第4話 プロローグ 4

「グランガイズの言葉は理解できるのですか?」

 言葉が通じないとなると色々問題が出てくる。 通じないとなると習得までの期間もかかるし、生活もままならないからな。


「その点は大丈夫じゃ、普通に会話はできるぞ。 グランガイズの言語は1つじゃ。 ちなみに今、わしが話してる言葉はグランガイズ共通語じゃぞ。 お主は日本語を話しておるがな。」

「え? 普通に日本語と思ってましたよ。」

「そうじゃろ。 グランガイズでは魔法の念が発達し言語に至ったので他種族とも会話ができる。 個人でなら念話で話すこともあるが1人限定なので通常は言語で話すのが一般的になっておる。 お主も転移させるときにグランガイズの人と同じような能力を得るので大丈夫であろう。 ただし、文字は自分で習得するしかないぞ。」

 

まぁ、話が通じるだけでも大助かりだ。 これで人里離れたところでキャンプ生活せずに街に行くことができる。 グランガイズ人と同様の能力を得るということは俺は魔法が使えちゃうのか!!

 不安が一気に期待へと変わっていく。 それを見た南井爺ちゃんは茶受けを齧りながら答えてくれた。


「魔法は使えるようになるぞ。 グランガイズはスキル制じゃから努力すると資質があれば能力は上がる。 お主は人間族が使えるスキルは概ね使えることになるじゃろう。 精進せよ。」

「スキル制なのですか。 ではHPとかMPとかステータスも表示されるのですか?」

「一般の人々は知らないであろうな。 だが、人間族の貴族や神官たちは知っておる。 あと、冒険者のギルドカード記録されているので念じれば自分のステータスを見ることができる。 あとは鑑定の特殊能力持ちも見ることができるじゃろうな。」

「ちなみに俺に何かチートスキルを下さるとかないですかね?」

「そんなもん与える訳がなかろう。 このような忙しい時期に来ただけで迷惑なのに、逆に迷惑料とかとりたいくらいじゃ。」

「ですよねぇ~」

「じゃが、久々に楽しく会話が出来た。このように長く会話をしたのは2000年前、後に聖人と呼ばれることになった奴以来じゃ。 800年前に転移制度を決めてからお主が6人目と言っておったじゃろ? 2人は理解してないようじゃったが、一応納得してある程度の能力を与えて転生して行きおった。 2人は帰せとしか言わなくて話にもならなかったので、魔人国に転移させてやった、この爺は前に話したとおりじゃ。 お主は楽しませてくれたので2つのものを与えよう。」

 おお、言ってみるもんだ。 何がもらえるのだろう。


「1つはわしがグランガイズにお忍びで使っていた装備一式じゃ。 普通の町人の服や装備と2~3年は生活できるであろう硬貨と小さいが時空をいじった巾着じゃ。 そこにあるお主の荷物の10倍くらいしか入らんし、生き物も入らんが時間も止まるので便利じゃぞ。 アイテムボックスは普通に町の道具屋で売っているから、そんなに珍しい物ではないぞ。 時間はが止まるのは貴重かもしれんがな。」


 能力ではないが簡易アイテムボックスが手に入ったのは大きい。 あと怪しまれずに街に入れるし、生活費を稼ぐことに追われないのもいい。


「あと1つは情報じゃ。 2日後の戦争開始時に地球側に公表される情報は『南北アメリカ大陸、アフリカ大陸1つづつ、ヨーロッパ地域に14、アジア・中東・オセアニア周辺国に20個異世界に通じる『道』ができる。 勝利条件は異世界にある人間族の国20の政治機関と魔人国の公爵領の3つの王城、亜人国の14の政治機関を支配するか、全種族を皆殺しにするか。 敗北条件は国連加盟国193国の政治機関の喪失か人類滅亡。 期間は無制限。』 これだけじゃ。 グランガイズ側にも神託で6神に通達させる。」

「結構ハードな条件ですね。」

「20年前に管理神の会合でグランガイズのデータが集まったので、地球かどちらか1つを消して良いと決まったのじゃ。 わしが勝手に選んでも良かったが、生き残りの可能性を自分たちで掴む機会を与えることにしたんじゃよ。」

 何も知らずに地球が消えていた可能性もあったのか。 それはそれで幸せだったかもしれないな‥‥‥


「お主には特別に情報を与えよう。 まずは『道』のことじゃ。 グランガイズの内情を理解したお主なら分かったと思うが人族vsアジア・中東・オセアニアとなる。 魔人族vs北南米+アフリカ、亜人国vs欧州じゃ。 『道』はその地区の人口順に現れる  例えるなら人族1位のガーリス帝国とアジア・中東・オセアニア1位の中国、亜人国1位の鼠人村と欧州1位のロシア、魔人国1位の公領である吸血人族領とアメリカと言った感じじゃな。 別に他の国家や村に援軍に行ってもかまわない。」


 俺は人族の地域に行くことになると言うことだからアジア・中東・オセアニアと戦うことになるのか。 それに今ロシアってウクライナと戦争してなかったか? ウクライナも人口で言えば10位以内に入ってたと思うが大丈夫なのか? もしや、グランガイズでも、まだ人族同士が戦争してたりするのか!?

