第30話 第1章 異世界到着 26

「そう言えば、職業レベルや冒険者職業のレベルが上がるとステータス値も上がるのですかね。」

「そう言えば、兄ちゃんは冒険者組合に登録したからギルドカード持ってるんだったな。 傭兵にも傭兵組合からギルドカードが発行されてるからステータス値は分かるぜ。 ステータス値は職業レベルや職種レベルが5上がるたびにどれかの数値が1上がる。 一番使った数値が上がると言われてるが定かじゃねぇ。」

 そう言えば、ステータス値が分かるのは限られた職業だけだったな。 つい、昔読んでいた小説の話のような感じで皆が知ってると思ってしまっていた。 しかし、レベル5でステータスのいずれかが1だけしか上がらないだと! 小説やゲームなどではレベル1上がって複数上がるのが普通だぞ。 南井爺ちゃんも色々甘いくせにケチなとこもあるよな。


「レベル5で1上がるのって少なくありませんか? それとも、レベルがとても上がりやすくて、平均がレベル300とかそんな感じなんですか?」

「確かにレベルは20までは上がりやすい、 頑張れば1カ月で到達できるかもしれん。 だが、レベル20の壁と言うのが有ってな。 レベル20からはレベルアップに要する熟練度が倍になって行くんだ。 冒険者で言えば、兄ちゃんが泊ってる春風館を定宿にしている銀ランクの平均がレベル30前後と言えば分かるか。」

 中堅冒険者でレベル30前後、第1、第2も30まで上がってるとして合計18アップってことか。 初期の能力が平均5の7個あったから35、レベル30まで上がっても初期値から1.5倍しか上がってないじゃないか!


「ステータス値って上昇速度が遅いのですね。」

「はあ? お前ちょっと頭おかしいんじゃねぇ~か? 能力が1.5倍になってるんだぞ? それで強くなってないだと! 握力50のやつが75になって、100㎏持てるやつが150㎏持てるようになってるのに強くなってないと言うのか。 お前の中では10倍とか100倍になってるんじゃないだろうな。」   

 そう説明されると、10倍になってたら日常生活に支障が出るよな。 100㎏持てるやつが1t持てるようになって、更に強化魔法でパワーアップか。 想像してみると確かに異常だな。 小説やゲームの常識とは違うってことを理解しなければいけないな。


「少し思い違いをしていたようです。 力を欲するあまり欲が出ていたようです。 すいませんでした。」

「あやまるほどの事じゃねぇ。 誰もが強くなりたいと思うものだ。 ただ、レベルだけがステータスアップする道じゃないぞ。 地道な訓練でもステータスは上がるからな。 我ら傭兵団の強みはそこにある。 重い者を運ぶ訓練をすれば筋力値が上がるし、細かな作業を重ねると器用値が上がるってな感じで、地道な修練で上げることもできる。 冒険者は訓練をやらない奴が多いから、同じレベルでも傭兵の方がステータス値では高いんだ。 軍人も訓練はしてるが、あれは形だけの訓練だから、あまり効果は出てないはずだ。 強くなりたいなら地道な訓練が自分を育てる事になることを覚えておくが良い。 上がると言っても毎日継続して1年で1ってとこだが10年で10も差が出ると思えばやる気もでるだろ?」

「我々、戦闘司祭も日々の修練は欠かしません。 明朝からご一緒に修練なさいますか?」

「いや、まずはこの地の知識や決まり事を覚える方が優先だ。 訓練は通常に生活が送れるようになってからでも遅くはないからな。」

 別に訓練が面倒なんてことはないぞ! 優先すべき順序が有るってことだ。 心にやましいことなんて、これっぽっちもないのだからな!


「兄ちゃんはレベルは全部1だったよな。 7つのステータスの平均初期値は5で、そこから±1ってとこだがどんな感じなんだ? 秘密なら言わなくても良いが、言ってくれたらアドバイスが出来るかもしれないぞ。 なんせクランでは教官もやったことがあるからな。」

「筋力値が3で知力値と幸運値が7ですね。」

「思いっきり、学者、魔法使いタイプだな。 幸運値が高いのはポイントが高いぞ! 幸運値と言うのは上がりにくいし、上げる方法が無い数値だ。 元より幸運値が低いやつは、全く幸運値が上がらない場合が多いから、兄ちゃんみたいに初期から幸運値が高いと上がりやすいらしい。」

「幸運値が高いと何が良いのですか?」

「その当人が良いと思うことが多く起こったり、悪いと思うことが少なくなる。 例えると、冒険者なら体力が上限に近くて経験値を稼ぎたいときには魔物との遭遇率が上がるし、逆に体力が少なくて回復手段も無い状態なら遭遇率は下がる。 それと、宝箱の発見確率が上がると聞いている。 それに発見した宝箱から出る財宝の価値も上がるらしい。 価値の高い財宝を見つけたら一生遊んで暮らせるだけの硬貨が得られるからな。 冒険者がパーティーを組むと幸運値が一番高いやつに適応されるらしういから、野良で組むときとかは配分の交渉でより多くを求めることが可能だぞ。」

 幸運値は結構重要な要素なんだな。 グランガイズに来てから、良い人ばかりに出会ってるのも幸運のおかげなのかもしれない。 カス大司教は例外だけどな。

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