僕の片思い、君に伝わりますように。

@himenoaki

僕の片思い、君に伝わりますように。

 「お前なんかいらねーよ」

 「視界に入んな」


 小学生の僕にそんな言葉を吐いた君は今、どこでなにをしていますか?

 クラスがずっと違った僕と君はほとんどしゃべること機会がありませんでした。

 だからちゃんと君としゃべることができたのは、初めて同じクラスになった6年生に上がってからでしたね。

 小学6年生のときシールを集めることが流行ったこと、覚えていますか?

 僕も最初はみんなについていくためにやり始め、だんだん楽しくなってみんなとも仲よくなれた気がしていました。

 そんな楽しい日々が続いてたあの日君は僕に、


 「俺もうこれ飽きたから全部やるよ」


 って言ったの覚えていますか?僕は忘れません。


 僕はすこし驚きながらも、

 

「いいの?いらないなら欲しい」


 といってもらいました。

 それから数日たったある日君は僕に、


「やっぱりあれ返してほしい」


 っと言ってきましたね。

 僕は君からもらったものは別にして保管していたのでそれを丸ごと渡しました。でもそれを受け取った君はなんて言ったでしょう。


「いや、足りない。お前が持ってるこれも俺があげたじゃん。返せよ」


 僕は驚きのあまり声が出ませんでした。だって、君からもらったものではないのだから。


「いや、これは僕のだよ。ちゃんと君からもらったのは返したよ」


 それだけ言って僕は涙をこらえながら走って帰った次の日、僕はまた笑顔で学校に行きました。昨日は何かの勘違いだったのだろうと。


「おはよう」


 元気よく挨拶をしたはずの僕の声はまるで窓から出入りする空気のように消えていきました。

 するといつも話してた君のお友達が僕にゆっくりと近づいて、


「お前、あいつのシール奪ったんだってな。最低だな」

「人のもの奪う、いや盗むなんて泥棒じゃん」


 止まりそうな僕の世界を必死に動かしながら僕は必死に言ったよ、クラス全員に聞こえるように。


「ちがう!ちゃんともらってたものは返したし君たちもこれは僕のって知ってるでしょ?」


 何回も見せたことある僕のシール入れを見せながら、涙をためながら必死に伝えたつもりです。

 でも君のお友達は、なんて言ったか覚えてる?


「いや、それあいつのじゃん。ちゃんと返せよ、泥棒」


 そう言って僕の手から無理やり奪うと君に僕のシールと入れ物ごと君に渡していましたね。

 小学生の頭では何が起きたのか正直わかりませんでした。

 僕は走ってトイレに行って泣きました。誰にも聞こえないように、どこにいるのか誰にも分らないように。

 それからというもの君と君のお友達、それに僕と同じ目にあいたくないクラスの人たちは僕をいないもの、いや何かのウイルスのように扱いましたね。

 無視は当たり前、視界に入ると、


「じゃま、泥棒」


 といってまだ泣くことしかできなかった僕を見て、


「泣き虫。お前、自分が悪いのになくとか最低だな」


 と周りのお友達と一緒に言いましたよね。

 でも、ある日僕は見たんですよ。

 君が僕から奪ったシールを君のお友達と分け合ってるところを。

 僕のシールが欲しかったんですよね。

 でもさすがに一人で盗んだら自分の身が危ない、だからお友達と分け合うことで僕を孤立させて悪者にするということだったんですよね。

 頭がわるかった僕は小学校を卒業してから気づきましたよ。


 小学校以来君の顔を実際には見たことはありませんが、毎日のように夢で君に会うことができてます。いや、夢でなくても毎晩かれこれ10年ほど君のことを思い出します。

 ちなみにこれを書いている今も夜なんですよ。また今夜も君のことを考えてますね。

 君のおかげで始まった無視や悪口のおかげで人としゃべるのが苦手になりました。

 でも、そのおかげで本当に好きな人とだけかかわりあえるようになったのは君のおかげかもしれません。

 人としゃべるのが怖くなったおかげで友達が少なかったので勉強に集中できいい大学にも入れ、アニメや漫画にも興味が出るようになりました。

 でもやっぱり、友達は片手で数えられるぐらいしかいません。ちょっと悲しいですね。

 君のおかげでたくさんのことを経験できました。

 だから今度は僕が君にお返しをする番です。

 君が手に入れた毎日を君がくれた黒く染まった僕の色で君を染めてあげます。

 感謝してくださいね?君のことを想っての行動なんですから。

 小学校で習いましたよね?受けた恩はちゃんと返しましょうって。頭が悪かった僕ですら覚えているんですから頭がよかった君は覚えていることでしょう。

 僕は優しいので君がたくさんのことを経験できるように何倍にも大きくして返してあげますね。

 消えたい夜も君を思い出すおかげでちゃんと今、生きることができています。

 生きていなければ君にまた会えませんからね。

 君にまた会えるのをすこし緊張するけど楽しみにしています。

 今夜もまた、君を想い続けてゆっくりと目を閉じます。

 それではそろそろ、おやすみなさい。

 

 


 


 

 




 

 

 

 

 

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