第37話 第2章 開戦 4

 ラーテイは教団関係者らしく、関連施設を押してきた。思っていたよりも人道的な措置が取られていると聞いて、初期のような嫌悪感は薄れているが、対人接触が少なかった俺には、今はラーテイさえいれば問題を感じない。ラーテイの同行期間が限られているので、直前になって慌てるよりは候補の1つを見分けておくことは、大事なことかもしれない。もしかすると、美少女エルフが俺を待っているかもしれないしな!

 俺とラーテイは、転移施設の斜め向かいにある人材斡旋所に向かって歩き始めた。役所から出て、前の転移施設が真っ先に目に入って、大きさに目を奪われたが、こうして人材斡旋所をじっくり見ると、転移施設より大きいのではないだろうか。転移施設が平屋に対して、人材斡旋所が役所と同じ3階建てであるということも、大きいと感じる理由だ。

 転移施設の入り口と違い、斡旋所の入り口には人影はまばらだった。入り口の扉は開放されていたので、中に入ると、更に3つの扉が待ち構えていた。扉に張ったプレートの文字を見ると、右が男性、左が女性で、中央が職業と書いてある。


「このプレートはそのままの意味で捉えていいのかな?」

「右が男性をお求めの方用で、左が女性をお求めの方用で、中央が仕事の従事者をお求めの方用ですね。」

「この表示だと、自分が男だから男性のプレートの方に行ってしまわないか?」

「初めて利用される方で間違われる人もおられますが、2度目からは間違わないので大した問題ではございません。それに教団では推奨は致しておりませんが、同性をお求めになる方も2~3割ほどおられますので、決して目立つこともございません。登録も好きな方で出来ますし、双方で登録されている方もいらっしゃいますよ。」

 グランガイズの性に関する開放度には驚かされるばかりだ。俺は同性愛者を嫌悪することはないが、自分が同性に対して欲情をしたことはない。個々の判断を尊重はするが、俺は同性に迫られる事態は考えたくもないぞ。 理想は2次元の中の女性だ。なので、ファンタジーな世界であるグランガイズに転生したからには、妄想の中でしかあり得なかったエルフとの出会いに心躍らせ期待しているのだ。

 勿論、登録や異性を求めてきたわけではないので、職業のプレートの付いた扉を開けて中に入る。部屋に入ると、入り口横に受付カウンターがあり、そこには2人の受付係が待機していた。受付係たちはラーテイを見ると深々とお辞儀をした。

 やはり斡旋所では教団関係者は敬服されているようだ。ラーテイはキャソックと呼ばれる司祭が着る平服を纏っているので、一目で神父だと分かってしまう。常に周りから神父として見られるので、行動や言動も模範となるべくしなければならない。私なら窮屈すぎて1日も持たない自信がある。


「本日は人材をお求めですか?それとも、この男性の登録でしょうか?」

 受付の男性がラーテイに向けて質問する。

「いえ、今日はこちらのユグ様の付き添いで来ただけですよ。」

  改めて、受付の男が俺に向かって尋ねてくる。

「それは失礼しました。お客様はギルドカードはお持ちですか?」

「冒険者のギルドカードは持っている。」

「本日は人材をお求めでしょうか?それとも登録を希望されるのでしょうか?」と受付の男が尋ねてきた。

「今日はどのような人材がいるのか様子見にきただけだが、大丈夫だろうか?」

「はい、20番から40番までが2人用の個室になっておりますので、使用中の札がかけられていない部屋をご利用ください。部屋をお使いになるときには、こちらの『使用中』の札を表にかけてください。」

 受付の男は「使用中」と書かれた札を俺に渡してきた。

「中の設備の使用方法は机の上の冊子に書いてありますが、ご不明な点がございましたら、受付までお尋ねください。」

 俺は受付の男が指差した方角へと向かって行く。右側はトイレの個室より少し広い感覚で扉が並んでいる。その扉には1桁台の数字のプレートが掲げられているので、1人部屋なのだろう。天井部から少し隙間が空いているので、部屋の広さもトイレの個室より少し大きい程度だと分かる。

  左側は右の個室より1.5倍ほど横幅が広い個室のようだ。扉を開けると机と椅子が2つ並んでいて、机の上に箱の中身が乗っているだけの殺風景な部屋だ。俺は椅子に座り、机の上に乗っていた冊子を手に取り読もうとしたが、読めなかった。数字はある程度分かるようにはなっていたが、文字はサッパリ読めない。 解読の魔法を使い、再度冊子を見る。冊子にはギルドカードを持っている人は机の上の箱にギルドカードを差し込むように書いてあった。ギルドカードを持っていない場合は、受付で作ったカードを入れるように書いてある。 カードを差し込むと魔法が発動し、前面にウィンドウが現れる。ウィンドウには希望する職業が複数乗っていたが、俺は「冒険者」と書いてあるボタンに触れることにした。

 次に希望する契約日数が表示された。1日、1週間、1年、3年、5年のボタンが表示されたため、1日のボタンを選択した。すると、希望する日時が表示された。今日と明日のボタンが表示されたため、明日のボタンを選択した。

 次に希望する性別が表示された。男性と女性と性別は問わないのボタンが表示されたため、性別は問わないのボタンを選択した。

 次に希望する種族が表示された。人族と亜人と種族は問わないのボタンが表示されたため、種族は問わないのボタンを選択した。

 次に希望する冒険者の戦闘位置が表示された。運搬ポーター前衛アタッカー後衛バックアタッカー補助サポーター、決定のボタンが表示された。これは複数選択可能で、決定ボタンを選択すると完了するようだ。私は前衛と補助のボタンを選択し、完了ボタンを選択した。

 すると、ウィンドウに「156人」という数字が表示され、更に「分別を行いますか」というボタンが表示された。更に分別を行うボタンを選択すると、職業、契約日数、性別、種族、戦闘位置のボタンが表示された。

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