第24話 第1章 異世界到着 20

「短剣は鞘が有るけど、杖はずっと手に持ってないといけないのか?」

「魔石ポーチのベルトに適合した杖の留め具が御座いますので、私が持ってきますね。」

 ラーテイはそう言うと足早に武器売り場から留め具を持ってきてくれた。 それらを持って会計所に向かう。 会計所の横の棚でポーションを見ると低級、中級、高級に分かれて並べられていて、低級は1つ小銅貨5枚、中級は大銅貨2枚、上級は大銀貨1枚と値札が出ていた。 


「回復薬と解毒薬をそれぞれ低級5本、中級2本買っておけばよろしいかと思いますよ。 いざとなれば私が回復魔法が使えますから。」

 ラーテイの助言に従い会計所に持って行く。 合計金額を払い、ポーションをポーション箱に収納して、魔石ポーチを腰に付け購入した品を背負い袋に入れて背負った。 巾着から教会で貰った微小魔石を取り出し、魔石ポーチに入れる。

 そう言えば、召喚魔法は小魔石が必要だったはずだ。


「魔石も道具屋で購入出来ると言っていたよな。」

「会計所で口頭で直接注文すると買えますよ。 50個ほど購入して置けばよろしいのではないでしょうか。」

 これもラーテイの助言通りに会計所で小魔石を50個購入することにした。 購入した小魔石もポーチに入れて道具屋を後にする。


「さて、次は宿屋を探そうか。」

「どのようにな宿になさいますか? 個室か大部屋か私との相部屋がございますが‥‥‥」

「寝るときくらいは1人でのんびりしたいので個室が良いな。」

「安宿の個室は空きを探すのは難しいので、中級ほどの宿でもよろしいでしょうか? 朝食が付いて1泊で銀貨1枚ほど出せば見つかると思います。 定宿として1カ月単位で支払いをすれば半額になる場合が多いと聞きますね。 今は人口が増えて、壁の拡張が計画されている状態なので不動産の販売も少ないので安宿はすぐに埋まってしまうのですが、月に銀貨1枚以上を出せる人間は限られてますので空きがあるのですよ。」

「安宿が見つからず、資金が少ない人たちはどうやって夜を過ごしてるんだ?」

「南の門の外に巨大な天幕が数枚張ってあるのですよ。 そこで敷物をを敷いて自分の生活空間を確保しているようですね。 傭兵が巡回してますので治安は悪くは無いようですよ。 開拓村が出来るとそこで生活していた者が希望する場合が多いそうです。」

 貧乏な奴は壁の外で生活するのは中世ファンタジーの定番だな。 人族の街や村は魔獣がほぼ出ないが、野生の獣は出るだろうから安心して寝れないよな。 初期資金をくれた南井爺ちゃんには感謝の念しかない。 教会の場所も知れたことだし定期的に礼拝しに行こう。



「銀貨1枚で安全と安心が買えるなら問題ない。 そこに案内してくれ。」

「畏まりました。 南東エリアには冒険者用の宿が多くございます。 冒険者の評判の良い宿を回ってみましょう。」

 歩くこと10分ほどで大通りから少し奥まったところにある大きな建物の前まで来た。


「部屋に空きが有るか聞いてきますので、こちらでお待ちください。」

 そう言い残してラーテイは建物の中に消えて行った。 建物にの前には『春風館』と書いた看板が掲げられており、歴史を感じる店構えをしている。 見渡すと宿らしき建物が多いが、その中でも春風館は一番大きく、品格も感じられた。


「ユグ様、部屋の空きがございました。 受付で宿泊手続きをするのでお越しください。」

 俺は受付カウンターまでラーテイに伴われて歩いて行く。 入り口の扉の中に入ると、一階の入り口付近はは食堂兼酒場になっているようだ。 受付カウンターの横は食堂のカウンターと繋がっており、料理の代金もここで支払う仕組みになっているらしい。 ラーテイガ言うには、食堂の奥には大部屋が4室あり、食堂と大部屋の間に2階への階段が有り、階段を上がると左に相部屋が4室、右に個室が8室あって、個室が3室空いていたらしい。 雰囲気も良いし、この宿を定宿にしても良いかもしれないな。 だが、冒険者として安定した稼ぎが出来るか分からないし、取り合えず月末までの4日間宿泊することにした。 


 春風館の個室は1泊銀貨1枚大銅貨2枚と少し高いが、食堂が併設されている中級宿は少ないらしい。 春風館も月単位で宿泊料を払うと半額になる。 4日間過ごして問題なく、冒険者業も順調なら月初めから1カ月単位で宿泊することにしよう。 冒険者業が稼げないならもう少しランクを落として安い宿を探すしかないな。 

 朝食は宿泊料金に含まれており、夕食も先にコースを選び、先に料金を支払いしておくと部屋まで届けてくれるらしい。 コースの値段は大銅貨2枚と3枚と5枚の3種類に分かれており、飲み物としてワインが一杯付いてくると説明された。 今日は春風館で食事する予定はないので4日分の宿泊料金を支払い部屋に向かう。

 階段を上り、右側一番手前の『201』とプレートが張られた部屋が俺の泊まる部屋だとラーテイが俺に告げる。 ラーテイは向かいの『208』の部屋だそうだ。 番号は俺の泊まる部屋から時計回りに番号が割り当てられてるみたいだな。 

 鍵はギルドカードを差し込めば良いらしく、受付で提出したギルドカードの所有者が登録される。 部屋の中に入り、ギルドカードを内側に差し込んで錠をかけ、ギルドカードを体内に収納する。 

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