第2話 プロローグ 2

「元々、わしが管理する世界は1つじゃった。と言うより普通は1つの世界しか管理できない。」

「では何故2つの世界があるんですか?」

「管理神に選ばれると1つの星が与えられ、その星の主要生命体となる種を選べるようになるんじゃ。わしは人間種を選び管理を始め、その星を人間はグランガイズと呼び文明を作っていった。グランガイズは徐々に発達していった。いくつもの文明の興亡の末、他の神が管理する世界に侵攻するまで増長してしまったじゃのじゃ。その戦いに敗れグランガイズは滅びた。その事態を受けて管理神の会合が開かれ、わしは管理怠慢を指摘されグランガイズは初期化して作り直すことになったのじゃ。」


「世界は一度滅びたのですか。でも、作り直すにしても1つだけですよね? しかも1つでも怠慢を指摘されてるのになんで増えてるですかっ。」

つい、ツッコんでしまった。

「怠慢を指摘されたわしは新生グランガイズの人間種に神託と言って頻繁に介入し、より良い世界を創ろうとしたんじゃが人間種はどうやら戦いをのぞむ性質があるらしくてな・・・ 機械文明に進んでしまうと前回と同じように他世界へと侵攻しそうじゃから神の能力の1部を与えて機械文明への移行を止めたのじゃ。人間種はそれを魔法と名付け生活に浸透させていった。」

「おお、魔法誕生の秘話が聞けるとは!」


 俺は神の語りに引き込まれていた。神は興奮する俺を見ると、落ち着きなさいと椅子を用意してくれた。椅子に腰かけ、つい前傾姿勢で話の続きを聞く態勢にはいる。神は微笑まし気にそれを見ると続きを語りだした。


「グランガイズには大陸は1つだけしかなく、ほぼ横長の長方形なんじゃ、北と南の極は地球のように氷で覆われておる。地球とちがうのは双方に陸地がないことじゃな。大陸の中心に人間種を配置したんじゃが、何故か西へ西へと移動していき、大陸の西端が一番発展して大陸中心は寂れてしもうた。魔法を得たことにより機械技術は生まれなくなったんじゃが、文明が地球で言う中世あたりで止まってしまってのぅ。近代化をしなかった弊害があらわれた始めたんじゃ。それは人口が減り始めたことじゃ。争いを始め、信託で仲裁してもすぐに別の場所で争いが起きてしまうんじゃ。」


 中世の地球は人口の伸びは緩やかだったけど、伝染病が流行ったとき以外は伸びていたはずだ。なぜ減ったんだ?

「それはのぅ、攻撃魔法が防御魔法より発達したせいで戦争による死者が増えたからじゃ。」

神はどこからともなく急須と湯呑2つを取り出し、お茶を入れ始めた。 入れ終え片方を俺に差しだし、ずずぅ~と茶をすするとまた例のポーズに戻り語りを再開した。


「困ったわしは前回の侵攻で交友ができた管理神に相談してみた。 そうすると、そこの世界の主要生命体の長命種という人間種の亜種を譲り受けることができたんじゃ。」

「どれくらいの寿命の違いがあるのですか?」

「グランガイズの平均寿命は40くらいじゃな。 魔法が浸透したおかげで大幅に伸びておる。 戦死者を除けば50は超えてるかもしれん。 ちなみに地球の中世での平均寿命は30もいかないぞ。 まぁ、種としての寿命は100歳前後といったところじゃな。」

 確かに医療が発達していなかったから新生児の死亡率が高かったことや、伝染病とかもあったしな。


「譲り受けた長命種の寿命は1000前後じゃと聞いていた。だが現状は平均寿命は50もいってないかもしれん。」

「また大幅に下がりましたね。」

あまりにもの減少に驚いてしまった。


「最初に譲り受けた長命種100人を大陸東方に配置した。 長命種にも魔法を授け時空をいじり、時間をわしが操れる最高速度の1000倍にして成長速度を既存の人間種に追いつくようにしたのじゃ。 人間種は10万年で人口が1億人に手が届くところまで増えたんじゃが、ここ100年間平均すると毎年5万人くらい減っておる。 寿命が10倍でなら1000倍の速さで100年も経てば人間種の1/10くらいにはなると計算しての計画じゃった。」

