第40話 第2章 開戦 7
ダンジョンの中に入ると思ったより明るかった。外ほどの明るさではないが、明かりが必要とするほどではなかった。てっきり、ダンジョン内では生活魔法の照明を使うとばかり思っていたので思惑が外れた感じだ。
「入り口付近に立っていると他の冒険者の邪魔になってしまうので、少し奥へと行きましょう。」
入り口から30メートルくらい離れた場所に下へと続く階段があり、ほとんどの冒険者が階段を下りていた。ラーテイは階段を通過して、更に奥へと歩いて行く。
「俺たちは下には降りないのか?」
「最初は1階層から順に探索するのがよろしいと思います。」
「ここがもう1階層なのか?すぐに階段があったのでダンジョンの待機所かと思ったよ。」
「ダンジョンは階段の位置が固定されており、上下に向かう階段は見える位置に配置されております。そうでなければ移動だけで時間を消費してしまいませんか。ユグ様の知ってるダンジョンは階段の場所が離れているのですか?」
「いや、ダンジョンの構造なんて知らないな。」
「通常、宿屋や役所などの建築物でも上下の階段は近い位置にあるのが通常だと思いませんか。」
「そうだよな。なにか思い違いをしていたようだ。」
ダンジョンは入り口から入ってマッピングしながら下層へと続く階段を見つけ出すアニメや小説が多かったので、ダンジョンとはそう言ったものだと思い込んでいた。広さにもよるがダンジョン内で数泊もするのは難しいだろうし、セーフティエリアがあると言うのも都合が良すぎるだろう。魔除けの道具などあったとしても、魔物が多く徘徊しているダンジョン内で熟睡することは俺には難しいだろう。
「補助魔法をおかけしましょうか?料金は街に戻ったときに転移料金もまとめて請求させていただきますので、その都度払わなくて結構ですよ。体を慣らすのには魔物の少ない場所が良いと思われます。ダンジョンで一番死亡率が高いのは初日だという情報がございますので、私も細心の注意を払いますが、ユグ様も気を引き締めてくださいね。」
「確か1階層は魔ミミズ《マジカル・ワーム》が出るんだったよな。すごく弱いと言ってなかったか?」
「敵は弱いですが、探索初日のレベルの低い冒険者の体力は10ほどの人が多いので、1人で探索していると魔ミミズの出す酸によって知らずの間に体力が無くなる場合が多いようです。冊子にも要注意事項として大きく書いてありますが、冊子を読まないような冒険者が被害に合うようですね。敵が弱いからと聞いて、強化靴や強化手袋もせずに探索して体力が削られて果てる冒険者も多いようです。」
あまりにも敵が弱いせいで調子に乗って戦ってると、体力が無くなってるのか。冊子をちゃんと読むような冒険者なら、そのような不注意は起こさないだろうな。そういえば、俺もラーテイに冊子を預けたまま読んでないわ。宿に帰ったら返してもらって読んでおこう。
「体を慣らすために、
ラーテイが呪文を唱える。すると、体がとても軽くなった気がする。少し動いてみるが、それほど動きが変わったようには感じられなかった。
「杖を手に持ち、素早く振ることを想像しながら振ってみてください」
言われるままに杖を片手に持って、素早く振ろうと思いながら杖を振ると、見えないほどの勢いで杖が振られた。この振りでボールさえ当たれば、ドーム球場の電光掲示板でさえ破壊できそうだ。
「走る際も速く走ることを想像して走ると、それに近い速度が出ます。ステータスにもよりますが、上限までの力や速度なら、想像力によって出すことが可能です。身体強化はステータス値と自分の想像力によって力が増幅されますので、覚えておいてください。その身体強化の能力を即時に引き出すのが瞬動です」
「確か持続時間は半日だったよな」
「そうです」
「今日は17刻には街に戻っておきたいので、十分に持続時間は足りるな。17時刻にダンジョンから出れば、街まで転移してくれる魔法使いは空いてるかな?」
「17刻前だと空いていると思いますよ。一番混むのは18刻過ぎですからね。そう言えば、17刻に重大な事件が起こると言っておられましたね。18刻以降に師範から枢機卿台下とのつなぎが取れたかの連絡が入ることになっていますので、一旦神殿に向かわねばなりません。食事を終えた後に1刻ほど宿を空けますね。」
「了解した。俺は何も用事が無いので部屋で待機しているよ。宿を出る前に冒険者組合で貰った冊子を渡してくれ。文字が読めるようになったので、自分で読んでみようと思う。」
「それは良い案ですね。部屋に置いてあるので、宿に戻ったらすぐにお持ちいたします。」
「結構話しているが魔物が全然現れないな。」
「入り口付近は冒険者になって期間が短い者が倒して行きますので、それほど遭遇しませんよ。奥に行くほどに魔物との遭遇率は高くなります。ダンジョンの形状は台形ではないかと推測されてまして、下に行くほど広くなってると考えられてます。」
「1階層が一番狭いのだな。」
「はい、低断層が下に降りるほど広くなっているのは確実です。ただ、中断層からは感覚的なものですので確証ではないのです。」
「とりあえず、魔物と戦ってみたい。少し奥に進もうか。」
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