第20話 漆黒の町
「レアト〜起きろ〜。朝だぞ〜。」
「ふぁーい、、、」
眠い目を擦りながら体を起こす。
今から漆黒の町に行くというのに体は正直にまだ寝たがっている。
オスカル帝国から1番近い支部とは言えまだ距離はある。
早めに出発しないと行けないし、テクトさん達にも申し訳ない。
「さっさと準備しろ〜。」
2人はすぐに準備に取り掛かかった。
コンコン
2人がいる部屋に誰かがノックする。
「はい!」
ドアを開けるとテクトが立っていた。
「テクトだ。おはよう。」
昨日の本来の姿ではなく最初に見た中性的なテクトさんだった。
「あ、おはようございます。その姿なんですね。」
「基本的には俺はこの姿でいる。みんな弱いと勘違いしてくれるからな。」
昨日寝る前にテクトさんに聞いたが、他にも変身する時があるらしい。潜入活動する時に便利だから何個かストックがあるとかないとか。
他にどんな姿があるのか気になるところではある。
「フツロはどうした?」
「今シャワーしてます。」
2人に与えられた部屋は客人を泊まらせるようの部屋で全てが揃っており、元の世界のスイートルームのような部屋だった。
ここまで快適な部屋は初めてで昨日の夜レアトは、フツロに興奮しすぎと注意を受けるくらいに興奮していた。
実際旅行しに来たわけではなく、命の危険もある可能性がある任務なので気を引き締めていかないと行けない。
「あ、おはようございます。」
シャワー終わりのフツロが朝の挨拶をする。
「おう、おはよう。気合い入れてくために渾身の朝飯作ってあるから食ってから行けよ。」
「ありがとうございます。」
「あざっす。」
2人は入念に準備をし、渾身の朝飯を食らい出発する。
「帰ってくる時はここ寄れよ。」
「はい。」
「では行きましょう。」
(生きて帰ってこいよ。)
***
行きとは違い運転はスカルに任せて2人は作戦を立てていた。
「オスカルに着いたらまず目を慣れさせる。暗さに目が慣れてから中に入っていく。」
「了解。」
「ある程度は未来視で先読みできる。けどもし戦うことになった時に置いておきたい。自分の身は自分で守ると言うことを優先しろ。もし俺が危なくなったら逃げろ。中の情報を知っている奴が2人とも死ぬのは避けたい。」
「はい。」
「もしヤバそうだったら3人で逃げるからその判断は任せてくれ。」
「おそらくもう到着です。」
「分かった。」
「でも少しおかしいです。僕の知っている景色とは違う。」
出発してから1時間ほどで着くらしいがそれらしきモノがなく、スカルが知っている景色とも違うらしい。
「そうか。とりあえずゆっくり向かってくれ。」
「了解。」
ブゥン!
「え???」
キキィー!
ブレーキをかけ車を止める。
外の景色が明るい景色から急に漆黒の景色へと変わっている。
その変わりように3人は驚いてしまったが、フツロが先に正気に戻った。
「入ったな。おそらく雲が幻覚を見せていたのだろう。」
冷静にその状況を解析し言語化する。頭で考えてこその未来視の魔法だからできる芸当だ。
「少し戻って明るいところに車を停めよう。」
車を明るいところに戻し、3人はそこから歩いて漆黒の町に向かう。
ブゥン!
