ガーン
今日学校に行ったら、彼氏が他の女子と仲良く喋ってた。
すっごく楽しそうだった。
ああん、このままじゃ取られちゃう。
放課後になっても、話しかけられないまま学校を出てしまった。
寒くてスカートの中が死にそう。
やっぱりタイツ履いたほうがいいかな。
生足流行っているから、履きたくないけど。
結局、今月入ったお小遣いで、ベージュ色のバレにくいストッキングを買ってしまった。
デパートのトイレで履いてから外に出ると、なかなかどうして。いい感じだ。
「くぅ。でもこの強風じゃやっぱり寒い」
スカートを抑えていると、昨日入ったぬいぐるみ喫茶が目に入った。
友達なんていないのに、あんなこと言っちゃったけど入ろうかな。
まだお金は……。よし安いの一個くらいなら。
店に入ると、ピンポンピンポンと音が鳴り響いた。
それに気がついた店員さんが、声をかけてくれた。
「いらっしゃいませ」
昨日の柚木さんじゃない。
そりゃそうか。たった一人でお店が回るわけがないもの。
カウンター席に座ると、ポニーテールの店員さんに聞いた。
「あの、今日は柚木さんは」
「ああ、店長ですか? 今日はシフト入っていませんよ。何かありましたか?」
「い、いえ」
店長さんだったの!?
どおりで、あんな高いジュースを奢ってくれたわけだ。
それにしても、と私は周りを見渡してみた。
お客が誰も来ていない。
それに気がついたのか、店員さんが話しかけてきた。
「暇でしょ、うち」
「あ、あの。その」
「ごめんなさい、お客様にいう言い方じゃなかったですね。うちね、開店当初はけっこう忙しかったんだけどね。だんだん、人が減っちゃって」
「どうして? こんなに可愛い店なのに」
「お客様、ひとつお尋ねしたいんですけど。いいですか」
「はい」
とっても気さくな店員さんだな。
なんだか学校の先輩みたいだ。中学の時のだけどね。
店員さんの質問は、なんだか予想していたようなものだった。
「ここに彼氏とか男友達、連れて行きたいと思います?」
「ああ、それは、ちょっと」
「そう。そこなんですよ。風変わりな店もいいし、女性をターゲットてのもいいのだけど。結局、女子会も流行らなくなって、ここにくるお客様めっきり減ってね。やっぱり、例の流行病がトドメだったかな」
「そうなんですか」
時代の移り変わりは激しいとはよく聞くけれど、女子会の話なんてあんまり聞かないかな。
ボッチだからってのもあるか。
ちょっと苦笑いをしていると、店員さんは話を続けた。
「新規に立ち上がったカフェとか、大手カフェがここに参入してきてね。うちも苦しくて。ああ、お客様に行っちゃ駄目な話題でしたね。ごめんなさいね」
「もしかして、潰れちゃうんですか?」
あたしは不安になって思わず聞いてしまった。
店員さんは、私が指で注文したケーキを見て、かしこまりました、と言ってから、話を戻した。
「店長は心配しないでって言っているけれど、年度末越えれるかどうか……」
「あの!」
「はい? ごめんなさい、私すぐ余計なこと言っちゃって」
「あたし、彼氏います。今度連れてきます!」
「え? それは、ありがたいですけど。男の子にはこの店の雰囲気は、きついかもしれませんよ」
「それでも、連れてきますから!」
あたしなんであんなこと言っちゃったんだろ。
まだ彼氏とケンカしているのに……。
そうだ! あれよ。
ケーキを一気に頬張って家に帰ったあたしは、自分の部屋にあったとっておきのアイテムをカバンに詰め込んだ。
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