第10話 第1章 異世界到着 6

 大司教って結構な身分の人だったよな。 俺は無事にこの建物から出ることが出来るのだろうか。 不安が雰囲気に出ていたのだろうか、白い祭服姿の女性が俺に声をかけてきた。


「 私はシスターマルレシアと申します。 何も分からないのは辛いことでしょうね。 私でよろしければ多少の疑問にお答えできることもあるかもしれません。 会話することによって、気持ちがが落ち着くことも御座いましょう。 我々六神教・光の徒は民に寄り添い、心と身体のケアを心がけてます。 どうか、悩みや分からないことが有れば、気軽に話してみてはいかがでしょうか。」

 先ほどまで話していたケッセル神父よりかは幾ばくか年嵩の増したと見える女性で、慈愛に満ちた笑みを浮かべている。 俺は内心、胡散臭いと思いながらも質問をすることにした。


「国籍が無いと言う事なのですが、これから私はどのように扱われるのでしょう。」

「犯罪者ではない限りは、最初に確認された場所に登録されることになるはずです。 貴方の場合ですと、村の少年と道中で出会い、最初に確認されたのがアハグトの街ですので、エルテルム王国のケルゼン伯領・アハグトの領民登録になると思われます。 もし貴方が神殿に保護を求めるのであれば、私たちも出来る限りの助勢はさせていただきますよ。」

 既に俺の行動はある程度調べ上げてると言うことだな。 念話で個人通話が出来る世界だ。 門番の誰かから情報を得たのか、あの部屋の会話を知る術があるのかは分からないが、好ましい行為とは思えない。 それに宗教を信じるのであれば、初めからグランガイズ3位のアリライ神聖国を選んでるよ。 この世界は神と呼ばれる者が実際に居るので、地球ほどには腐っていないとは思うけどな。 レベルとかの事も聞きたいが、何をどのように聞けば良いのか分からない。 取り合えず漠然と聞いてみるべきか。

「レベルと仰られてましたが、レベルとは何ですか?」

「まず、ステータス情報は御存知ですか?」

「いえ、分かりません。」

「生物にはステータス情報があるのですよ。 鑑定などで見られるものなのですが、『名前・年齢』『職業・レベル』『現在の状態』『所有魔法と所有スキル・レベル』『現状能力値』が分かります。 鑑定のレベルが上がるともっと詳細な情報が得られるらしいのですが、鑑定のレベルの高い人は滅多におられないので真偽のほどは分かりかねますね。」

 俺は自分のステータスは見れないので、どのように映し出されているのかが分からないが、取り合えず職業レベルが1なのだけは確かなようだ。 おれの職業欄は空白だと言っていたな。 この世界にはトレーダーなんて無いだろうし、職が不明なのは仕方が無いだろう。


「職業はどうやって決まるのでしょうか?」

「職業は成人の儀の際に成りたい職業を選択することができます。 嫡子は親の職業を継ぐのが一般的で、後の子供は、街に出て職を探すことになります。 一番多くの人が選ぶのが、新村が出来て農業を営む『農民』でしょうか? 職人に弟子入りする場合もありますし、最近では冒険者組合ぼうけんしゃギルドで『冒険者』を選ぶ若者や傭兵組合ようへいギルドで『傭兵』を選ぶ若者が増えてると聞きます。 転職したい場合は教会でできるのですよ。 ただし、転職前の職業とレベルは残るのですが、転職後のレベルは転職前の職業のレベルの半分から始まります。 なので、うまくいかずに諦めて元の職に戻る人も多いですね。 婚姻すれば家業を持ってる人に合わせる場合が多いです。 もちろん、別々の職業の方もおられますよ。 職業を変えずに他の仕事に着くことは出来るのですが、本職の人よりは効率や上達にすごく差ができるのでお勧めしません。」

 職業を変えた時に現時点の半分のレベルがもらえるのか。 レベル1からやり直すので無いのは結構優しい制度だな。


「後、犯罪者になると強制的に職業欄に犯罪名が表されることになります。 例えば人を殺めた者は『殺人者』となり、捕まれば神殿に送られ審議官が罪の重さを判定します。 事故等によって人を殺めた場合などは、更生施設に送られ刑期を終えれば再度一般職に戻れます。 軽犯罪も同様ですね。」

 入門審査で水晶が赤く光ると犯罪者と言っていたな。 あそこで赤く光ると神殿送りになってしまうのか。 裁判所の役目も負ってるんだな。 罪状が明らかだから、弁護士や判事も要らず即日結審って訳だ。 後は本当に教会関係者が誠実であるかどうかだがな。


「大司教が来られるとおっしゃられてたのですが、教会ではどのような地位におられる人なのでしょうか。」

「六神教と言っても色々御座いますが、人族限定で言えば教皇猊下を頂に、23名の大司教台下が次席として数えられます。 本国の大聖堂に教皇猊下と大司教台下3名が常駐しており、各国の首都の大神殿に1人ずつ常駐しております。 各領都の神殿には司教が、各街の神殿には神父ケッセルのような掌院や典院てんいんが管理を任されていて、そこに私達のような司祭や輔祭ほさいが務めております。」

 掌院や典院などは聞いたことはないが、司教と司祭の間の地位っぽいな。 俗に言うとファーストフード店の店長みたいな地位ってことだな。 大司教ならこの国の教会のトップか。 それに、このシスターは自分が司祭か輔祭と言ったな。 この世界では聖職者に女性もなれるのだな。


「魔法やスキルは教会で得られると聞いたのですが、ここでも得ることはできますか?」

「各神殿は神聖国の出先機関でも在り、法を司る場所でもあり、聖職者が祈り修行する場所ですので一般人の出入りは許可が無いと許されません。 ですので、通常は街や村の各教会でのみ配付しております。」

 ここでは無理なのか。 来た意味が無くなってしまった。 おやっさんも一般人は入れないって言ってたもんな。


「神父リーリアス、台下の面談の後であれば貴方がキサラギ様に配付することは可能ですか?」

「神殿内での配付は無理ですが、近くの教会でなら私が同行して配付することは可能です。」

 リーリアスと呼ばれた神父が無表情で応えた。 こいつ、会ってからずっと無表情だな。


「神父リーリアスは長司祭で司祭の中でも優秀なので褒章されるほどの人物なのです。 頼られると良いですよ。」

 この無愛想な神父が長司祭だったのか。 確かおやっさんは長司祭に連絡取れって言っていたよな。 本来

ならこいつが俺を審査してたはずってことだ。 それが何故か、この施設の責任者に代わって、更に王都から大司教とかが来ると言う。 段々と自体が大事になっていないか? そのような事を考えていると廊下の方から話し声と金属が擦れるような音が聞こえるだした。 声と音の主は扉の前まで来て、リーリアスみに扉を開けるように指示をだした。 声からするとケッセル神父が戻ってきたようだ。

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