第2話 日常
「フェリスにならないかい???君才能ある気がするんだけど、りあはどう思う?」
「正直なところ少し共感する部分があります。」
「だよね!トレスフェリスのりあが言うんだもん結城レアト君フェリスになるよね??」
「は、はい。」
めちゃくちゃ強引な誘いだと思うのだが、俺は断ると何故か人生が終わる気がした。
「良かった良かった!いい返事が返ってきたよ。」
すると急に汗がひいていき悪寒も無くなった。空絵りあの方を見ると彼女の額の汗を無くなって落ち着いた表情になっていた。
電話が来た時からハセリ様は怒っていたのか感情が荒ぶっていたらしい。
だから彼女は少し焦っていたのだ。
しっかりと落ち着き俺はハセリ様の顔を見ることが出来た。
白い綺麗な髪にとても透明感のある目、本当に整った顔立ちに俺は懐かしさを感じていた。
「そこまで顔を見られると恥ずかしいんだが、、」
「あ、申し訳ございません。」
「ところでレアト君はりあと少し顔立ちが違うが何故なんだい??」
「それは多分ハーフだからかと思います。母が外国人な者なので、僕は母の血でこのような顔になりました。」
「向こうの世界は顔が違う人が何人もいるんだね〜。興味がさらに沸いてきたな、いつかいきたいんだけどね。」
「行かないんですか???」
「行かないというより行けないからね。だからりあや他の人から向こうの世界の話を聞くんだ!今日はたまたま君がいたけどね。」
空絵りあ以外にもこっちの世界の人がいるんだと思いつつも、ハセリがこっちの世界に興味があるのは驚いた。
「こっちの世界とここの世界を繋いだのはその目的があったからなんですか??」
「それはちょっと違うな。繋いだの僕じゃないし。そんな事より早く向こうの世界の話しようよ!」
「かしこまりました。今日はこちらになります。」
空絵りあが出したのはしおんが喋っていたアニメの原作だった。
どんな話かと思えばアニメの話の事だなんてハセリ様もそうとう子供らしい。
俺も少し興味があったので空絵りあの話に夢中になり時間など忘れていた。
どれくらいたったか分からないが、部屋の外から声が聞こえてきた。
「失礼します!アリスオペラ!入室します!!」
アリスが大きな声と共に部屋に入ってきた。
「どうかしたの?」
「りあ様と結城レアト様がそろそろ帰るべきかと思い報告しに来ました。」
時計を見るともう夜の十一時だ。異世界にいても向こうの時間は分かるらしい。
さすがに学校もあるので、帰らなければいけない。
「確かに空絵さん十一時だしそろそろ戻らないと。」
「えぇそうですね。では、ハセリ様次の時に。」
「うん。ありがとね〜。あ、そうだレアト君にはこれあげる。」
そう言って投げ渡されたのは先程りあが持っていた携帯と同じモノだ。
「それ持ってたら一人でもこっち来れるし明日の同じ時間ぐらいにまたおいで〜。とりあえず僕とりあとアリスの連絡先は入れておいたから、ついた時はアリスに連絡してね。」
「あ、はい、分かりました。あのー」
「あ、何するかは明日のお楽しみ。ほら!早く帰らないとー。」
「帰りますよ、結城レアト君。」
そう言われて俺は空絵りあと帰路に着いた。
***
こっちの世界に戻るとさっきまでの出来事が嘘かのように静かだ。
これが空絵りあにとって日常なのかと思うと少しゾッとする。
「あのー空絵さんはいつからこんなことを??」
「いつからなんてどうでもいいでしょう??とりあえず私の事はりあで大丈夫です。フェリシダットではりあと呼ばれているので。」
「じゃありあさんって呼びます。俺の事は好きなようにどうぞ。」
「それではレアト君と呼ばさせていただきます。」
まさかの名前呼びで驚いた。
「りあさんは家はどこなんですか??」
「隣駅なのですぐですよ。」
「俺も隣駅です!!」
そんなたわいもない会話をしていて驚いたの
は、りあさんとは家が近所という事と一人暮らしをしているという事だった。
家族の事は聞かない方いいと思ったので何も聞かなかった。
