第2話 誰とも組むつもりはない
回想終了。
もうわかると思うが、その日からオレは今の様に冒険者たちに囲まれ始めたのだ。
目立たず騒がず地道にモンスターの死体を探そうというオレの目論見は早くも崩れ去った。
こうなってしまえば人の眼は常について回るし、死体など探しているスキが無い。
「すみません……オレは誰とも組むつもりはないんです」
何度も言うようだが、オレの戦闘スタイルを人に見せる訳にはいかない。
見せたら最後、人類の敵として追われるか、兵器として使われるかだ。
そんな平穏とは程遠い生活を歩む気はない。
国の抗争などに巻き込まれるのはまっぴらだ。
オレは風呂の完備された静かなところで生活を送るんだ。
そういう訳でオレは何度目か知れない断わり文句を入れた。
ちょうどその時ギルドの奥からリンダルさんに呼ばれたので奥の部屋へと向かった。
「すまないね。来てもらって」
「いいえ、むしろ助かりました」
素直な本心だった。
オレはこの三日で有名人の大変さを知った。
肩書きのある者は常にそれに見劣りしない実績を求められる。
今のオレに付けられた肩書きは「Dランクのモンスターを一人で倒せる実力者」といったところだ。
つまりパーティーに組み込めれば戦闘力のアップが見込める。
それ故の人気だった。
オレは普段は出入りできない奥の部屋へ通される。
振り返ればリンダルさんの顔は曇っていた。
なにか深刻な話でもあるのだろうか。
不安が過る。
またオレの知らないことで迷惑が掛かっているのではないだろうか。
必死に記憶を手繰ってみるが、残念ながら記憶にない。
そもそも、ビリーベアの件が終わってからは他の冒険者に追われていたために何もやっていない。
肝心の死体探し(仲間探し)も全くと言っていいほど進展していないのだ。
そんなオレの不安をよそに、ソファーに腰を掛けたリンダルさんはゆっくりと口を開いた。
「今日およびしたのは……実は折り入ってお願いしたいことがありまして」
「お願いしたいこと?」
説教ではないようで一安心する。
けれどお願いしたいこととは何だろうか。
オレは目線でリンダルさんに続きを促す。
「ええ、実は山の中腹にある小さな村との定期連絡が途絶えていまして……」
リンダルさんの話によると、ここイプケアはここいらでは一番大きな町で、周辺に点在する小さな村々をつなぐ役割を担っている町なのだという。
オレの故郷もその中に入っているらしい。
そして今回お願いしたことは、そのうちの一つの村からの定期連絡が一週間前から途絶えていることが関連しているそうだ。
「……つまり、何が起きているのかオレに調べてきてほしいってことですね?」
「ええ。あの辺りはモンスターも強いものが出ますから、下手な冒険者を派遣することができず……。それにあそこの村人たちは皆強く、大抵のモンスターは自分たちで退治できるのです。それなのに連絡が途絶えた……。これは何かあるに違いないと思いまして。ヴォン様ほどの実力があれば万が一のこともないと思いまして」
リンダルさんはなにかを言いたげな表情をしている。
恐らく彼の言う実力とは「
確かに父さんも母さんも、そしてホーンラビットもいるからよほど強いモンスターが出てこない限り大丈夫だと思う。
それに偵察ということならば人数は少数でいった方がいい。
その点でもオレは適任だろう。
「分かりました。見に行ってきます」
オレにとっては一人で行動できるまたとないチャンスだ。
それに、強いモンスターが出るというのならなおさら。
オレはゆっくりと頷いた。
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