第1話青年は魔術師(1)
マレット①
長い長い眠り。
今は何年目かも分からなくなり、また時に息をすることすら忘れてしまう。
5万年。
それぐらいは眠っている。何もない世界。ただ眠るだけ。
しかしまだ半分。
予定の目覚めの時までやっと半分。
10万年。
俺にとったらそれほど辛いものではない。まだ先は長い。だからまた、眠りについた「ギコッ…、ガタン…バーーーッッッン!!!」
大きな音とともに俺が開けた石の蓋が砕けた。俺がヴァンパイア族の物を改良したものだ。
目を開けようとしたが、なかなか開かない。5万年も目を閉じていたためだろう。
なんとか目を開けて最初に、飛び込んできたのは石の壁だった。小さな遺跡にいるということを思い出すのに5秒かからなかった。
硬くなった体の筋肉を何とか動かして、外に出ようとした。
光の入ってくる出口を進んで抜けた先には、原っぱが広がっていた。
小さな丘の上にある遺跡だが、それを守るように下の方に森林が広がっていた。しかし、なぜか丘の上に木が生えていなかった。
久しぶりの太陽は眩しく、まだ完全に開いていない目に大量の光が入ってきた。
衰えた嗅覚にも、花と草の香りが入ってきた。
この世界は今どうなっているのか。そう思い、丘を下って行った。
森を抜けた先の風景を見て、思わずため息が出た。街のようなものが広がっているが、知っているようで知らない建物ばかり。そこに住んでいる奴らを見て驚いた。
まず容姿が俺に似ていること。
変な服を着ていること。
そして…『魔力』をあまり持っていないこと。
こいつらは同じ生き物なのかよく分からない。しかし、明らかに魔力量が多い奴が行くと、変な目で見られる。そう思い、俺は呟いた。
「魔力隠蔽」
久しぶりの『魔法』だ。
俺は2、3回深呼吸をして街の方へ歩いて行った。
もっともどんな奴が、何があったのかなどの探求心が強すぎたため、自分の服装を忘れていた。それは、後々後悔する。
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