向かい (ミナト視点)
ただ、寂しかった。
それで事件を起こしたのかと、大人に責め立てられるとしても。ただ、冷たかったのだ。視界が閉ざされたような、味方が誰もいないような感覚。
それをぶち破って、引きずりだしてくれたのが阿部せんせいだった。
「海!せんせい、海だよ!」
さざなみの音、カモメの鳴き声がして私たちは、ほとんど思いつきの計画を実行していた。それは、二人で海に行くことだった。
せんせいは少し肌寒そうに震えると、私の肩を抱いた。
「海だな、綺麗だ」
その瞳に私と海が映ることが、とても特別なことに思えた。
エメラルドグリーンの海水が、私たちを出迎えてくれた。太陽は燦々と輝き、私たちの身体の隅々まで照らす。
悩み事なんか全部まやかし、幻だよといわれている気になる。
きっと後になって、大切な大切な思い出になる日だと思った。
これから先起こることはわからない。
私の生まれた意味も、何もわからない。
でも。
せんせいの横顔を見つめる。
この人が産まれた世界だ。そう思うと、期待してもいいような気になってくるんだ。
期待しているんだ。私は。
これから起こる、私たちの人生に。
不良少女と女教師 お餅。 @omotimotiti
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