第6話 発現
「いきなり馬鹿とか言ったらだめでしょうが、
フツロは影が薄いんだから分からなくて当然だと思うよ!」
「エボさんが言わないからこうなるんでしょう?」
いきなり話しかけられても困る。急に現れたと思ったら影が薄くて俺が気づかなかっただけ??
そんなに影が薄い人なんて見た事ないし、自分で言うのも恥ずかしいがとても自分に似ている。違う部分といえば目の色と口調ぐらいだろうか。
「ほんとに俺と似てるのな。確かレアトだっけ?多分俺の方が年上だから敬語な。」
「は、はい、分かりました。名前はなんて言うんですか?」
「あ?!馴れ馴れしいな!フツロだよ!エボさんが言ってただろさっき!話聞けよ!」
「フツロ、口悪すぎるよ。影が薄いからって口調だけ強くしないの!」
(この人絶対馬鹿にしてる、、)
「エボさんほんとにうざい!もうとりあえずボコボコにするから!いくぞ?!」
「え、待っ、、」
ボカン!!!
思いっきりフツロの持ってた剣の鞘で吹っ飛ばされた。
なぜか痛みはそこまでない。
「いきなりすぎでしょ、でも痛みが、、?」
「それはなぁーレアト!一昨日の時に魔力の暴走を制御できたからだ!自然と体が魔力を操作しているから痛みは極端に減る!まあ魔力が減れば痛みは出てくるけどな!」
「な、なるほど。」
一昨日の訓練のおかげでここまで痛みが減るとは知らなかった。
しかし、ここからフツロの攻撃が続く。
絶え間なく続く攻撃。まだフツロは剣を鞘から抜いていない。ただただ鞘で殴り手で殴り足で蹴りを繰り返す。15分ぐらいは続いただろう。
しかし、痛みはまだない。魔力が使えてないから減ることもないし、まだ耐えれる気がする。攻撃を止める手はなくフツロはイラついてきたのだろうか。
口でも攻撃してきた。
「おいおい!弱すぎだろ!攻撃もしてこないし!避ける事もしない!こんなのただのサンドバッグだな!」
さすがにこれには俺もイラついた。
「うっせーよ!」
思いっきり殴りかかったが、華麗に避けられ反撃を喰らった。
「分かったよ、じゃあ攻撃しねぇからお前から来い!」
挑発するように手首をクイックイッと曲げながらにやけている。
「レアト!一応身体能力も上がってるからな!」
エボさんのアドバイスなんて耳に届かない。
生まれてここまでイラついたのは初めてだ。
今まで影でインキャ生活をしてきたからこんなに人を殴りたいと思ったのも初めてだ。
「調子に乗るなー!!」
今出せる100%でフツロに殴りかかった。自分でも驚いたが、身体能力が上がっているせいかあの漫画のサイタマぐらいの強さがこの時はあったと思う。当たる!と思ったがこれもまた避けるフツロ。
「おせぇー」
ドン!!
