第25話 第1章 異世界到着 21

 部屋を見渡すと、ベットと机とイスと収納棚があり、ベットの横に10ℓくらい入りそうな木の樽が置いてあった。 多分、この樽がラーテイが言ってた教団指定の樽なんだろうな。  部屋の隅に小部屋があり、真ん中に空洞が空いた椅子が置いてあった。 これはトイレだろうな……

 背負い袋から粉袋と魔法時計を取り出して机の上に置く。 巾着からリュックを取り出し、出したリュックからお茶が入ったペットボトルとマグカップを出して机の上に置き、リュックと背負い袋を収納棚に入れてから椅子に腰かけた。

 まだグランガイズに転移して1日も経っていないが、色々な事が有りすぎて疲れてた。 しかし、門番のおやっさんとの約束も有り、番所まで行かねばならない。 ペットボトルのお茶をマグカップに移し、飲みながら今後の事を考えようとし思ったときに扉がノックされ、ラーテイが部屋に訪ねてきた。 俺はペットボトルを巾着にしまい、ギルドカードを抽出して鍵を外してラーテイを部屋に招き入れた。 


「部屋の使用法を伝えに参りました。」

「大体は想像は付くが、説明を頼む。」

 俺は再び椅子に腰を下ろしラーテイの説明を聞くことにした。


「ベット、机、椅子、棚の使い方は説明しなくてもいいですよね。 そこの樽は水創造で出せる最大量が入る教団指定の樽です。 樽は衛生管理されておりますので生活用水にお使いください。 そこの小部屋は清掃所となっております。  体の清掃の魔法や用を足すときに使ってください。 中にある椅子は清掃の魔法がかかっている場合には色が白になっており、用を足し終えると自動的に粉になります。 使い終われば椅子が黒くなりますので、再度清掃の魔法をかけ直してください。 小部屋に粉袋を持って入ると自動的に粉が収納される仕組みになっているので1日一回、または利用時に持って入ってください。 食事を部屋でお取りになる場合は食べ終えた食器を廊下に出しておけばよろしいですよ。 宿から外出する際は私に一声かけてからにしてください。 説明は以上です。」

「ラーテイはどれくらいの期間俺と同行するんだ?」

「今回は特殊なので分かりかねますが通常なら3日、長くとも5日と思われます。」

「すると5日後からは単独でダンジョンに挑むことになるんだな‥‥‥」

「説明しておりませんでしたが、私はユグ様が危険と判断しない限り手助けは致しません。 寄付を頂ければ補助魔法をかけることも可能ですので申しつけ下さい。 回復は無料ですので体力が減れば、私の判断でかけさせていただきます。」

 ラーテイの事を戦力として当てにしていたのに、早速計画にくるいが生じてしまったな。 低階層序盤では問題は無いだろうが、魔イタチが出る層からは召喚する魔物にもよるが苦戦が予想される。 組合でパーティに参加するか、人材斡旋所で人を雇うことも考えておかねばなるまい。 そもそも人材斡旋所の仕組みが分かってないので聞いておくことにしよう。


「人材斡旋所ではどのような制度や金額で人を雇えるんだ?」

「基本は1年契約と3年契約と5年契約に分かれております。 金額は斡旋される者の能力によって異なります。 冒険者として雇うとすれば金額は高くなるでしょうね。 1年契約の場合は軽犯罪者や少額の債務者が多く、 複数年契約者は罪の重い者や多額の債務者になります。 どちらの契約でも通常の生活を保障しなければなりません。」

「通常の生活とは?」

「寝床と1日2度の食事と月に100個の微小魔石を与えねばなりません。 これは、どのような契約でも守らねばならない基礎です。 あとは契約年数によって契約条件が変わります。」

 衣食住は与えないといけないってことだな。 清掃の魔法が有れば服は汚れの無い状態が保てるからな。


「1年契約の場合は理不尽と思われる命令も拒否することも出来ます。 命令を拒否されたことに不満が有るならば神殿に訴えて審判を仰ぐことができ、拒否の妥当性が無い場合は契約金は返金され拒否した者の奉仕期間が延びることになります。 その者と再契約するか、新たな者を雇用するかは自由です。 1年契約者と3年契約者は誰にも雇われずに斡旋所で暮らしていると期間や借金は減りませんので、日雇い労働として貸し出されるのです。 運搬人も日雇い労働の1つですが、日雇いの中でも高給なので人気が有るのです。 運搬人は大銅貨5枚で日雇い契約できるので中級冒険者が雇う場合が多いです。」

 1年契約だと理不尽な雇用制度ではなく、通常の人材派遣会社みたいに思えるな。


「3年契約の場合は契約時に条件を決めることになります。 決められた条件以外は1年契約と同じですね。 条件を決めた後に契約の首輪が嵌められ、条件に従わないと首輪が縮まり死に至る場合もございます。 条件が気に入らなければ契約が為されないので無理な条件付けはされないのが無難でしょう。 ただし2年間契約が為されない場合は5年契約者になります。」

 3年契約は自分で条件を選べるだけブラック企業よりマシないくらいかな。


「5年契約の場合、死に直接つながるような命令以外は従わなければなりません。 雇用時に従属の首輪が嵌められ、契約の首輪と同じ仕様となっております。  契約相手を拒否することは可能ですが、3年間契約が為されなければ鉱山に送られ終生労働の罰が科されることになります。」

 5年契約は奴隷制度そのものだな。 でも、誰にも契約されないで生涯鉱山労働になるのも可哀そうな気がする。 1年契約や3年契約なら会社で雇用する感じで良いのかもしれないので、訪問する事も考慮に入れておこう。 

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