第7話出会いは魔術師 (3)
マレット②
俺は声をかけたが次のセリフが見つからない。
元々、行く当てもなくさまよっていたら、人の多い道に出てしまったため、人慣れしていない俺は酔ってしまった。道の脇の建物と建物の間に入ろうとした所で、女性、いや少女が倒されるのを見たのだ。つい声を掛けたが、どうすればいいのか。
「なんだお前。」
「俺たちはただ遊んでいるだけだよ。」
絶対違うだろ!
「嫌がってるじゃないですか。」
「うるせえ!つーか、お前誰だよ。」
「お前、『ハロウィン』気分かよ。」
後者が言った意味はよく分からないが、前者の問いに答えた。
「我の名前は、マレットだ。」
また、長い沈黙が流れた。
「プッ、ハハハハハ。我って『中二病』かよ。」
「ていうか、マレットって絶対本名じゃねーだろ。」
……。そうだった。俺の一人称と名前は、嘲笑の対象だったんだ。本日2回目だ。
「と、とりあえず離してあげてください。」
さっきの話はなかったことにして、俺は男たちに言った。
「黙れよ。ぶん殴るぞ。」
「やめとけって。『マレット』様にやられるぞ!な~んてな。」
「「ハハハハハ」」
2人同時に笑い出した。なんてうざい奴らだ。
「あの~あなたは困ってますよね。」
俺は少女に向かって聞いた。
「!!、はい!助けてください。」
そう言って男から逃れ、俺の方に走ってきて背中に隠れた。
「お、お前逃げるんじゃない。」
「ぶっ殺してやる。お前も女も。覚悟しろよ。」
おいおい。物騒すぎるよ、この種族。
ただ、俺に「覚悟しろ」だと。ふむ?勘違いしている。
「あ、あの~。無理しないでくださいね。」
少女も俺の顔を覗き込んで言った。全員、どうやら勘違いをしているらしい。
覚悟をするのはこいつらだ。
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