「まぁ単純計算だとそうないますね。」


「10年たった時に長命種に3種類の新たな亜種が生まれた。 吸血種と巨人種と竜人族という種族誕生したのじゃ。 新たな3種は平均寿命は800年と2割ほど減っていた。 その代わり繁殖能力はあがったがのぅ。 その後も10年単位で亜種が増え続け、第2亜種は第1亜種の半分の400年になり第3亜種は第2亜種の1/4の100年、第4亜種はさらに1/5の20年、第5亜種はそのさらに1/5の4年じゃ。巨人種と竜人種は第5亜種がいないので平均寿命は高く、人口は少ないがの。60年目に亜種が増えなかったので、多分打ち止めじゃ。それに、譲り受けた長命種は徐々に数を減らし、60年目には絶滅したんじゃ。」

「なるほど。 上位種は死ににくいけど増えにくい、下位種は死にやすいけど増えやすいので平均寿命が大幅に下がったと言うことですね。」

「そうじゃ、またここで新たな問題が浮上したんじゃよ。」

この流れからいくと逆に人口爆発が起こったとかかな?


「いや、違う。60年目を境に全く人口が増えなくなった。食糧が問題だったんじゃ。 長命種は人間種と違って農耕や畜産はしない。野生の獣や山の幸を中心に食べておる。自分より下位の種族を食う種もいたがな。わしも獣に魔力を与え、栄養価を増やし繁殖力も増やしてたんじゃが・・・ 人間種より領土の拡張意欲が少なく人口増加に土地拡張が追い付かず、餓死する下位種が続出したんじゃ。それに人口を増やすことに重きを置いていた神託を土地を拡張することに重点を変えて出し続けたが反応は鈍かった。」

「なるほど。 全体的な地域配分はどのような感じなのですか?」

「人間種が大陸西端から中心までじゃが、大陸中心部付近はほぼまばらな集落が点在して残ってる程度じゃ。 長命種は大陸東端から2割ほどを支配して、そこからは下位種族が食料を求めて放浪してる感じじゃな。」

 と言うことは、大陸の西5割が人間種、東4割ほどが長命種、間の1割が完全空白地で両種族とも中心よりの1割は点在状態なので、実質3割が空いてるってことか。

 

「そこで方針を変えて長命種の時空を戻し、空白地の中心部に吸血種の第2亜種の1種の妖精種を配置して時空を1000倍に変更し、新たに発展させることにしたんじゃ。」

 なぜ妖精種にしたんだろう? どうせなら吸血種の子孫で良かったんじゃないのか? 俺なら神託を生息地域拡張しして、吸血種の子孫からやり直すだろう。

 

 すると、例のポーズにいつの間にかかけていた眼鏡を『キラーン』と光らせ、神様こと南井爺ちゃんは理由を話し始めた。

 

「なぜ妖精種かと言うと、第5亜種まで至ったのが妖精種だけだったからじゃ。妖精種は第3亜種では人狼族ワーウルフ人猫族ケットシーなどに変化し、第4亜種で小人族ホビット、第5亜種で小鬼族ゴブリン小人犬族コボルトと言った種族になっていったんじゃ。 妖精族は神託にも従順で繁栄させやすいと言う理由もあった。 妖精種は2種おって森人族エルフ山人族ドワーフじゃ。」

 なるほど。 従順で繁殖力も高いならうってつけの選択だ。 やはり聞いたことがある種族が多いが、何故地球で広まったんだろ。 グランガイズから地球への転生者か転移者が居たのだろうか? だが、そんな理由なら一言で済んでしまいそうなもんだよな。 まあ、話は聞いていて楽しいし、これから行く世界への理解を深めることは悪いことじゃない。

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