「それでは私はこっちなのでまた明日、学校で。」
「うん、また学校で。」
しおん以外と家まで一緒に帰ったのは初だし、今日だけで空絵りあとはとても親しくなった気がする。
明日から俺の日常はおそらく変わっていくのだろう。
そう考えながら俺は眠りについた。
***
「レアト!!起きなさい〜朝やで〜、しおん君玄関いるよ〜。」
今日も母の関西弁で目が覚める。
時計を見るといつも通り八時、いつも通り着替えコンタクトレンズをつけ、朝飯を食べずに家をでる。
もちろん歯は磨いている。
「おはよう!!レアト!空絵さんとは仲良くなれたか?!」
いつもとは違うしおんの第一声。
空絵りあと親しくなったという事を改めて実感した。
「しおん、この話はまた今度ゆっくりするよ。」
「なんかめっちゃテンション高いな!まぁ楽しみにしとくわ!」
別にそこまでテンションが高いわけでもないが、と思いながらもいつも通りの会話を続け学校へ向かっている時、
「おはようございます。レアト君。」
一際異彩なオーラを放つ空絵りあがそう俺に声をかけ早々とした足取りで抜かしていった。
「なんかめっちゃ絆深まってるやん。ほんまに何があったんや、めっちゃ気になるぞ。」
「だからまた今度話すって。」
「ちゃんとその時間作るからな!!」
満面の笑みで俺を見つめるしおんを横目に俺は空絵りあの後ろ姿を見ていた。
同じクラスで席は斜め前という事もあり、俺の頭は空絵りあの事でいっぱいだ。
やはり別の事を考えていると時間はすぐに過ぎていく。
気づけば昼の時間だ。
弁当を出してしおんのとこへ向かおうとしていると、
「レアト君、一緒に昼ご飯食べましょう。」
こう言って空絵りあが俺を引き止めた。
周りの生徒の目は驚きの目だ。
「あ、うん、分かったけどここじゃあれだし屋上いこう。」
俺はしおんに上手く誤魔化して連絡し、彼女と屋上へ向かった。
二人で昼飯だなんてまるでカップルのする事だな、と思いながら二人で昨日と同じベンチに座り弁当を食べ始める。
「今日もフェリシダットに行くんでしょう?」
「なんかハセリ様に呼ばれたから、何するかは聞かされてないけど。」
「多分だけど、レアト君がフェリスを目指すって言う話だからその訓練が始まると思います。少し気を引き締めた方がいいかと。」
「分かった、覚悟して行くよ。」
あまりフェリスというモノに興味はなかったが、何故か俺の闘争心は燃えていた。
「訓練って具体的に何をするの?」
「一人付きっきりで教えてくれるフェリスがいるのでその人によりますね。まぁ基本的なことは変わりませんが。」
あまりビビってもおそらく何も変わらないので楽観的に行くべきだと俺は思った。
「なんかアニメみたいでカッコいいかも。」
「レアト君ってアニメとかは見るんですか??」
「一応しおんが見てるから、ちょっとはね。」
彼女がアニメという単語に乗ってきたのは驚いたが、おそらくハセリ様にお話するためだろう。
「おすすめのアニメとかないですか???」
「それだとしおんが色々見てるからな〜、今度話してみたらいいと思うよ。やっぱりハセリ様に話すために見てるの??」
「ハセリ様は色々気になるらしいので、私も色々なジャンルのモノを勉強しています。」
彼女のハセリ様への忠誠心と言ったら凄いものだ。ここまで誰かのためになれる人なんてそうそういないだろう。
気がつくと予鈴がなった。
「戻りましょうか。とりあえず今日は頑張ってください。」
「うん、ありがとう。」
そう言って俺らは教室に戻った。
***
放課後になり、俺は一人でフェリシダットに行く準備をしていた。
一応の腹ごしらえに着替え。
訓練と言われると汗をかくだろうから着替えは必要だろう。
少し早いが出発した。早いに越した事はない。
稲荷大社の鳥居の目の前に到着し、俺は息を整える。
そして、一人でフェリシダットに飛び込んだ。
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