第21話 漆黒の町②

「フツロ?どうしたの?」


「あ、悪い。」


その言葉の真意は分からないが、フツロの顔は笑っていた。


「とりあえずあの部族を確認したいです。レアト君の魔法でできますか???」


「了解。」

視界を操るものウリンスパエンテル


レアトが透明になる。


「さすがですね。全くもって透明です。」


「じゃあ行ってくるよ。」


***


透明と言っても歩く音やその足跡は残る。なのでレアトは慎重に恐竜が倒された場所に近づいていった。

レアトが目にした光景は今の時代からは想像できないもので、恐竜を倒したと思われる部族が恐竜の肉をそのまま貪り食っていた。

巨大な恐竜だったので喜んでいる姿が目に映る。おそらく部族全員分の食糧が余裕で足りるほどのデカさなので、そこには部族のほとんどがいただろう。


(この人数なら近づいてもバレなさそうだ。頑張って近づくか。)


レアトはさらに近づいていく。


〜スカルとフツロ〜


「で、フツロさん。どうしたんですか。彼がいなくなったから言えるでしょう?」


「まぁ言えんことはないが、、、」


ボソボソ


「そーゆーことですか。では今回なんとかなりそうですね。」


「あーおそらくな。」


〜レアト〜


(近づいたはいいけどちっか!)


レアトはあまりにもバレないという自信が湧き出て今1メートル前に部族たちがいる状態になってしまった。


「おー!!!」


部族たちは宴を始めている。

謎の踊りを踊る女性たちにそれを周りから見て叫ぶ男たち。まさしく部族の宴だ。その部族たちの肌の色が緑色であるという情報もだが、レアトはその一つ一つの情報を記憶した。

部族以外にも死んでいる恐竜から情報を集める。幸いお腹がいっぱいになったのか恐竜の周りには誰もいない。


(この恐竜あまりにも色がおかしくないか?)


その恐竜の色はまさしくブルーカラーミーの色と同じ青色だった。

レアトは嫌な予感がしたのでここで情報収集をやめてフツロたちの所に戻った。



***


スッーー

レアトの透明化が切れる。


「おう、戻ったか。」


「どうでした。」


「部族の肌の色は緑色でした。ただ恐竜の肌がブルーカラーミーと同じ青でした。」


「緑??黄色ではなく?」


「緑でした。」


「黄色だったら何かわかったのか?」


「えぇ。黄色の肌が特徴の部族が遥か昔存在してました。名はイェスト族。その部族の特徴は肌が黄色というほかに雑食という特徴があります。」


「雑食になんの特徴が?」


「雑食というよりかはこの部族にはカニバリズムの文化もあり、飢餓状態になると仲間も食べます。他にもどんな種類の肉も。おそらく恐竜も。ただ緑色の部族は知りません。」


「でも昔にいたんでしょ?」


「昔にいたのは恐竜も同じだ。まぁそのイェスト族ってことでいいんじゃないか?同じ人間だ、魔法の使える俺らの方が条件はいい。そのことより恐竜だ。」


「ブルーカラーミーと同じ青、ですね。」


「暗くて分からなかったけど、おそらく同じ青。そんでもってカラーミーと同じ気配を感じた。」


「それは恐竜だけか?」


「いや部族にも僅かながら。」


「決まりだな。カイードが最低でも関わっている。」


「ですね。」


「目指すはあの塔ってわけか。」


〜〜〜

「来たか。」


***


レアト達は塔に向かって進み出しているが違和感を感じていた。


「レアト、お前がみた部族は何人ぐらいだった。」


「結構な量はいた気がする。」


「そうか。今遭遇してもおかしくないくらい?」


「、、確かに遭遇しませんね。」


「罠ですか。」


「ただ、進むしか選択肢はないからな。」


ガサッ


物音が3人の近くで鳴った。3人以外の何者かが出したその音に3人は立ち止まる。


「なんですか。今の音。」


「まぁ落ち着け。」


フツロはレアトの未来を見ることで謎の音の正体を探す。

レアトが何かに飛ばされる未来が見える。


「レアト飛べ!!」


バッ!


レアトは即座に上に飛ぶ。

レアトが直前にいた場所にいたのは小さな恐竜だった。


「キキィ?」


レアトが落ちてくる勢いを利用して恐竜に渾身の踵落としを決める。


ドン!


