第5話出会いは魔術師
ミホ①
私はこの胸の高鳴りがよくわからなかった。
しかし、運命の出会いがあるのではないかと感じ、信じてしまった。
けして浅くはない海に、沈んでしまったこの心をすくい上げてくれる、そんな人がいると信じた。
家を出て歩き回った。
どこにいるかなど知らない。ただ運命から寄ってくるのを待つだけ。
1日中行くあてもなく歩いた。電車やバスを使い、ただ歩き回った。
気づけば小手指にいて、太陽が沈もうとしていた。
「はぁー。そんなわけないよね。」
ため息をついて1人呟いた。そんな運命の人など私には無縁なんだ。
貧乏な家に生まれ、幼くして事故で両親を亡くし、入った養護施設での暴力に耐えかね、3年前に逃げだし、1人淋しく東京で暮らす私。
この話をすると多くの人から同情を得るが、私は同情を欲しいわけではない。
普通の人よりも自分の感情をいつしか出しづらくなった私を救ってくれる人。そんな人に会いたい。
しかし、そんな人はいない。運命なんてない。私には。
「へーい、そこの嬢ちゃん。」
「俺らと一緒に遊ばない?」
急にナンパをされた。ただ私は、こういうチャラい人が1番苦手だ。のびのびと生きていて、楽しそうな人たち。羨ましいと同時に嫉妬してしまう。
「いえ、この後用事があるので。」
作り笑いを作りながら言った。
「え~いいでしょ。ちょっとだけ。」
「俺らと遊ぶと楽しいよ。」
チャラ男2人が言ってきた。
「いえ、大丈夫です。」
はっきりと断ったが、
「ねえ~いいでしょ。」
しつこい2人。しかし、2人は私を囲みながら詰め寄ってくる。
私は後ずさったが、不意に壁に当たった。路地裏に追い込まれてしまった。
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