3-5:殺人鬼ごっこ ~忘恩負義~
第3ゲームで生き残れる人間も残すところあと1人となった。参加者は着実に減っていったため出会いも少なくなり、参加者同士の潰しあいも少なくなった。
だが、ここでまさかの事態が起こる。参加者である3人とターゲット1人がばったりと出くわしにらみ合いとなっていた。
「ターゲットを殺すのはオレじゃ!」
「いや、私だって死にたくない!」
「誰も殺さないなら、俺が引き金を引く」
「だけど、殺せるのか? 豪......。 おめえの命の恩人を」
参加者のうち2人は、ターゲットである武藤に対してまったく面識はなかった。だが、飯田豪だけは違った。武藤樹は飯田にとって命の恩人だった。彼が大学進学に悩み、一浪していたころ飯田は心身ともに病んでいた。そこを救ったのが武藤だった。だが、飯田はその恩人に報いるどころか拳銃を向けて命を奪おうとしていた。
「あんたには十分礼をしてきたつもりだ。金もそのために稼いだ。あんたの言葉ならなんでも従った。でも、あんたからは何もくれなかった。そうだろ......」
「なんだか、知らねえけどよぉ! 殺せないならオレが殺してやるよ! お前の命の恩人とやらを目の前で!」
参加者の一人がマシンガンを手にして引き金を引こうとした。だが、飯田はその男に弾丸を一発頭に食らわせた。
「うるせえよ、クズが......。今殺そうとしてんだろ!」
「あんた! 自分がなにしてるのか、わかってるの!」
参加者の一人である女は、一人取り乱して声を震わせる。だが、飯田は冷静に彼女を睨みつける。
「お前こそ、ここまで来ていっぱしに偽善語ってんじゃねえねえよ。死にてえのか? 生きてえのか? どっちかにしろ」
「ヒッ!!」
武藤はそのやり取りを見てため息をついた。そして、彼は飯田の持っていた拳銃を奪い参加者の女性を確実に殺した。そして、再び飯田の手に持たせて自分のこめかみにあてがう。そして、武藤自身の手でしっかりと押さえて軸がぶれないように固定していた。
「なにしてんだ、あんた!」
「見知らぬ他人に殺されるより、知人に命を奪われるほうがいいと思っただけだ」
「普通、逆だろ。イカレてんのか」
「ああ。だから、あの時お前を生かした。死にたかったであろうお前を生きる道に引きずり込んだ。お前は俺が変えてしまった。どうだ、俺が憎いだろ」
飯田はさらに拳銃を武藤のおでこにめり込ませていき、声を荒げていく。
「ああ、そうだよ! いつだってあんたは鬱陶しかったし、ずっと金をせびってきてうざかったよ! でもあんたは働き方を教えてくれた。学び方を教えてくれた! そして、生き方を教えてくれた! なあ『生きるってのは、だれかの命を奪うことだ』とか抜かしてたよなあ! ああ!? なら、ここで奪ってやるよ! あんたの『命』を!!」
「そうだ! 奪え! 豪!! 生きろ!」
飯田はしかめ面をさらに歪ませて、涙をひとつ流しながら引き金を引いた。飯田の悲痛な叫びは銃声をも打ち消し、彼が森から消えるまで続いた。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
飯田が次に目が覚めると、そこは壁一面赤の廊下だった。廊下も赤ければ、天上も壁も赤。飯田は目がくらみそうになった。それでも彼は武藤から引き継いだ命を胸に歩き出す。あるけどあるけど、視界は赤一色。ただ一つ幸いなのは目の前に明かりがなく遠くが黒く見えて目を休憩するただ一つの場所になっていたということだった。
「......。着いた、のか?」
開けたところに着くも、そこもまた監獄のように殺風景な赤い壁と10人ほどが座れるほどの長机が置かれていた。机の横には椅子があり、そこにはすでに9名の参加者が座っていた。そこには飯田の見知った人間もいた。
「犬上さん、緑川さん......。それにマコも......。やっぱり、おまえ」
「やっぱりって、僕が参加者だったこと知ってたの?」
「いや、知らなかった。でも、なんかそんな気はしてた......」
飯田が開いている席に座ると、奥の壁からスクリーンのようなものがおりてきた。そしてすぐに、どこかと繋がり映像が映った。映像には白いキツネのお面をつけた男がいた。彼は、参加者がいつも聞く口調で彼らをたたえる。
『皆さま、お疲れさまです。アカイハコ、運営のキサラギです。まずは、セミファイナル進出おめでとうございます。そしてようこそ、赤い
キサラギの言葉に参加者10人はこれからもまだゲームは続くのだと実感し、戦慄したのだった。
【3rdゲーム:殺人鬼ごっこ】
ゲーム終了
成功者:10 名(以下、エントリー順)
・天童 竜成
・矢坂 亮
・富山 美咲
・三吉 壮太
・大村 美雪
・犬上 愛美
・藤宮 誠
・緑川 葵
・飯田 豪
失格者(死亡):10 名
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