第16話 エピローグ

はて、おかしいですね?


もうとっくに雨は止んでいるのに。雷が止みません。

うるさいぐらいに落ち続けています。校庭の方でしょうか?




「キャハハー、らくらーい!」

「キアラまじウケる!」

「いや、臭ぇよ!」

「いや、うるせぇし!」




なんと……


わずか七歳の女の子が……


あの時のイアレーヌさんの極大上級魔法『轟く雷鳴』をも上回る下級魔法『落雷』を撃っています。それもイアレーヌさんと違って溜めもなく、連続して……


「あーっ校長せんせーだー!」

「チィーっす!」

「いや、こんにちはだろ!」

「いや、さよーならだし!」


「こんにちは。今のはマーティンさんの『落雷』ですか?」


「はーい! そうです!」


「すごい威力でしたね。いつ覚えたのですか?」


「さっきでーす! シビルちゃんが空から落ちてくるアレを見て落雷って言ったからー! アレは神様の小言だって言ったから使ってみたくなりましたー!」


見様見真似で……


「そうなのですか? ミシャロンさん?」


「そーっす。キアラのやつ魔法を使いたいお年頃なんっすよねー。」


貴女も同じ七歳ですけどね。


「ではマーティンさん。最後の一回にしましょうか。騒音で周りから苦情が来てしまいますからね。」


「はーい! ごめんなさーい! じゃあ最後ー、らくらーい!」



校庭には大穴が開き、土が燃えるとでも表現すれば良いのか、焦げ臭いでは済まない異臭が漂っています。


「君達四人はこの大穴を直してから帰りなさいね。」


「はーい!」

「チーッす!」

「いや、キアラがやれよ!」

「いや、シビルもだろ!」




キアラ・ド・マーティンさん。

平民上がりの下級騎士、マーティン卿と結婚しイザベル・ド・マーティンとなったあの、本物のイザベルさんの二女です。

また『二女』ですか。

イザベルさんがおっしゃるには、魔力では、すでにご自身をも超えられているとか……

もう私のような年寄りが昔語りをする時代ではないのでしょう。

ドノバンは「死ぬまで青春だ」なんて言ってましたが……


「校長せんせーさよーならー!」

「チーッす! 終わったっすー!」

「いや、やったのはキアラだろ!」

「いや、シビルは見てただけだし!」


はは、土の魔法であっさりと修復終了。やはり私はもう引退ですかね。


「はい、さようなら。気を付けてお帰りなさい。」


「ねーねー、校長せんせー! 今度ベヒーモスの話を聞かせてー!」

「ウチも聞きたいっすー!」

「いや、キアラため口ぃー!」

「いや、俺も聞きたいし!」


なぜ……この子達がベヒーモスのことを?

あ、そうですか。マーティンさんのお兄さんから聞いたのですね。


「ええ、今度の社会科見学の時にでも、歩きながら話してあげますね。」


ふふ、我ながら単純なものですね。楽しくなってきました。

後から知ったのですが、あの時のベヒーモス、あれで幼生だったとは……魔境とは、恐ろしい所です。




あの子達が修復した校庭から新鮮な土の匂いが漂っています。夏の風、来年からはこの香りを思い出すのでしょうか。

死ぬまで青春、そして今は朱夏……ですか。










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最後までお読みいただきありがとうございました。

今作は『異世界金融 〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件 〜 #かくきん』の登場人物に焦点を当てた外伝として書きました。

ご興味が湧きましたら本編もご覧いだけると幸いです。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888771124


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異世界金融外伝 〜若き日の校長と謎の令嬢 朱夏の香りは青春の残り火〜 暮伊豆 @die-in-craze

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