第8話出会いは魔術師 (4)

マレット②


「おりゃ。」

声を出しながら大ぶりな右ストレートを、金髪男が繰り出してきた。

しかし、俺はそれを見切って避けた。

「死ねー。」

もう1人の黒髪の男が、飛び蹴りをしてきた。

が、それも少女をかばいながら避けた。男がそのまま真っすぐ、頭から地面に落ちそうになったので、

「ダメージ軽減1ウノ

小さく魔法をつぶやいた。ケガをさせないために一応。

「こ、このやろう。」

金髪の男が大ぶりなストレートとアッパーを左右上下入れてきたが、俺は何度も見切って軽々と避けた。

「ハァ、よ、避けるのは、ハァ、上手いようだが、ハァ、俺らを、ハァ、倒せないだろう。かかってこいよ雑魚。」

仕方がない。軽くやるか。

俺はゆっくり男たちに近づいた。金髪男と黒髪男のストレートをかわし、軽く2人の腹を殴った。ものすごく軽く。しかし、男たちは予想以上に飛んでいき、落ちたら危ない高さに飛んでしまったので、

「スピード軽減1ウノ、落下低速1ウノ、ダメージ軽減1ウノ

3つ魔法をだし、ケガさせないように気をつけた。

「おいお前ら。まだやるか。」

落ちてきた男たちに向けて言った。

「く、くそ。覚えてろ。」

捨て台詞を残して、夕日が沈む方へ男たちは走り去っていった。


 青年と少女の間には、男たちが走り去った後もしばらく沈黙が続いた。

人と話すのが久しぶりの青年は、話をする内容が浮かばない。

少女も少女で、自分からあまり話かけたことがないので困っていた。

「あ、あの。先ほどはありがとうございました。」

少女から先に、話を切り出した。

「い、いや。ケガが無くてよかったよ。」

額を搔きながら答える青年。しかし、どこかぎこちない。気まずさが流れる。

「で、では。これで。」

逃げるように言う青年。少女から逃げるなんて、と思いながら。

一方で少女は、別のことを考えていた。ここで、ここで呼び止めなかったら1日を、いや、一生後悔するだろう。

「ま、待ってください。」

立ち去ろうとする青年の服を少女は掴んで、勇気を込めて言った。

「す、少しお茶をしませんか。」

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