恐竜が気絶する。


「ふっー、危なかった。」


「敵は部族だけではないってことか。」


「そうですね。」


レアトの蹴りの音に反応して周りには先ほど倒した恐竜の仲間がうじゃうじゃ集まっていた。


「面倒な量だな。レアトどうにかできるか?」


「どうにかはできそうですね。倒さなくていいなら。」


「動けなくなるならいい。」


「了解。じゃあ3人で固まってください。」


フツロとスカルはレアトのそばに集まる。


「俺が魔法を使っているときはこの場から動かないでください。」


「分かった。」


「了解です。」


硬化を操るものリヴァイアテクト 」


レアトら3人のいる中心以外の地面が柔らかくなり底なし沼のようになる。

周りにいた恐竜はそこにどんどん沈んでいく。


「そろそろか。」


そういうと地面は元の硬さに戻った。

周りにいた恐竜は地面に埋もれている。


「もう大丈夫です。いきましょう。」


「チートだな。」


ドォン!


大きな音が響く。

3人は音のした方を見て驚愕する。

音の正体先ほど部族たちが倒し、食したはずの恐竜アンフィコエリアスだった。

喰われた部分の肉はもちろんなく、空洞になっている。生きられるはずがないその生物が動いているということに3人が出した結論は。


「ゾンビってことか。」


「ゾンビですね。」


「ゾンビなんているんですね。」


実際のところこの世界にはアンデット族という種族が存在する。老衰以外では死なずどんな傷も癒してしまうという力を持ち彼らはこの世界のどこにいるかは分からないとされている。

なのでゾンビがいてもなんら不思議はことではない。


「しかし恐竜のゾンビか。」


「手強いですね。」


「レアト、ゾンビの倒し方は習ったか?」


「いいえ、まだですね。」


「ゾンビが出た時今回は恐竜だが、基本的には人間のことが多い。あいつらを倒すためには脳を破壊することだ。しかし、ゾンビにも本能があるんだろう。頭への攻撃は基本全力で守ってくる。そうなると破壊することができないから、まず動けない状態まで追い込み脳を破壊するのが基本だ。1人では出来ないが、2人以上なら可能。俺とレアトで動きを止めて脳を破壊する。スカルは周りに部族が来ないか見ておいてくれ確実に奴らは敵だから来た時に三つ巴になるのは避けたい。」


「了解」


「分かった。」


「行くぞ。」


シュン


フツロとレアトは恐竜に攻撃を開始する。

フツロはその魔法の特性上体術を極める必要があった。魔法を使用したとしてもそれについてくる身体ができていないと、対応ができないことが多いからだ。体術だけで見た時フツロの右が出るものは、一人を除いていない。

フツロはその人物に体術を鍛えられているため、カラーミーほどの大きさまでは対処できるが巨大すぎるこのアンフィコエリアスまでは、1人では対処できないと理解している。

フツロの強さは切り替えの速さ。無理だと思う時はすぐに切り替え別の案を考える。

今回フツロはレアトの魔法の応用性を知っているため、2人でどうにかできると考えた。

さらに、フツロには試したいこともあった。


「レアト、奴の動きは俺に止めさせてくれないか。」


「分かった。」


「おそらくさっきお前が使ったリヴァイアテクトを使ったら数秒は止まれるが俺が脳を破壊できない。そんな気がする。俺が動きを止めてお前が破壊してくれ。」


「でも奴の動きを止めるのに時間が。」


「いいやおそらくそう時間はかからないはずだ。ここで待っててくれ。機会が来たら分かるはずだ。」


「了解。」


レアトは民家の屋根の上で見守ることにした。

フツロへの期待と不安を込めながらその景色を見守る。



***


ドゴォン!


何が起きたのか分からなかったレアトだったが、一つの事実だけ理解することができた。

恐竜がなんらかの理由で倒れ込みその倒れた身体は綺麗にレアトの方向に行き、頭の部分がレアトの目の前にある。あとはこの目の前にある頭の中の脳を破壊するだけだ。

しかし、レアトはその状況の整理に落ち着いていない。


「レアト早く!」


ハッ

正気に戻るレアト。しかし、遅かった。

アンフィコエリアスが身体を持ち上げる。

なぜフツロは倒すことができたのか分からないが今考えている余裕はレアトには無かった。

次のことを考えた時。


バチュ


恐竜の頭が綺麗に弾け飛び脳みそが破壊されたのだ。力が抜けたかのようにその巨大な個体な倒れていく。


「援護できるときはしないとね。」


その謎の攻撃の正体は、サルバーニェ王国国王兼ディーキェ組織リーダーのプーリヤ サルバーニェだった。

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