フツロの全力の蹴りが俺の体に刻まれた。
なぜ当たらないのかと疑問になりながら起き上がる。まだまだ痛みは出なさそうだ。
「ヒントやるよ!俺の魔法についてだ!俺の魔法は未来視の魔法。まぁ単純に未来が見えるってだけの単純な魔法だ。使う魔力の量で何秒先の未来を見るか変えられる。簡単に言うと今のお前に勝ち目はない。」
チートすぎるだろと思いながらもそれよりもイラつきの方が遥かに多い。そんな勝てるとかどうでも良かったのだ。
「今はただ一発殴りたい。」
「なら殴ってみろよ。」
「おいおいレアトってここまで豹変するのかよ。」
挑発するフツロ。
レアトの豹変に驚きを隠せないエボ。
2人の戦いという名の大喧嘩はヒートアップしていく。
***
先手を取ったのはフツロ。攻撃をしないと言ったのをもうすでに忘れて自分から攻撃しにいく。右のストレート一本。格闘技とかは特に習ってないレアトは防ぎ方など知らない。綺麗に攻撃を喰らう。やられたらやり返す方式でレアトもフツロに殴りかかる。しかし未来視があるフツロにとってそれは知っている事象に過ぎない。華麗に避けてレアトに挑発する。
「だから!見えてるって言ってんだろうが!やっぱ馬鹿だったな!もういいわ、本気でやってやるよ。」
「おいフツロ!ほどほどにしろよ!」
「分かってるよ、エボさん。俺の力見せるだけだから。」
すると、レアトの視界からフツロが消えた。
気がつくと右側に体が飛んでいた。影が薄い事と魔力による身体能力上昇を利用してレアトの左側にフツロが回り込んで思いっきり蹴ったのだ。
状況を理解できないレアトだが、フツロは容赦しない。見えないフツロに攻撃されるレアト。
少しずつ痛みも出てき限界が近い。
レアトは飛ばされた体をすぐに起こし部屋の角のところに身を構える。ここでなら視界の中からしかフツロは飛んでこない。
頭を使って起こしたレアトの行動は完璧そのものだった。
「そんなので攻略したと思うなよレアト!」
「影は薄くても音はちゃんとするんだね。タイミングがとりやすいよ!さっさと来い!」
レアトが見えないフツロに対し挑発する。
その直後レアトの視界にフツロが現れた。
「おらぁ!」
フツロの渾身の右ストレートをレアトは綺麗に止めた。
「フツロ君はイラついたら右のストレートしか打たないよね。」
レアトはフツロの癖を見抜き見事に攻撃を止めた。
「止めても無駄だ!」
(俺には未来視がある、次レアトは右手で殴ってくるのは分かってる。)
「おりゃぁ!」
レアトの渾身の右のパンチはフツロに止められるはずだった。
フツロは自分が思ったよりも魔力を使っており、レアトが2秒後に殴る未来を見たと勘違いしていたが実際は1秒後の未来を見ていた。
綺麗に吹っ飛ぶフツロ。
「ちっ、ミスった。思ったより魔力が減ってる。これが満身創痍ってやつか?」
「知らないですよ、そんなよ。」
「まぁレアトとりあえず限界までやり合おうか!」
殴りかかるフツロ。
フツロはもう先ほどのような動きはしなかった。ここまで来るともう本当の殴り合いだ。
しかし、フツロには未来視の魔法がある。
レアトが勝つにはフツロが未来を見るよりも早く攻撃するしか方法はない。
フツロが殴りレアトがそれを受ける形が続く。
レアトが殴りかかっても綺麗に避けられる。
ただレアトは攻撃する手をやめない。
止めると攻撃が飛んでくるからだ。
綺麗に避けているように見えるフツロだったが、それはただ後ろに下がっているだけでもし壁まで下がったとしたらレアトの攻撃は届くだろう。
「さっさと当たれよ!!」
「当たるかよ!!!」
ついにフツロが壁まで下がった。ついにやってきたレアトのチャンス。しかしフツロはこの未来は先に見ていた。
(壁まで下げさせられたぜ、、まぁ次レアトは思いっきり右のストレートっていうのは分かってるがな、こいつも俺と一緒で結局は右のストレートだよりだな。)
フツロに飛んできた攻撃はなんと右のストレートではなくレアト渾身の蹴りだった。
ドン!!!
壁が凹むほどの本気の蹴りがフツロの腹に刺さる。
「グゥア!!なんで、、」
驚きが隠せないフツロはレアトと距離をとる。
「はっはっ、ふー、、。エボさんなんかおかしいよ。俺の未来視が外れた。」
「そんなことぐらいあるだろう!」
「いや!これが初めてだ。一体なんで、」
「とりあえず集中しろ、レアトがお怒りだぞ、」
未来が外れたフツロは焦っていた。今まで起こったことがない事象に。この非常事態、フツロの頭には負けの2文字が散らつき始めた。
すると、レアトはおもむろに右手を上にあげ叫んだ。
「来い!!」
その叫び声と同時にエボの足元にあった剣がレアトの右手に移動しその手に収まった。
***
(来たっ!!!)
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