3人が漆黒に足を入れる。
相当は暗さだ。目を慣れさせないとやはり何も見えない。
「目が慣れるまでここで待とう。離れるなよ。」
「了解。」
3人は目が慣れるまでの約30分その場で待機した。
五感の中で1番の情報源である視覚がない状態での30分。いつ何が襲ってくるかも分からないこの状況で3人は冷静に時間が経つのも待った。
暗闇に慣れた目に魔力を込め3人は明るい時と同じ視覚を手に入れる。
その目で見る漆黒の町オスカル帝国の全貌。
大きい国なのか町のように小さい国なのか全く分からなかった2人はその視界を疑うしかなかった。
その視界には、昨日見た景色とほぼ同じのそれが広がっており明らかにサルバーニェ王宮と同じ建物が存在していた。
「スカル。これはどう言うことだ。なぜサルバーニェ王国と似ている。」
「オスカル帝国。まだその国に光があった時、サルバーニェ王国とオスカル帝国は姉妹国の関係だった。この関係を知る人は国民のみで他の国の人は知らない情報です。」
「だから似ていると?」
「はい。そしてサルバーニェ王国が純白の町、オスカル帝国が漆黒の町とそれぞれ名乗り陰と陽の関係でした。ですが、次第に関係は崩れていきプーリヤ様が国王になった時期に国同士が連絡を取らなくなり、オスカル帝国は他国との関係を全て遮断しました。そして最近本当に漆黒の町になったと言うわけです。」
「謎が深いな。漆黒の町と勝手に名乗っていたのが本当にそうなってしまったと。」
「それは気味が悪いですね。」
「とりあえずあの王宮に向かうか。何かいるかもしれないから足音はできるだけ立てずに。」
***
レアトら3人は暗闇の中できるだけ静かに王宮を目指していた。暗闇に慣れたとはいえ見える距離は明るい場所とは断然に違う。
「暗闇にしては人が住んでいる形跡があります。もしかしたらこの環境でも人がいるかもしれないです。」
「この環境で住んでるってことはもうそれは人じゃないかもな、」
3人は人であってくれと願いながら何か住んでいると思われる場所を調べることにした。
「フツロさん、この建物多分さっきまで何かいました。」
暗闇の中の捜索というのもあって3人で一つの建物を調べることになった。その建物にはつい先ほどまで人か何かが生活した形跡が残っていた。
「レアト、スカル。おそらくここに住んでたのは人だ。だが、敵の可能性がある。気をつけろ。」
ドガーン!
外から建物が壊される音が聞こえてくる。
3人はこの漆黒の町に人のようなものしかいないと思った時に新たな何かが現れた。
3人は建物の中から外を確認する。その6つの目に映ったものは、この時代にいるはずのない巨大な恐竜だった。
「あれって、恐竜ですよね?」
「あれはアンフィコエリアス。巨大すぎる恐竜です。」
「まぁ今この時代にいるのはおかしいな。あれもどう倒すかだな。」
「倒すんですか?!」
「あんなのがいたら邪魔で本命に集中できないだろう。」
「いや、その必要は無さそうです。」
「え?」
3人がアンフィコエリアスに目を向けるとその巨大な恐竜は何かと戦っているような暴れ方をしていた。
「建物を壊したのは暴れていたからなんでしょうね。」
「一体何と戦ってるんだ。」
「俺が見る。」
フツロは自分の魔法未来視をアンフィコエリアスに使用した。
戦っていた相手の正体は原始人のような格好をしていた猿人だった。
「昔の人間。猿人だな。」
「猿人?原始人ってことですか?」
「おかしな町になりましたね。原始人と恐竜がいる町。謎しかないですね。猿人の特徴とか分かりますか?」
「暗闇でよくわからないが、肌の色が違う気がする。」
「肌の色が違う。心当たりがある種族です。おそらく恐竜は倒されるでしょう?」
「俺が見た未来ではな。」
フツロは自分の魔法に自信を無くしていた。今までのフツロだったら言わないような確定かどうかわからないという表現。
(果たして俺が見た未来と同じになるのか。)
フツロは自分が見た未来を信じれずにいる。
フツロはそれが原因で自分で何か妄想するような癖がついていた。
ドーン!
「倒されましたね。」
「ですね。」
レアトはフツロが無反応だったのが気になりフツロに目をやる。
レアトが見たフツロの目は何か覚醒したような暗闇の中では分かりづらいでも確かに興奮している様子だった。
「ガチかよ。」
フツロが右手で自分の顔を掴み言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます