君と一緒

LeeArgent

君と一緒

目が覚めた時、私は箱の中にいた。

透明な壁で覆われた箱。私はその中に座っていた。


背中側の壁を見る。そこに書いてあるのは、私と同じ姿と、ちょっと似ているけど別の姿。


彼は、私の隣に座っていた。


「やあ、目が覚めた?」


「ここはどこ?」


「ここは、ゲームセンターさ」


彼の話によると、ここはゲームセンターで、私達が入っている箱はクレーンゲームと呼ばれているらしいの。

外の世界からやってきた人達が、私達をお迎えするために、この箱を覗き込むんだって。


「私達は、一体何なの?」


「僕達はぬいぐるみ。あそこをごらん」


もう一度後ろを見る。そこに描かれているのは、私と彼の姿。

猫のカップルとして作られたぬいぐるみ。それが私達。


私達、色んな話をしたの。

外の世界はどんなだろう、私達をお迎えするお客様はどんな人だろうって。

彼はとても穏やかで、優しくて。私の中が、温かな気持ちで満ちていくのを感じたわ。


例えお迎えが来なくたっていい。彼と一緒にいられるなら、それだけで……


「わあ、可愛い!」


クレーンゲームの外から、女の人が覗いてきた。その隣には男の人。


「私、この男の子の猫が好きなんだ」


女の人は、彼を見てそう言った。


「取ってやろうか?」


「ほんと?」


ああ、だめよ。彼を連れていかないで。

鉄のアームは彼を掴み、空高くへ運んでいく。彼はアームに運ばれるまま、深い穴へと落とされた。


「ほら」


「ありがとう、可愛いー」


女の人はとても嬉しそうで。

私は悔しくて、羨ましくて……


「あの子、ひとりぼっちだね」


「あー……」


「私、あの子取ってみる」


「え?やめとけよ。ゲーム下手なんだろ」


「大丈夫!」


もう一度アームが動き出す。それは真っ直ぐ、私の元へ降りてきた。

きっとこれは、たった一度きりのチャンス。アームに掴まれた私は、落ちないようアームにしがみついた。


天高く運ばれ、やがて深い穴へ……


落ちる。


「やったー!取れた!」


「おお、すっげー」


かたりと音がして、光が差し込む。

外の世界で初めて見たものは、彼の優しい微笑みだった。


。・:+


十年経った今、私はとある夫婦の家にいる。

夫婦の結婚指輪と一緒に、可愛いキャビネットに座っているの。


そして、隣には彼がいる。


これからも、ずっと一緒よ。

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