第22話 漆黒の町③
倒れていくその巨大な身体。その音が王国に響き渡る。
ドォーン!
「おい!レアト大丈夫か!」
「は、はい。なんとか。」
「とりあえずこいつを倒せてよかった。」
「いや、でも倒したの僕じゃないです。」
「え、じゃあだれが。」
「私だ!聞こえるか!?」
「え??」
周りを見渡すがプーリヤの姿はない。
「頭に直接話してるのさ!私が援護したって言っとかないと不安だろ??」
「そうだったんですか!ありがとうございます!」
「援護って、、どうやって、」
「私の魔法に関わること、とだけ言っておこう!じゃあ頑張ってくれよ。」
「了解です!」
プーリヤの援護のおかげで事態は大きくならずに済んだ。
しかし、本来の目的はイェスト族だと言うことを忘れてはいけない。
なぜ昔に滅んだとされるイェスト族がいるのか。
***
「とりあえずここはもう大丈夫だろうから行こう。」
「イェスト族ですよね。行きましょう。」
レアトは今回の任務が始まる時からフツロに違和感を抱いていた。初めて会った時とは違う何かにレアトは気づいていた。
「フツロさん、最近影薄いなってことありますか?」
「ん?言われてみると確かにないな。」
フツロは今成長している途中。才能が開花している最中。その過程でフツロの影が薄いという特徴は無くなっていたのに自身は気づいていなかった。
「変わったことといえばまぁこの俺の持ってる剣かな。前より大きくなっている気がする。」
フツロの魔法が未来視ということもあり体術を極めたフツロは剣も常備している。
この世界では剣などの武器の中に才器と呼ばれる何か能力を持った武器が存在する。
レアトがミハエルアルマで出す武器の中にも才器が紛れていることがある。才器にはレベルがあり最高クラスのペカードクラスは世界に5つしかなく、その所在を知るものは少ないとされている。
「この才器は父にもらったものだからこれがどのクラスに当たるか俺自身も知らないし、あんまり使う機会がない。あまり任務に行かないからな。」
「クラスって最高クラスは世界に5つだけしかないんですよね。」
「5つしかなく、それぞれに名前がある。普通の才器にも名前はあるがな。その5つの中で2つ、フェリシダットが所有しているらしい。」
2人が才器について話している所にスカルが現れた。
「2人ともお疲れ様です。」
「なんでここに?」
「1人で待っている時にイェスト族と思われる部族が近くに来たのが分かったので逃げてきました。」
「で、見たんだろ?どうだった。」
「あれはイェスト族昔滅んだ部族です。」
「確定か。やっぱりこの国はどうかしてるってことか。幸いもう目的地にはついた。」
3人は向かっていた王宮にいつの間にかついていた。
「行くか。」
「ですね。」
サルバーニェの王宮とほぼ同じの扉を開けて3人は中に侵入していく。
ガタン!
ブチッ
扉が閉まる音と同時に何か糸が切れるような音がしたが、3人はそれに気が付かない。
***
身代わりと情報伝達の役割があるスカルを先頭に3人は進んでいく。
「思ったんですけど、なんで扉の音とか恐竜が暴れてたのに何も騒いでないんですかね。」
「罠だろうな。」
「罠??」
「こんなにもわざとらしく誘っているのは罠です。しかし私たちはこれに乗るしかありません。」
「そういうことだ。罠にかかったフリをする。昔の部族だから頭は馬鹿だろうしな。」
3人は王宮の1番広い部屋に着いた。
「この部屋何か嫌な予感がする。」
「嫌な気しかしない。」
フツロは保険のためにレアトを未来視で見ることにした。
見た未来はレアトの頭が吹き飛ぶ未来。
「‼︎‼︎しゃがめ!!‼︎」
バッ!
即座に反応するレアトとスカル。
レアトの頭上を斧のようなものが通過する。
カランッ
バン
斧が地面につくと同時に灯りが3人を照らす。
数時間ぶりの光に3人は目を開けられずに見た。
「うわっ光!眩しっ!」
「気をつけろ!」
3人は身を寄せあいお互いにお互いを守る体制を取る。しかし、一切攻撃は来ない。徐々に3人の目が光に慣れていく。
ゆっくりと目を開けるレアト。
先に目を開けていたフツロ。
2人に遅れて目を開けたスカル。
3人は今現在置かれている状況を理解する。
広い部屋の上には下を見下ろすことができるデッキのようなものがありそこから大量のイェスト族が3人を見下ろしていた。
「ウォー!!!」
ドンドンドンドンドドンドドン
雄叫びと同時にどこからか太鼓のような音がする。
部族たちは3人を敵と認識しており、最初にレアトを襲ったのは相手の力量も見るためにしたイェスト族の本能だった。
「わざと罠にかかったのは良いですが、相手が多すぎますね。」
「部族全員集結ってか?調子に乗りやがって。スカル!お前戦う術は?!」
「簡単な体術と剣を少々。しかし剣がありません。」
「レアト!」
「はいっ!」
バッ!
掌を下に向ける。
(レアト)
「
魔法を使用する時、個人で差があるがルーティンをして魔法を発動する者がいる。必ずやる者もいれば、時々やる者もおりやらない者もいる。
ルーティンをやるメリットとしては基本的には魔法の上昇。ステータスのアップが期待され、魔法が使えるものは癖でルーティンがついているものがいる。デメリットとしてあげられるのが数秒の時間が必要ということ。一瞬が命取りの戦場では、この数秒が必要なのでルーティンをしない者も出てくる。
1番多いのが間のやる時とやらない時がある者。今回のレアトがその例。
毎回やる者とやらない者のメリットデメリットを考え、臨機応変にするということ。
今回レアトは数秒を犠牲にし魔法の性能を上げた。
性能が上がると、出てくる武器の中に才器がある可能性が上昇するからだ。
ボウ
下から出てくる武器たちレアトは咄嗟に一つの刀を手に取りスカルに投げ渡す。
「剣ではなく刀ですが、才器です!」
バシッ
「ありがとうございます!」
「ヴォー!!」
刀を渡すと同時に上から大量のイェスト族が飛び降りてくる。
「生き残れよ!お前ら!」
「了解!」
***
飛びかかってくるイェスト族はそれぞれ異なる武器を持っており、3人はそれぞれの武器に対応しなければならないので苦戦していた。
(なんて量だ。圧倒的に数で負けてる。この才器を出せてなかったら終わった。)
レアトが出した才器。
才器アルピナファーストクラス。炎龍。
炎龍は切り刻むと同時に、周りに伝達する炎を相手に付与することができる刀。これを使用し、1人切り刻むとそこから炎が広がるのでレアトは体力を制御できていた。
そして、スカルに渡した才器。
才器アルピナサードクラス。天刀(あめのかたな)
才器アルピナクラスは、さらにその中でファースト、セカンド、サードのレベルがある。
レベルが上がるごとに周りへの影響力が強くなる。
才器アルピナサードクラス。天刀は、周りの性質を変える能力を持つ。スカルはこの能力を駆使し、スカルの周りの空気をイェスト族には毒、自分自身には無毒化にすることでイェスト族を近づけさせないという戦法をとっていた。
そして、スカルに攻撃できないと見るや否やいレアトに標準を変え、炎龍の炎に燃やされるという連鎖が起きている。
しかし、問題はフツロだ。
彼自身何度も言うが、戦闘向きの魔法ではないためかなり体力を消耗している。
(俺が1番きつい感じか。くそっ。)
フツロは何かしら自分の魔法の成長の種を掴んだが、この戦況の中使えずにいた。倒しても倒しても敵が襲ってくる。幸いなのは、イェスト族の死体のおかげでイェスト族たちも戦いづらそうにしていることだ。そして、未来を見ることで対策を打てる。フツロはギリギリのところで耐えていた。
「おいおいイェスト族さんよー。こんなものか?」
(耐えてはいるが、スカルとレアトに攻撃できないと見たイェスト族がどんどんこっちに流れてきやがる。きついにもほどがあるぞこれ。くそっどうしたら。)
「自分の力を信じろ。」
どこからともなく聞こえてくる声。フツロは声の主を探すが、ここにはイェスト族と3人しか姿はない。そしてこの声に気づいたのはフツロのみである。
「は?誰だよ。力を信じろ?そんなのやってる。」
「落ち着けフツロ。お前はまだ自分の真の力を使ってないだろう?」
「、、、」
フツロは自分で見つけた新たなる力を使用せずにいる。それはまだ確証がないから。このギリギリの戦況で使えるのか。どれくらいの時間使えるのか。
謎の声に唆されフツロは決意した。
「誰か分からねーがやってやるよ!」
キィーン
フツロの目の色が変わっていく。
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