異世界vs地球

砂蛇幻夢

第1話 プロローグ 1

  ある日、世界中の人々の脳内に謎の声が響き渡る。

【これから地球に住む貴様らには、異世界と戦争をしてもらう。貴様らに選択権はない、時刻は明後日の19時。ちなみにだが理由は地球と異世界、どちらも私が管理しているが、どちらが有益、面白いのかわからないためだ。以上】

 そうして謎の声はなくなる。


「やっべえなこりゃ」

 俺、如月俊樹は静かにそうつぶやいた。 現在の時刻は午前9時を少し過ぎたところだ。指定の時間までは56時間しかない。 戦争が起こることの真偽は定かではないが、起きなければ問題なし。起こることを前提に動いたほうが得策だろう。


「まず、何をするべきか……」

 情報は……この短時間では実のある情報などあるはずもないな。 異世界と言っても様々だ。 一番最初に思い当たるのは『剣と魔法の世界』、あとは『未来的サイバーな世界』くらいだ。発想力が乏しいな。

 取り合えず、個人では何も戦争に協力できることは無さそうなので食料品などの必要物資を買いだめておこう。明日になれば少しは有益な情報も出てくるだろう。方策が決まれば早速行動だ。 のろまなやつから戦場では死んでいくと言うしな。

 俺は寝間着からいつもの革ジャンにジーンズに着替え、駐車場に行き車に乗り近所のスーパーやホームセンターがある場所へ向かうのだった。


 ショッピングモールに向かう道中、車内から外を見ると多少ざわついてはいるが混乱はおきていないようだ。 この長年平和になれきった日本で危機感を持つのは稀なことなのだろう。

 ショッピングモールの駐車場につき、まずはキャンプ用品売場に向かい大型リュックを買い、スーツケースも2つ買っておく。トレーダーで培った勘が準備を怠るなと告げている。簡易テントやカセットコンロから、救急治療セットや常備薬など長期災害避難時を想定した買い物をした。最後に缶詰やレトルト食品、乾麺など保存食を大量に買い込み駐車場でリュックに詰め込む。日常品はスーツケースにまとめてある。なんとかギリギリ入れきって帰途につく。


 自宅マンションの近くにある駐車場に車を止め、背中に大型リュックや丸めたテントを背負い、両手にスーツケース持った姿は通常なら異様にうつるかもしれない。 だが、買い物に時間をとられたせいで日も落ち辺りは薄暗くなってるおかげで目たたない。道向かいにあるマンションに向かい道路を渡ろうとした時に視界が真っ白に染まった。


「知らない天井だ……」

 取り合えず、お約束な台詞は言わねばならない。辺りを見回して見て分かったことは自分が白い四角な十畳くらいな部屋の中心に出かけたときの服装で仰向けに寝転がっていることだ。

 すると近くに急に光をまとった球状の物体が現れて、脳内に声が響いた。

【この忙しい時に転生条件を満たす奴が現れるとは。普通は特殊能力を与ええて転生させるんだが、今回は戦争の開始準備が忙しいのだ。そのでかい荷物と一緒に人間勢力のいずれかにそのまま転移させるぞ。】 そう言うと謎の光の球体が点滅を始める。


「ちょっと待ったあぁぁぁ~」

 俺は急いで立ち上がり、片手を前に突き出して声を張り上げた。

『おおっと、ここでまさかのちょっと待ったコールだっ』と脳内に声が響き点滅が止まった。


【私は忙しいのだが、少しの時間なら融通してやってもよい。地球時間で1時間くらいやるから用件を言え。】

 忙しいと言いながら1時間もくれるのか。時間の感覚がずれているのかもしれない。


【長いと思うか? まぁ、この空間は地球の1/10の時間の流れだから気にするな】

まるで思ったことをよんだような返答だが、顔に出てたのかな。


【いや、思ってることは分かるぞ。】

 思考が読めるのか、嘘は厳禁だな。取り合えずいくつかの質問をなげかけてみようと光る球体を直視する。ま、まぶしい。

【ん?まぶしいか?】

 そう言うと光る球体が人型に変形していき、やがて70代ほどの日本人っぽい男性に変化していく。


【こいつは前回、40年ほど前に発動条件を満たしてここに来た地球人よ。名前は確か‥‥ 善次郎と名乗っていたな。】

 こんな爺さんが転生したのか。人生やり直しできたのは良かったんじゃないか?


「いや、こいつは私と対面するなり罵声を浴びせかけたり、神を語る不届き者だとか、くどくどと講釈垂れたり生意気だったので、そのままグランガイズのアリライ神聖国の聖都の転移させてやったわっ。転移その日に教団騎士団に捕まり、3日後に処刑されよった。」

 いきなり爺さんっぽい声で返事がきたので驚いてしまった。この神様ちゃんと転生させてないんじゃないか?


「ん?ちゃんと転生させてるぞ。800年ほど前にこの発動条件を決めてからここに来たのはお主を含め6人いるが、2人は特殊能力を与えて転生させたぞ。」

 俺と南井さんを含めると成功率が33%じゃねぇ~か!残りの2人の成り行きが気になるが時間は有限だ。無礼のないように簡潔に質問をしてみよう。

 

 まず、最初に聞かねばならないことは……

「俺が転移される世界は地球と戦う世界なのか?」

 これは大事なことだ。ワンチャン、スローライフをすごせるかもしれない。


「いや、お主が行く世界は、グランガイズと言って地球と戦う世界じゃよ。わしが管理してることになってる世界は2つしかないからのぅ。」

  語り草もじじいっぽくなってきた神様はいつの間にか現れた椅子に座り、テーブルに両手をついてどこぞの司令官のようなポーズをとっていた。結局戦争する羽目になっちまうってことか。


「お主は戦いが始まる前に転移させるので地球側じゃなく、グランガイズの人間として戦ってもらうことになるじゃろう。」

え?俺、地球の敵になっちゃうの? いや、地球から先行偵察員として活動してもいいかもしれないな。


「それは無理じゃぞ。負けた側は滅亡か従属と大きなペナルティーが科せられるからのぅ。グランガイズが負けたらお主は死か地球の養分の如き働きをすることになるんじゃ。」

 養分のような働きってなんだよ。まぁ、聞いても碌なことはなさそうだ。次に聞きたいとこは‥‥


「グランガイズとはどのような世界なのですか?」

「一言で言うなら、お主が想像した剣と魔法の世界で合っとる。なぜ地球人の多くが思い描くような世界があるのか知りたいか?」

 神様はポーズを維持しながら尋ねてきた。これは有益な情報とは思えないが、時間もあることだし好奇心が煽られる。


「まずは2つの世界の成り立ちからになるが……

 神様は語り始めた。









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