第16話 第1章 異世界到着 12

「それでは、冒険者組合の近くに『安い・美味い・多い』と評判の店が有るので、そこで食事を取りましょうか。 ユグ様は資金はお持ちなのでしょうか? 我々教団は貸金業も商っておりますので、ご融資できますよ」

 この世界でも宗教が金貸しやってるのかよ。 日本も昔は寺社が金貸しやってたと言うし、その制度のせいで寺社の権力が大きくなったと書いてあったな。


「長司祭リーリアスからユグ様には無制限で融資しても良いと許可頂いておりますので、気軽に御申しつけ下さい。」

「利息は有るんだろう?」

「御座います。 利息は月に1割と法で決められています。」

 単利か福利かは分からないが、単利だとしても年利換算で120%かよ。 一昔前の街金でもそこまで高くなかったぞ。


「大丈夫だ。 巾着の中に硬貨入れが入っていてな、資金には問題ないと思う。 足りなくなったら、頼むかもしれないから、その時はお願いするよ。 物価が分からないので、どの程度持つか分からないんだけどな。」

「一般的な初級の冒険者の1日の生活費で例えますと、宿泊費は組合施設の大部屋なら1人銅貨3枚です。ここは人気ですので空きは無いことが多いです。 安宿の大部屋なら1人銅貨5枚です。 大部屋は個人で使うと問題が起こることも多いですのでパーティーで借りる人優先されています。 宿には2人部屋と個人部屋も御座いまして、2人部屋が1人大銅貨1枚です。 個人部屋なら大銅貨2枚ってところが初級冒険者の宿泊費です。」

 宿泊費を考えると大銅貨が千円と考えれそうだ。 硬貨入れには銅貨が3種類、銀貨が2種と金貨が入っていた。 大銅貨が千円で銅貨が百円と考えられる。 残りの銅貨と銀貨と金貨の価値も聞いておこう。 


「銅貨と大銅貨の他にどのような硬貨があるんだ?」

「小銅貨10枚で銅貨になります。 そこからも10枚単位で価値が上がっていって、小銅貨➡銅貨➡大銅貨➡銀貨➡大銀貨➡金貨➡大金貨となっております。 大金貨などは大商店や国家や組合くらいしか扱ってないでしょうね。 神殿関係者でも見たと聞いたことが御座いません。 司教クラスになれば扱うこともあるでしょうが‥‥」

 金貨も2種類あったのか。 小銅貨が10円で小銀貨が1万円、銀貨が10万円、金貨が100万円、大金貨が1000万円ってことか。 そりゃ大金貨は入ってないはずだ。 詳しくは数えてないが金貨は10枚以上入っていたはずだ。 1000万もあれば普通の生活でも2~3年出来ると言うのは、爺ちゃんの言う通りだったな。


「月に1割と言っていたが、ひと月は何日で1日は何時間なんだ?」

「ひと月は30日で1日は24刻です。 1年には12の月が御座います。 今は8の月の4の週の土の日です。」

 ガキの言っていたことは正しかったな。

「土の日とは?」

「1週間には7日御座いまして、1日から大、光、火、水、風、土、闇の順で日数が過ぎて、8日目からまた大から数えるのです。 ですので、大と光は月に5回有ります。」

 なるほど、今日は8月の27日だということなんだな。 地球とは1年で5日の誤差ができるのか。 そのような事を話しながら歩いていたら、ラーテイがある店舗と思われる建物の前に立ち止まった。


「ここが先ほど話していた食堂ですよ。 そして、あそこに見えるのが冒険者組合で、その向かいが傭兵組合です。あと、近くに商人組合や生産組合の建物も御座います。 この辺りに組合が集まっているのですよ。」

 ラーテイは少し向こうに見える建物を指差しながら説明してくれた。 昼過ぎだからだろうか、店の前も大通りも組合周辺も、それほどの混雑している様子はない。 スマホは巾着の中だから正確な時間は分からないがな。 ラーテイは木製の扉を開け中に入って行った。 俺もそれに続き中に入って行く。 中はテレビで見るような社員食堂といった感じで横長の木製の机に両側に木製の丸椅子が5個づつ並んでいた。 そのような机が横5列、縦10列ほど並んでいる。 見た限り座席は1割~2割しか埋まっていない。 しかも、飯を食ってると言うより酒を飲んで話してくつろいでるように見える。 まぁ、何処の世界でもこういう人間はいるよな。 ラーテイは誰も掛けていない机の座席の前まで行き俺を座席に案内してくれた。


「こちらで頂きましょう。 今回はユグ様の登録祝いとして、支払いは私が持つのでお好きな物を注文してくださいね。」

 ラーテイが奢ってくれるらしい。 好きな物を頼んで良いと言ってくれたが、メニューも読めないし、どんな食べ物が有るかさえ分からない。 かつ丼って言ってかつ丼が出てくるとは思えないしな。

「俺はどのような品が有るか分からないから、ラーテイと同じで良いぞ。」

「では、肉・魚・野菜のどれがお好きですか?」

 その中でなら肉なんだが、この世界の肉って何の肉なんだろう。 魚も不安だな。 といって野菜はあまり好んで食べてこなかったからな‥‥‥ 郷に入っては郷に従えと言うし、ここは肉を頼んでみよう。 

「肉が好きだから、肉料理を頼めるかな。」

 ラーテイは店員を呼ぶと、焼肉の定食らしいも物とワインを頼み、その場で大銅貨2枚を支払っていた。


「あ、お飲み物はワインにしましたが宜しかったでしょうか? ワインが飲めないのであればエールに変えることも可能ですよ。」

 どっちにしても酒じゃねぇ~か。 昼間から酒を飲むって言うのは日本人として違和感があるよな。


「いや、ワインで良いよ。」

「それは良かったです。 私は宗教上の理由からエールを嗜むことを禁じられているのですよ。 無料で水を頼むことも出来るのですが、食材の品質や接客態度や提供時間に影響が出ますのでお勧めしません。」

 注文するものによって店の応対が変わるのか。 忙しい時間帯ならまだしも、このような空いてる状況なら目立つだろうしな。 それに祭服を着てるような人物がケチだと思われるのを避ける意味もあるのだろう。 暫くすると300gは有ろうかと思える肉の塊が乗った木製のプレートが2つ運ばれてきた。 続いてワインが500mlほど入ってそうな木製のジョッキ2つと、こぶし状の大きさの黒パンが4つ入った木製のボール状の入れ物が運ばれてきた。 


「この量で1人で大銅貨1枚なのは安いんだろうな。」

「そうですね。 この焼肉のセットで銅貨5枚でワインが銅貨5枚なのはお安いですよ。 エールなら同じ量で銅貨2枚で済みますからね。」

 この焼肉セットが日本円で500円だと! 確かにプレートの上には野菜やポテトなどの付け合わせもない肉だけだが、硬いパンだけど、2個もついてるので安すぎる。 日本で食べたら安くとも2千円くらいするのではないだろうか。 食べ物に対して、ワインはちょっと高く感じるが、日本と比べると相場より少し安いのと思う。 日本での生活に慣れていると代金の先払いに違和感があるが、地球にも先払いな地域も多いらしいからな。 少しの雑談を交えながら食事を取り終え食堂を後にする



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