第2話青年は魔術師 (2)

マレット①


 街の中を歩いているが、どこにいるのかよく分からない。周りの声、言葉、書いてある文字など全てが分からない。

「言語習得」

小さくつぶやいた。これで言葉が理解できる。俺は周りの声に耳を傾けた。

「『新宿』どう行けばいいんだっけ?」

「たしか~、近くの『小手指駅』からいけるんじゃん。」

 2つの地名っぽい言葉が聞こえた。『新宿』、『小手指駅』。

『新宿』に行くと言っていたから、たぶんここは『小手指駅』という所なのだろう。

記憶から探したが、俺が知っている地名に『小手指駅』などない。

 

 この世界の情報が欲しい。たぶん本が多くある場所に行けばいいはず。そう考えていると、前方から女性2匹?が来た。ちょうどいい。こいつらに聞こう。

「チョリースッ!そこのお兄さん。」

「うちらと遊ばない?」

 女性から話しかけてきた。周りとは全く違う喋り方。よくよく見ると、周りより肌の色が浅黒く、髪は金色、爪は色とりどりで胸の谷間をさらけ出すような服装。周りとは違う生き物なのかもしれない。ということは、この街は多種族主義の街か。

 正直あまり頭がいいとは思えない奴らだが仕方がない。相手を怒らせないように、

慣れない言語で俺は聞いた。

「えーっと、そのー、本が多くある場所を探しているのですが。」

「え!本が多い場所!」

「『図書館』か『ブック〇フ』がいいんじゃないかな?」

「この近くって『図書館』じゃん!うちら天才!」

 背の高い方が結論を出したらしい。しかし、1つも理解できない。『図書館』?『ブック〇フ』?考えても仕方がない。

「お兄さん、ついてきてよ!」

俺たちは『図書館』とやらに向かった。


 途中、背の低い方が質問してきた。

「お兄さんの名前ってなんていうの?」

 この質問にどう答えたらいいか。この世界の普通がよく分からない。仕方がない。素直に言った。

「我の名前は、マレット。」

長い沈黙があった。俺の名前が変だったのか?苗字は言わなかったが。そう考えていると女性たちが突然笑い出した。

「ハハハハハ、『我』って。『中二病』なの。ハハハ。ちょおー受ける。」

どうやら発音がだめだったらしい。俺自身、『俺』って言ったつもりだっが、慣れない言語だったからか。しかし、もう片方の女性が言った言葉に衝撃を受けた。

「ハハハ、お兄さんの名前がマレット?うちらとあまり変わらない顔なのに。『日本人』顔で名前がマレット。ハハハ。もしかしてハーフ?」

「ねえ、苗字はなに?」

背の低い女性が質問してきたが耳に入らなかった。

俺がこいつらと同じ顔?違う生物だというのに。確かに顔は似ている。しかし、こいつらは『魔力』をほとんど持っていないし使っていない。こいつらの種族は『日本人』というらしいが、俺の時代の『ホモサピエンス』に顔の作りが似ている。

 ふと横を見るとガラスがあった。この時代にもあるのかと驚いたが、映った者を見てもっと驚いた。そこに映っていたのは、少し長い黒髪、顔の作りは周りの『日本人』とやらとあまり変わらない者。耳も短い。ただ、俺がいつも着ている黒い服に包まれている者。こいつは、自分自身だった。身長も縮んでいた。

 理由は分からない。分からないからどうすることもできない。

「マレットっち、こっちこっち!」

疑問が残ったままだったが女性たちに『図書館』とやらまで案内してもらった。

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