第26話 第1章 異世界到着 22

「5年契約の場合、死に直接つながるような命令以外は従わなければなりません。 雇用時に従属の首輪が嵌められ、契約の首輪と同じ仕様となっております。  契約相手を拒否することは可能ですが、3年間契約が為されなければ鉱山に送られ終生労働の罰が科されることになります。」

 5年契約は奴隷制度そのものだな。 でも、誰にも契約されないで生涯鉱山労働になるのも可哀そうな気がする。 1年契約や3年契約なら会社で雇用する感じで良いのかもしれないので、訪問する事も考慮に入れておこう。 


「門番の交代時間は分かるか?」

「門番に何か用事があるのですか?」

「門番の1人に夕食をおごると約束したんだよ。」

「なるほど、門番の交代時間は18刻ですね。 6刻と18刻には教会の鐘が鳴るので覚えておいてください。」

 俺は机の上に置いてある魔法時計に目をやった。 時計には17の数字が出ており、4色目の色が落ち始めていた。

  もうすぐ交代時間じゃね~か! でも、交代の門番に連絡先を告げておくと言ってたし問題ないな。


「今から西門まで行くんだがラーテイはどうする?」

「お邪魔でなければ同行したいと思います。」

 晩飯を食って、多少飲むと思うので同行者は居たほうがいいだろう。 暗くなると宿の場所も分からなくなるかもしれないからな。

「すぐにも出かけたいんだが、準備ができたらドアをノックしてくれ。」

「私は荷物を多く持ってきてませんので、このまま出かけれます。」

 そう言えばラーテイの手荷物は小袋だけだったな。

 俺とラーテイは宿を出て西門に向かった。 歩いていると教会の鐘が聞こえてきた。

 

「この鐘が終業の合図でもあるのですよ。 役所などの公的機関や教会の礼拝なども終了します。 宿屋や食事処、酒場、人材斡旋所がにぎわうのはこの時間からですね。」

「最初の3カ所は分かるんだが、何故人材斡旋所がにぎわうんだ? 通常は仕事が始まる早朝がにぎわうんじゃないのか?」」

「日雇いの仕事も仕事終わりに翌日の仕事を予約しておく場合が多いのですよ。 当日の早朝では探す時間も限られてしまいますし、定員が満たされていて良い仕事は無くなってますからね。 それに、人材斡旋所は性を売る場所でもあるのですよ。 高額な仕事ですし、短期でお金を稼ぎたい者が待機しております。 人材斡旋所の隣には専用の宿屋が用意されており、そこを使うも良いですし、定宿を相部屋にして連れ帰るのも良いですよ。 気に入れば、交渉すると週単位での契約も可能になります。 健康管理はしっかりとされていますので、病気がうつる心配も有りません。」

 人材斡旋所が風俗も兼ねてるのかよ。


「教団関係者なのに性産業に肯定的なんだな。」

「罪人を裁き、刑期を決めるのは神殿です。 刑期は最低でも1年になっており、稼いだ金額から所定の生活費と税金が差し引かれ罰金を引いた額が釈放時に手渡れます。 刑期内で最低金額を稼げなかった場合は刑期が伸びます。 借金が返せずに入所した者も同じです。 何年も稼ぐことが出来ないと最終的には終身労働になるので必死に働くことになります。 自ら登録する場合は歩合制となります。 冒険者の多くが組合と併用して登録しているようですね。 売り上げの一部が教団に還元されるので、教団は人材斡旋所を推奨しております。 ユグ様も登録だけでもなさったらいかがでしょうか。 斡旋所でパーティを探す人も多いですよ。」

 組合は人材の紹介のみで保証もしてくれるが、人材斡旋所は交渉によって契約するので責任は自己責任になるってことか。


「冒険者で気に入った者を見つけて、斡旋所の契約条件に性交渉が可になっていれば申請することがも出来ますし、ユグ様を気に入って申請される方も居るかもしれませんからね。」

 俺は男色の気はないぞ!


「女性冒険者も利用者が多く、一夜の相手を見つける場所として利用されてます。」

ホストクラブとしての利用もあるのか。 グランガイズの女性は結構肉食系なのかもしれない。 登録するにしても条件は限定することにしよう。


「教団もそうだが、ラーテイも性に関しては開放的な考えなんだな。」

「教団には聖職者たるもの民を愛し、民に愛されねばならないという教義があり、司祭以上になると30歳までには配偶者を複数持たねばならない決まりまであるのです。 配偶者が多ければ多いほど慈愛に満ちていると称され昇叙されやすくなるのですよ。 斡旋所で異性に愛を施すことも奨励されています。 愛を与えることが間接的にも金銭的にも、彼の者たちの助けになりますからね。 ただし、聖職者同士の婚姻は認められておりませんし、性行為も罰則がございす。」

 地球と違って聖職に就いていても結婚できるのか。 更に重婚も推奨されているとはな。 知らない法もあるみたいだし、地球の中世を想定して行動したら間違った判断をしてしまうかもしれないな。 グランガイズの常識を出来るだけ早く学び、親しい者に自分の行動が間違った場合に指摘してもらわねばならない。 

 ラーテイがいる間は心配はないが、別れた後も助言してくれる者が必要だと痛感した。


 そのような事を考えてると西門が見えてきた。 門の前にはおやっさんを含む4人の人物が屯っているのが見える。 おやっさんにライドル、ゲルタだったか‥‥に部屋の中にはいたが名前を聞いてない奴が話し込んでいた。

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