第46話 第2章 開戦 13

 俺はレベルが2上がり、杖士も3上がった。筋力が1上がり、HPとSPも5上がり、MPが10上がった。しかし、召喚士のレベルは上がっていない。もしかして、魔石ポーチに魔石が届く範囲外でグラが戦っていても、召喚士の熟練度が上がらないのかもしれない。

グラはレベルが5も上がっており、親密度と筋力が1上がり、HPとSPが10上がった。いくらグラでも1階層では魔ミミズの個体数が少なく、探しながら戦っているはずなので、2階層で他の冒険者を避けつつ戦っていた俺と倒した魔ミミズの数はそれほど変わるとは思えない。なのに、これだけレベルの上がり方に差が出来ているのは、グラが魔石を吸収しているからなのかもしれないな。


「冒険者がパーティーを組む場合、経験値や魔石の配分はどうなっているのか。」 「経験値の配分は、組んだ冒険者の頭割りになります。魔石は初期保有数を決めておいて、探索後に合計からその初期数を引いて頭割りが一般的ですね。」

「それなら、パーティー冒険者が違う階層で戦っていたら、経験値はどうなるのか?」

「経験値は、同じ階層で戦っている冒険者にしか配分されないと聞いています。」

「そうだ、召喚した魔物も同じようだな。召喚した魔物は、魔石を吸収することによって更に経験値が増えるようだ。グラのレベルの上がり方からすると、それが考えられるな。」


「ユグ様、グラさんがパーティーメンバーとして扱われているなら、ステータスバーが見えるかもしれません。」

「ステータスバーとは何だ?」

「『パーティーステータスバー表示』と唱えてみてください。そうすれば、視界にパーティーの名前と体力、魔力、技力のステータスバーが表示されるはずです。」

 RPGゲームでよくあるあの機能か!それがあれば、ステータスウィンドウや念話でグラの体力を心配する必要がなかったのに。いや、初日に知っていただけでも嬉しい。召喚獣が増えると、念話だけでは状況把握が困難になるかもしれません。しかし、慣れないとステータスバーが気になって落ち着かなくなるかもしれないな。


「モグ『ただいま戻りました。』」

「グラ、お疲れさま。何か問題はなかったか?」

「モグ『人の気配がする方向は避けて移動していたので、冒険者と接触することはありませんでした。」」

「そうか、それはよかった。今日はありがとうな。グラのおかげで色々と知ることができて助かったよ。もう少し付き合ってくれないか?」

「モグ『はい、了解しました。』」


 グラと合流できたので、ダンジョンを出ることにした。ダンジョンを出ると、受付の人たちがグラを見て驚いた表情を浮かべていた。俺は召喚士であり、冒険者がダンジョン内にいるときは召喚した魔物を連れていることを認知してほしかったため、グラを送還せずにダンジョンの外に連れ出したのだ。

 先にダンジョンから出てきた何組かの冒険者から、魔物を連れた冒険者がいることは聞いていたが、それでも連れて出てくるとは想像していなかったようだ。

 とにかく、机の上に置かれている箱型のものにギルドカードを差し込み、ダンジョン探索の終了を確認してから、受付の男性にいくつかの質問をすることにした。


「こいつはグラと言って、俺が召喚した魔物なんだけど、グラを単独で狩りをさせるのは問題ないのかな?」

「それは問題ありませんが、事情を知らない冒険者から攻撃を受けるかもしれませんよ。」

「そこで相談なんだけど、受付でグラのことをダンジョンに入る冒険者たちに周知させることはできないかな? グラを攻撃すると罪に問われるそうじゃないか。 グラを攻撃された俺も、グラを攻撃した冒険者もどちらも嫌な思いをする。だったら、前もって注意喚起しておけば問題は起こりにくくなると思わないか?」

「これまで魔物を召喚する冒険者が王国のダンジョンに訪れたことがなかったので、規則がどうなっているのか分かりません。冒険者組合に報告して調べてから連絡させていただきます。本日宿泊する宿を教えていただければ、分かり次第連絡を入れることもできますし、明日以降に冒険者組合に来ていただければ、報告できると思います。」

 さすが大きな組織に属している人物なだけに対応が迅速かつ丁寧だ。春風館の名前を受付の男に告げ、礼を言って受付から離れた。

 まだダンジョンから出てくる冒険者は少ないが、グラを見て驚く冒険者ばかりだ。ここにいれば良い宣伝になるとは思うが、あと40分もすれば神様からの神託があるはずなので、ここで時間をつぶすわけにはいかない。 

  気づけば視界の端にあったグラのステータスバーの色が黒になっていた。


「グラのステータスバーの色が黒になっているのだが、どうしてなんだ?」

「ステータスバーはダンジョンから出ると機能が停止してしまうのです。消えはしませんがバーは機能しなくなります。パーティーを解除するとバーは消えます。」

「そうだったのか。グラ、今日はお疲れ様だった。また後日頼む。」

「モグ『再度の召喚、お待ちしております』」 

  送還の呪文を唱えると魔法陣が地面に浮かび上がり、グラが吸い込まれていった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る