第3話青年は魔術師(3)

マレット①


 俺がなぜ眠っていたのか。それは5万年前にさかのぼる。

当時、この星は『魔術師』が支配していた。

簡単に魔術師を説明すると、体内や空気中にある魔力を使い、いろいろなことをする人たちのことだ。魔術師という呼び方は長いため、俺達は自分自身を『人』という種族にわけた。

 俺も魔術師、いや人としてこの世に生を受けた。人と違うことは、圧倒的な魔力保有量と才能。

 わずか5歳で、成人した大人と変わらない技術と魔力量を持っていた。

10歳で1級魔術師と変わらない魔法を使えた。

いわゆる天才だ。事実だから仕方がない。

そして、20歳で不老不死になれる魔法を開発して自分に付与した。それから千年間同じ、茶色の長髪と中性的な顔(たぶんこの時代で言うと)、高身長の見た目だった。当時としては珍しくない普通の見た目だ。

 それから千年間で、俺は世界最強の魔術師になった。

特に100歳になって開発した、『マジックトゥワイス』によって自らの魔法を高めた。『マジックトゥワイス』は1年ごとに前年の魔力保有量が2倍になるというものである。

つまり100歳の時の魔力量を1として、101歳で2、102歳は4、103歳が8……となり、115歳で魔力保有量は100歳の時の約1万6千3百倍になる。そして、5万年間もそれは続いている。

 いつしかこの星にある魔力全てでは足りないぐらいの、魔力保有量になってしまった。そのため、全力を出すことができなくなった。

 そんな俺は千歳の時に、別の星の最強と戦った。今まで強い奴と戦うことが出来なかった。しかし、俺は負けた。逃げることはできたが、傷一つ負わせることが出来なかった。俺にとって最初の敗北だった。

 自分の星を逃げてきた俺は、自らの魔力量を増やすため、眠りについた。

眠りにつく前に、俺は1つの置き土産を残してた。それは魔王と魔族。

当時、人同士がたがいに争いを繰り返しいた。同族同士の争いは醜いものだと思ったからこそ、俺は人の共通の敵を生みだした。俺の固有スキルをつかって。

 人々は戦いを止め、協力して魔族たちと戦った。それを見届けた俺は、安心して眠りについた。あいつを倒す『目的』のために。

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