第28話 第1章 異世界到着 24
南井爺ちゃんも言ってたけど、戦争は起きてないはずだ。 最近、南井爺ちゃんの情報は不正確な事が多いが、戦争のようなことを見逃すはずはないだろう。 長年戦争経験のない軍人は地球との戦争に役に立つのだろうか。 正規兵が使えない場合でも傭兵たちの戦闘力が高ければ何とかなりそうな気はするがな。
「おっちゃんはアハグト傭兵団の中ではどのような立場なんですか?」
「おう、おいらは5人いる幹部の1人だ。 傭兵団は団長、副団長、幹部、小隊長、副小隊長、団員って制度になっていな、これは傭兵組合に登録するときに必ず決めないといけない事項だから、すべての傭兵団は同じ制度のはずだ。 それと、総団員数が50人を超えないとクランとして
「傭兵組合も冒険者組合のようにランクが有るんですね。」
「冒険者は鉱石を模した階級だが、傭兵は10級から特級となっている。 クランを作るには代表が3級以上、副団長が4級以上じゃないと認可が下りない。 アハグト傭兵団は団長、副団長共に2級だ。」
「おやっさんは何級何ですか?」
「おいらか? おいらは3級だな。 アハグト傭兵団では最年長で結成当初から参加してるぜ。 だから、団員の皆からおやっさんと呼ばれてるんだ。」
「幹部なのに門番の仕事もするのですね。」
「門番は2交代制で昼は3人、夜は5人で回してる。 夜は隊長と副隊長が交互に入っているが、昼は平団員で回してる。 幹部の1人が1週間の間、昼の門番に加わるのよ。 月の1週目は北門、2週目は東門、3週目は南門、4週目が西門って訳だ。 だから、おいらが4週目の昼を担当してるって訳さ。 明日、門番の仕事が終わったら本部で内勤をして、再来月の1週目に北門の門番が待ってるってことだな。」
「休日は有るのですか?」
「休日? そんなもんはないぞ。 体調が悪くなったり、所用で勤務できないときは隊長か副隊長に報告すれば休める。 ただし、休めばその分の給金は支払われないし、休みを多く取ると組合で昇格試験のときの評価が大きく下がるぞ。 病弱な奴や、自己都合を優先するような奴が上の立場になれば傭兵全体の信用に関わるからな。」
結構ブラックな仕事だな。 昇格を目指さないのであれば適度に休みを取って適度に仕事をするってこともできそうだがな。
「傭兵ってもっと荒くれた感じだと思ってたのですが、結構規律が厳しそうですね。」
「町や村の警備を任されるわけだから規律が厳しくないと無理だろ。 アハグトには8つの傭兵クランが有るって言ったよな。 だが、街や村の警備を請け負ってるクランは3つだけだ。 残りの5クランは他の国や街で起こってる紛争や治安維持に出稼ぎに行って金や階級を稼いでるな。 兄ちゃんが想像した傭兵ってのはそいつらのことだろう。 あいつらのクランは規律が緩いから、組合からの評価は高くないし全体的に階級が低いやつが多いんだ。 そんなやつらに大事な町や村の警備を任せたくはないだろ?」
それはそうだよな。 荒くれ物の集まりに街や村の警備なんて任せたら、逆に治安が悪化しそうだ。 街や村の警備を任せられるようなクランは日本で言うと派遣やアルバイトを使わない現金輸送とかを担当する会社で、残りのクランは工事現場などに派遣やアルバイトを使ってる会社みたいな感じだと思っておこう。 それぞれに使い勝手が違うし、メリットやデメリットもあるだろうからな。
「もし今、この国やグランガイズ全体を巻き込んだ大規模な戦争が起こったら、傭兵団や我々市民はどうなると思いますか?」
「えらく物騒な話だな。 街や村の警備を請け負ってるクランは警備人数を増やして周辺警戒も密にしクランハウスで内勤や待機してる者には非常時警戒態勢が発動されて、いつでも出動できるような状態になるだろうな。 出稼ぎに出てるようなクランは儲け時とばかりに戦場に向かうだろう。 市民は戦場が近くない限りは通常維持だ。 冒険者組合は傭兵クランの巡回が薄い場所や街や村から離れた地域の偵察依頼を出すだろうぜ。」
「傭兵クランの内勤ってどのような事をやってるんですか?」
「俺たち幹部や隊長格は書類仕事が主だな。 通常の団員は訓練が大半だ。 いざ実戦となったときに動けないって状態になったら困るだろ? だから、新人には1~2年間は基礎体力や座学、そこで7級以上になると実践訓練が増えて6級以上になるとようやく実務に入るんだ。 実務時でも内勤の時は自己鍛錬や後輩の指導をして上の階級を目指すのさ。 街や村の警備などの外勤が3割、内勤が7割がアハグト傭兵団の内訳だな。 他の傭兵団も外勤の割合がうちより多いが、5割は残ってないと問題が起こったときに咄嗟に対処できないからな。 村などに盗賊が押し寄せてきても警備員だけで対処できんだろ。 報告が入ったらクランハウスの内勤してる者が対応するんだよ。」
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