「今、グランガイズで戦争は起きてないはずじゃ。 険悪な関係の国はあるがな。」

 それは一安心だな。

「『道』37個同時に発生させる。『道』は1mの出入り口を持った穴と、中はは1kmほどの長さと高さと幅が500mな長方形の空間じゃ。 出入り口の大きさは日に1cmづつ大きくなるように設定するつもりじゃ。 『道』の中で戦うことも可能じゃぞ。」


 また面倒な設定をするもんだな。 どちらにせよ先に『道』とやらを見つけたほうが多少なり有利になるのではないだろうか。 東京都内に突然、『道』とやらができたら後先もないがな。 ん?この設定どっかで見たととあるような‥‥‥


「いきなり大きな出入口を人口過密地に作って全面戦争も楽しいかもしれないが、折角のイベントじゃ、見つかなそうに場所に作る予定じゃ。 長く楽しませてもわらんとな。」

 

とか言って、少しグランガイズに有利な設定になってないか? 序盤に地球側の利点である機械系はドローンくらいしか役に立ちそうにない。 バイクも半年ほど使え無さそうだし、主力である戦車は1年くらい使えないし、ヘリや戦闘機も2~3年はグランガイズ側に持ってこれない。 今の性能でグランガイズに持ってきても役に立ちそうにないがな。 まず、測量して衛星でも打ち上げない限り性能を使い切れないだろう。 船は持って行けそうにないから、海戦はなしだな。


「否定はせん。やはり最初に管理した世界じゃ思い入れもある。 じゃが、できるだけ地球にも配慮はしてるぞ。 確かに電脳化で攻めづらくはなったかもしれんが守りは強化されたはずじゃ。 電化しすぎの気もしないではないがな。 人間側には戦争開始の通達も2日前に出したが、グランガイズには開始直前に知らせる。」


 確かに先進国や各国都市部の電力が止まると大混乱になるだろうな。 事前通知も地球側は混乱するだけで有利になったと言えるのだろうか?


「それは受け止め方じゃ。 地球の時間で500年ほど前に、グランガイズとの戦争を500年後に起こすと決めたと地球の者・・・ノストラ何某に情報を与えたのだが、正確な情報が伝わらず大予言とか言われておったのぅ。 情報を生かすも殺すもお主次第じゃて。」


  情報や知識は持っていても有効に使わないと意味がない。 有効に使える立ち位置にいるか、そのポジションの人間と交友を持たねばならないな。


「それにグランガイズの文明の発達は遅い。 戦いの最中に地球側の団結と文明の発展が勝敗の大きなカギになるじゃろうな。」

 確かに戦いが長引けば対処能力は地球に分があるだろう。

「さて、残りの時間は30分となった。 ここはスマホの電波が届くが、グランガイズでは届かないじゃろう。 合図はしてやるから安心して調べるがよい。」

 

ここからはどれだけの情報をグランガイズに持っていけるかが大事だ。 ソーラー充電器があるのでネットはできないが使うことはできるだろう。 覚えきれそうにない情報はダウンロードしておこう。 荷物も巾着にまとめておかないとな。 南井爺ちゃんと世間話をしながら準備を進めていった。


「さて、ここまでじゃ」

 集中しているとすぐに30分は過ぎてしまったようだ。

「準備はできたかな? 転移と始めるぞ。」

「転移する場所は決まっているのでしょうか?」

  南井爺ちゃんは少し考えたのちに


「言っても分からんじゃろ? 希望があるのかね。」

 俺は行きたい国があったのだ。 それは‥‥‥

「人間族の国に行くのが決まっているなら6番目の国に行きたいです。」

 南井爺ちゃんはニヤリと笑って

「それで良いのかね? わしとしても楽しめそうだから反対はしないよ。 それでは精進してわしを退屈させんでくれよ。」


 南井爺ちゃんはそう言いながら立ち上がり、呪文のような言葉を呟き始めた。 俺も急いで立ち上がり一礼して

 「 南井爺さん、ありがとうござい‥‥‥」

と、お礼の言葉を発したが、途中で意識が遠のいていったのだった。

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