お疲れ様です。それでは、本日処刑する人間を示してください』


飯田を含む多くの人間は北条を指さした。だが北条と富山美咲だけは矢坂亮を指さしていた。飯田たちは驚きつつも声を出さずにキサラギの指示を待つ。


「結局、お前らもそいつに票いれてるじゃねぇか......」


「......」


「……」


『多数決により、北条雅樹様。あなたは処刑されます。それでは、処刑に移ります』


そういうと<彼>が現れてきた。<彼>たちは北条を持ち上げて壁にある十字架に連れて腕と足を括りつけた。<彼>たちが消えるのを合図に上から電動のこが降りる。

北条は断末魔と血しぶきをあげながら殺されていく。その様子を参加者たちは平然と他人事のように見上げる。<彼>たちが死体を回収するまで見届ける参加者たちの心はさらに歪んでいく一方だった。そして、またも夜のターンが訪れた。



『それでは夜のターンに映ります。全員、目を閉じて顔を机に伏せてください。魔女の者は、一人殺害したい参加者を指名してください。......。かしこまりました。魔法使いであるものはさらに選択を。......。かしこまりました。司祭であるものは一人、調べる参加者を指名して下さい。......。かしこまりました。僧侶であるものは一人、調べる死亡者を指名して下さい。......。かしこまりました。それでは、皆様顔を起こしてください』



キサラギの言う通り顔を上げ彼の言葉を待つ。続けてキサラギは魔女の毒牙にかかったものをアナウンスする。


『残念なことに、緑川葵様。あなたは魔女によって殺されました。よって緑川葵、脱落』


「緑川さん!」


「まじかぁ~」


「中々に聡い魔女のようです」


飯田、犬上、そして天童が口々に緑川が死ぬことに言及すると、緑川は<彼>に運ばれながら急ぎ口調で語る。


「みんな! 矢坂を吊って! あの人魔女よ! 飯田君、私を信じて! お願い! 私の分まで生き残って!!」


電動ノコは無慈悲に緑川を真っ二つにしていった。飯田は、自分の中の淡い恋が崩れ去る音が聞こえたのか耳を塞ぎ、目を閉じていた。藤宮もまた、人が死んでいるところなど見ていられず目をそらしていた。

惨状を気にせず、キサラギはまたゲームを再開させるのだった。


【4thステージ:魔女狩りゲーム】


参加者残り: 7 名


死亡者; 3 名








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る