第11話 誰が聞くかバアアアアカ!!!!

 


 結局あれからエドさんとアレクに押し切られともに行くことになった。


 結構強引についてこられたな。


 まあ過ぎたことを言っても仕方がないが。



 オレ達は暗くかげった森を進み、何度か野営をした。


 あと二、三日もすればカノン王国が見えてくるだろう。


「暗くなってきたらか野営の準備をしよう」


 今日もいつも通り野営の準備をしだすオレ達。


「お兄ちゃん、そっちの薪取ってくださいですよ!」

「お料理もうできますよヴォン様」

「ヴォン~! 明日の道順を確認しよぉ」


 三者三様な言葉を口にする女性たち。


 残念ながらオレには耳が二つしかないので一度には聞き取れない。


「被せないでくださいですよ、お姉ちゃんたち」

「一緒にしゃべらないでくださいませ」

「こっちのセリフ~」


 ついでに視線の小競り合いが始まる。


「皆、落ち着いて。一人ずつね」


 勘弁してくれよ。

 つかれてるのよオレは。


 薪をとってあげて、注がれたスープを受け取り、地図をみる。


 いつもこんな感じだ。


 ここ数日でもう慣れてしまったが。



「ははは、相変わらずですな。ヴォン殿」

「エドさん」


 森の奥からエドさんが新しい薪を抱えてやってくる。


 いや、笑っていないで助けろや。


 オレは内心悪態あくたいをついた。


 まあこの流れもいつものことなのだが。


「それで、今はどのあたりなんだっけ?」


「今はここだよぉ」


 アレクが指を指す場所はカノン王国から数キロと言ったところだ。


 何事もなければ本当にあと少しだ。


「だいぶ進んだみたいだけど、本当にアレク達は大丈夫なの?」

「たぶんねぇ」


 アレクは相変わらずぽやんとした口調でそう言うとスープをすすった。


 よくコケるアレクに若干の不安はあるが、大丈夫というのなら大丈夫なのだろう。


 オレも残っていたスープを飲み干した。

 野営で温かいものが食べられるのはありがたい。


 このスープはリューナさんの魔法によって作ることができた。


 オレ一人ではこうはいかない。


「ヴォン様、おかわりもありますよ」

「じゃあもらおうかな」


 リューナさんが微笑みながら手を差し出す。



 ちょうどその時、風を切る音がした。




 ――ヒュン、ガシャーン!!



「ああああああ!! スープがあああああ!!!!」


 オレは叫んだ。

 せっかくのごちそうがああああ!!!


 とっさに手を引っ込めたものの、見事に鍋がひっくり返された。


 矢が飛んできたのだ。


「何奴だ!!」


 すぐさまエドさんが咆え、女性三人も戦闘態勢に入る。

 そんな中オレは倒された鍋の前で号泣しながら地面を叩いていた。



 ちくしょう!! 許せねえ!!

 食べ物の恨みは恐ろしいんだからなあああ!!!


 ふらりと起き上がり闇を見れば、十数人の忍者のような恰好の人間が見て取れる。

 そのうちの一人、リーダーらしき人が声を上げた。


「我らは尊きカノン王の使者だ。そこの子供、お前が死神だな。他の奴に用はない。死神を差し出せば見逃してやろう」


 死神だと?

 なんだそれは。


 ……ああ、そういえばそんなあだ名もあったっけ。


 まあ今はどうでもいい。

 それよりも。


「――か」


 オレは小さく声をこぼす。

 それは次第に大きくなっていった。


「君達かああああ!! おのれっ食べ物の恨み受けてみよっ!!!」


 オレは叫びながら手を振り上げる。


 フォン、フォン


 独特な音を立てて薪や丸太、その他もろもろが浮く。


 神通力だ。


 ぜってぇに逃がさん。


 強い意志だった。


「思いしれえええええ!!!」


 カノン王の使者だという忍者たちの言葉を聞くことなく、オレはありったけのものを忍者たちにぶつけた。


 ――ガッ、ッゴ


「ちょ、まっ!!」


 ――ドシャ、ビシィ


「おいっ! 話をっ!」


 ――ゴンッ、ドゴォ



「うるせえええええ!! 誰が聞くかバアアアアカ!!!!」



 その攻撃は、忍者たちが気絶してしゃべらなくなるまで続いたのだった。


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