第47話 第2章 開戦 14
グラを見送った後、受付から少し離れた天幕に転移用の待合所があるそうなので、天幕に向かって歩いて行った。屋台の前は亜人がちらほらと買い物をしている姿を見かけるが、全体的にまだ冒険者たちの帰宅時間ではないようで閑散としている。
天幕の中に入ると、十数人ほどの魔法使いが2列に分かれて客待ちをしていた。片方の列は4人組専用らしく、多くの魔法使いが椅子に座って待っている。もう一つは3人以下の転移用らしく、俺たちはそちらに向かうことにした。ラーテイガ魔法使いに話しかけると、魔法使いは4人分の料金を出してすぐに転移するか、あと2人揃うのを待つのか聞いてきた。ラーテイが俺にどうするか尋ねてきたので、今日は時間が惜しいし、外での人通りを見るに待機時間が長そうだったので、今回は2人で転移することを選択した。
転移して北門から少し離れた場所に到着した。魔法使いは業務用の挨拶を述べて北門に向かって歩いて行き、俺たちも後を追って北門に向かって歩き始めた。
「食事用の皿を買いたいので、ダルス商会に向かおうと思う。」
俺たちは中央エリアにあるダルス商会へ向かうために歩き始めた。 中央より北側は主に住宅が多く、1戸建ての家が目立つ。ラーテイによれば、中央より北側は住宅地が多くあり、南側には施設が多いそうだ。大通り沿いには裕福な人々の一戸建て住宅が多いが、北東エリアに進むと高所得者向けの集合住宅や一般の人々の一戸建てが多くなり、さらに壁際になると一般の人々の集合住宅が増る。北西エリアは大通りから西に進むと一般の人々の一戸建て住宅と低収入者が住む集合住宅があり、壁際ではスラム化しているようだ。 ラーテイの話によると、治安は中央エリアが一番良く、その次に大通り沿いが良い状態になっているそうだ。北エリア、東エリア、南エリア、西エリアの順に治安が低下していくようで、しばらくの間は南西エリアにあるおやっさんが所属する傭兵クランに1人では行くのは危険そうだな。
ダルス商会に到着し、入り口付近に並んでいる食器類から木製の皿を10枚ほど買っておいた。召喚獣が同時にどれだけ召喚できるかはわからないが、10枚以上は必要ないだろう。
この街に来て思ったことの一つが、木製の品物が多く、金属製の品が少ないことだ。ラーテイにそのことを尋ねると、人族の支配エリアには鉄の取れる鉱山が少なく、亜人の国から鉄製品を購入していると教えてくれた。ドワーフの国は国土が鉱山で占められており、大半の鉄製品はドワーフの国から購入しているそうだが、採掘が追い付かず、武器や防具を中心に発注するため、鉄製品は貴重なものなのだと言っていた。
人族も鉄製品が必要なため、終身労働者を鉱山労働に送り込んで採掘させているが、彼らのやる気が著しく低く、効率が悪いようだ。それは当然のことだろう。報酬や待遇の差がほとんどないのであれば、みんな手を抜くのは避けられないさろう。特別な報酬を与えるなどのエサを与えないと、彼らが頑張って働く気にはならないはずだ。もし使い捨てを前提としているのであれば、少しは理解できるが、人手が不足しているのであれば、待遇を改善してやる気を引き出す方が良いと思える。ただし、待遇があまりにも良すぎると、彼らが甘えて仕事を怠る可能性もあるので、バランスが重要だ。ただし、グランガイズには地球にはない魔法というツールが存在する。隷属魔法などもあるので、使い方次第で様々な解決策が考えられるかもしれない。ただし、グランガイズの法律や人権の保護度について理解しないと、解決策は単なる理論に過ぎないかもしれないな。
街中やダンジョンで見かけた冒険者の多くが布や革の衣類を着用していたようだ。おやっさんたちも革製品を身に着けていたと思う。
地球との戦争が起こった場合、地球側の主力武器は銃だろう。革の衣服や木製の盾では銃弾を防ぐことはできないと考えらる。魔法の力で防御することができるかと言えば、魔法使いの数が限られていることから、難しいと思われる。やはり地球との戦いに備えるためには鉄製品の普及を急がなければならないだろう。
ただ、グランガイズの知識が不足していることがネックとなっている。限られた時間で、ラーテイからできるだけ多くの知識を得る必要があるな。
また、ラーテイと別れた後に信頼できる情報源を見つけるためにも急がなければならない。知識が豊富で偏った思想を持たず、柔軟な発想ができる人物が望ましいが、そのような人物が容易に見つかるとは限らない。特定の組織に在籍している人物を雇用するほどの実績や信用もない。まずは誠実である程度知識のある人物を探すことから始めるべきだろう。
結局、繋がりがない俺には斡旋所の助けを借りるしかないだろう。明日からはダンジョンから帰る途中に斡旋所に立ち寄り、人材の選定に時間を割ることを決意した。
さて、10枚の皿とナイフ、フォークのセットを購入し、ダルス商会を後にしようか。
「昨日も考えたんでだが、この木製のナイフで肉が普通に切れるのはどうしてなんだ?」
「それは
「木製の食器にしては値段が高いと思っていたが、そういう理由があるなら納得できるな。ただ、補助魔法を使える魔法使いは多くないと思うが。」
「そこで、簡易教会が役立ちます。そこでは寄付をいただいて補助魔法を付与する場所でもあります。料金は魔石か魔石と同等の硬貨でお支払いいただけます。」
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