2-7:炎上ゲーム ~アンチ同盟発足~

  炎上ゲームも終盤に差し掛かっていた。彼らの焦りも最高潮となっていたが、白聖会のメンバーとなった藤宮、北条は自分たちが台風の目の中にいるためいつでも炎上を狙えると画策していた。アルバイトを辞め、心霊スポットめぐりをした飯田は引き続きいわくつきスポットを巡りながら白聖会のデモの日を心待ちにしていた。


「犬上が言ってた白聖会のデモも気になるけど、赤星関連の配信も首ツッコむのも面白そうだよなぁ。そっち系にすればよかった......」

 

 一方で白聖会の騒動とは別に赤星みどりの炎上を狙う参加者もいた。その中でも首謀者である小峰絵美里は全国各地から参加者、非参加者など問わずに決起集会を開いていた。その中には飯田のバイト先の同期だった緑川や金ヶ原がいた。彼らは本名も顔も知らないまま、アイコンと声だけを頼りに話し合う。


【ひめ】「はじめまして~」


【ばっどグリーン】「ど、どうも」


【ぺんどんまん】「みんなで赤星つぶそうぜ~」


【笑み笑み】「今日は皆さん集まってきてくれてありがとうございます。皆さんとお話ができて嬉しいです」


小峰は【笑み笑み】というアカウント名で約100名ほどの人数のコミュニティをまとめる。中には意見も述べずに聞くだけの人間もいた。ただ、小峰は人数がいるだけで十分だった。


【JOKAR】「あの女十字架にかけて殺してぇ~」


【さすらいのオタク】「まじであの加藤とかいう女許せんですね。私たちを騙してたなんて」


小峰はいろんな赤星アンチの人たちの意見を聞きながら、自分の考えうる最悪の計画を提案する。


【笑み笑み】「そうなんですよ。だから、皆さんと一緒に明日あるライズアップ主催の『澁谷スクランブルライブ』をめちゃくちゃにしたいんです」


【ばっどグリーン】「そのあたり詳しく」


コミュニティに参加していた一人、緑川葵は赤星に因縁があるのか【ばっどグリーン】として小峰に真剣の策に真剣になっていた。小峰は逆に具体的な策を考えていなかったため、困惑していた。


【笑み笑み】「と、とにかくみんなが集まってライブをめちゃくちゃにすればいいわ」


【ばっどグリーン】「でも、警察が動いてないわけない。下手したら機動隊に抑えられて未遂に終わるかも」


【笑み笑み】「た、確かにそうだね......。でもよくそんなこと考えるね」


ばっどグリーンは少し間を開けたあと、自分の素性について少し話す。


【ばっどグリーン】「私、実は赤星みどりの妹なんです......。別に信じろとはいいません。でも、姉を蹴落として成り代わってるのは家族として許せないんです......」


グリーンの言葉に全員が息を呑む。


【ぺんどんまん】「よっしゃ、任せとき! オレは関西でも顔が広い。かなり多くの兵を送ったるわ」


【まりもっさり】「私も、遠いですけど北海道から友達集めてきます。だから、絶対に成功させましょう! これは、本物の赤星さんに対する弔い合戦です」


【JOKAR】「は? ちょっと待て。オレは元から赤星っていう女むかついてるからグループ入ったんだけど、お前ら違うわけ?」


空気の読めなさそうなJOKARが団結しそうにあったコミュニティに水を差しだす。だが、首謀者でもある小峰自身も赤星のことは前から毛嫌いしていた。だからその腹いせとして、影武者を作るという死者にとってこれほどにない侮辱の策を生み出したのである。それでも、まりもっさりの言う言葉も理解してしまっている自分がいた。


【笑み笑み】「私も赤星のことなんて元から嫌いだし。 何でもできるくせに被害者みたいな面して......。いつも彼女がスポットライトを浴びてたのが嫌だった。でも、それ以上に友達が......。同期が事務所の意向で赤星に成り代わってたことが許せない!! だから、これは赤星自身への復讐でもなんでもない。事務所への挑戦状よ!  私の作戦に不満がある人は参加しなくていい......」


 その言葉を聞いてJOKARをはじめとして半分ほどがコミュニティから外れて回線を切った。残りの半分ほどは小峰やバッドグリーンたちの言葉を聞いておおむね賛同してそれぞれ電話を切った。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 大阪にいた【ぺんどんまん】こと八坂亮は通信後、他の大阪で赤星や彼女が所属していた事務所に不満を持っている連中を通天閣に集めた。八坂は顔が広く、赤星のアンチ界隈では有名だった。そのため、男性も女性も関係なく10人ほど集まってきた。


「お前ら、ほんまに乗り込む気なんやな」


矢坂は静かな心でただ暴れたいという目をした彼らを見つめていく。


「当たり前や! ここで折れていいわけないわ! さっさと行きましょ、ぺんどんさん!」


「そやそや! あたしらは赤星みどりの顔はぎとりに行きたいねん!」


数人が物騒な言葉を彼に投げかける。八坂は大阪での決起の様子をスマホに収めた。自分自身が生き残り、願いを叶えるためだけに彼らを小間使いにしていく。

さらに北海道でも5人ほどがすでに東京へと向かっていった。その中でも小舟真理愛も八坂と同じくアカイハコの参加者で炎上目的で上京しようとしていた。


「正直、こんな変なことで東京行きたくなかったけど......。まあ、新幹線乗れただけマシだな」


小舟は新幹線の窓から見える東北の景色を見つめながらふと目を瞑る。東京に結集するまで、後1日......。炎上ゲームはこの終盤で、盛大で最悪の花火が上がろうとしていた。


【2ndステージ:炎上ゲーム】


参加者: 89 名


失格者: 6 名


ゲーム終了まであと 2日

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