第1章 発見と成長編
第1話 出会い
「才能のある人と仲良くしなさい」
お母さんの口癖だ。
小さい時から言われ続けてきたこの言葉のせいで高校生にもなって友達は片手で数えれるほどしかいない。
そんな僕は夢もこれと言ってなく特に行きたい高校も無かったので、1番近い小山学園に通っている。
友達がほとんどいない俺を気遣って斜め前に家がある幼馴染小浦しおんも俺と同じ小山学園に入学した。
「レアト!朝やしそろそろ起きなさいよ〜
学校遅刻するし、しおん君もう待ってるよ〜。」
今日も母のなぜか上手い関西弁で目が覚める。
時計を見ると朝の八時だ。どうも俺は目覚まし時計の音で起きれない体質らしい。
眠たい目を擦り制服に着替えて、コンタクトを入れ朝飯なんて物は食わずに家をでる。寝起きで歯は磨いており鏡に映る茶髪の髪に少しの白が彼のキャラクターを引き立てる。
ドアを開けると今からどこか旅行に行くかのようなテンションで待っている小浦しおんがいた。くっきりとしたまん丸な目を光輝かせながら少し機嫌の悪い俺に突撃してくる。
「レアトおはよう!!!今日はええ天気やな!!今日こそ友達作るんやで!」
「はいはい。頑張りますって。」
しおんはこのお決まりのセリフを毎日言ってくる。
正直めんどくさい所もあるが、そろそろ友達を作らないと今後の生活に関わってくる。
(お母さんの口癖がなかったらな〜)
そんな事を考えつつ二人で学校へ向かう。1番近いと言っても歩いて十五分ほどだ。
着く頃にはほとんどの生徒が登校している。
「レアトさぁ昨日のアニメみた?!めっちゃおもろいやつ見つけてさ!まじでおもろいし今日でもいいから漫画探しに行かん???」
「どっちでもいいー」
いつものようにしおんが喋っては俺が返事をする会話が続く。
そんな会話が続くなか一際異彩なオーラを放つ女子生徒が俺ら二人を颯爽と抜かして早々と歩いていく。
短いとても綺麗な髪におおきな目、綺麗な唇にとてもスタイリッシュな体を持つ彼女は空絵りあだ。
とても美しい彼女は同じ学年なら知らない人がいない人気者でファンクラブもあると噂で聞く。
しかし、彼女は美しい代わりにとても謎が多い人でSNSを一つもしてないらしい。
彼女には友達がいるのか、という疑問と
自分と友達になってくれないかな、という期待をいつも抱きながら彼女の事を目で追う。
「あいつってレアトと似たような人やんな。」
「え、どこが、」
「だってめっちゃ可愛いのにSNSやってないねんで?!レアトも一応ハーフでかっこいいって言われてんのにインスタのフォロー来ても返さんやん??」
「そんなんやってないのと一緒やん!」
「それは確かにそうかもなー。」
言われていれば似てる部分があるかもしれないが、それ以外に彼女は俺とは違う何かがある気がするのだ。
「とりあえずレアトさぁ、りあさんに話しかけてみたら?」
「はぁ?なんでよ。」
「似た者同士なんか通じる者があるかもしれんやん????」
「俺は一つも似てると思わんけど〜。
けど、入学して一ヶ月も経ったのにしおん以外友達がいないのはやばいとは思ってる。」
「勇気だして友達なってこい!結城だけに」
しおんの面白くないボケはほっておいて、はたして俺は空絵りあに話しかけることは出来るのだろうか。
そんな事を考えているともう教室は目の前だ。
「今日中に話しかけるように努力するよ。」
そう言い残し俺は教室に入っていった。
***
(さぁどう話しかけよう、実際に話しかけることが出来たとしてそこから話題を広げる事はできるのか。)
一時間目の数一の授業は一切頭に入ってこず、空絵りあの事しか頭に無い。
怖い事に彼女とはクラスが同じで、もっと怖い事に彼女の席は俺の斜め前の席なのだ。
同じクラスメイトだから話す事なんて容易い
と思いたいところだが、客観的に見ると友達の数が少ないハーフの俺と、ファンクラブがあるという噂の空絵りあの二人が教室で会話をしていたら、おかしい状況になるのは間違いない。
そんな気がする。
色々考えすぎ、時間はもう昼ごはんの時間になってしまった。
お母さんの弁当を持ち、しおんと二人で屋上に行く。小山学園はめずらしく屋上が開放されている校舎がある。
屋上のドアを開けると奥の方で一人でご飯を食べている空絵りあがいた。
「あ、レアトごめん!俺早弁して弁当なくなったんやった!購買行くから先食べといて!」
「あ、おい!」
ウサインボルトかというぐらいの速さで階段を降りていくしおん。
「あんな遠回しに言わんでも、話しかけてこいってことぐらい分かるわ。」
と呆れた小言が漏れる。
実際チャンスなのでここは漢魂で行くしかないと決心し、隣の空いてる部分に座る。
「隣良いですか??」
「あ、全然いいですよ。」
この辺で心臓はバクバクだ。女子と目を合わせるのだけでも俺にとっては珍しいのに、話しかけてしまった。
弁当を食べながら何を話そうかと考えていると彼女の方から話しかけてきた。
「いつもここでご飯を食べているのですか??」
「え????」
当然驚きはした。
その内容もだが、それよりも驚いたのは彼女からの目だ。
すごい目力で俺を見てくるのだ。
(え、俺今尋問されてる??え、殺されるのかな)
「今日は友達がいなくて、教室だとちょっと空気が嫌だったので、ここに、、」
返事の選択を失敗すると殺させる、そう思った俺は一つも噛む事なく返事をした。
「ではなぜ私の隣に???」
確かにそうだ。
彼女のとなりではなくとも他の席は空いている。
ここは正直に言うしかない。
「実を言うと空絵さんと友達になりたくて、なんだか自分で言うのも恥ずかしい所はあるけど、似てる部分があるというか。」
「そうでしたか、では友達になりましょう」
「え、あ、はい。お願いします。」
まさかの返事に二度目の驚きだ。
先程のような目力はもうすでになくいつもの美しい空絵りあに戻っていた。
「あの、本当に友達になってくれるんですか??」
「なりたいと言ったのでは???」
「はい、言いました。」
「なのでなります。」
おそらく彼女は少し他の人とずれている。
友達がいない俺でもわかるくらいにだ。
それでもそれよりも俺は彼女の美しさに見惚れていた。
そこからは何を話したか覚えていない。
頭がパンクしてしまい脳が働かなかった。
予鈴のチャイムがあり、俺ら二人の生徒は教室に戻っていき屋上は俺ら二人きりだ。
「じゃあ、そろそろ教室に戻らない??」
「そうですね。時間ですし。とりあえずあなたは別の所から教室に戻って。」
「え??」
「一緒に帰ったらおかしいでしょう?」
「あー確かにそうだね。」
彼女も俺と同じ考えだったので少し安心した。
「あなた本当にわたしと友達になりたいの??」
「まぁうん。」
「はっきりとどっち?!」
「はい!なりたいです!!」
急に大きな声で言われたので思わず反射的に口に出してしまった。
実際なりたいから良かったが。
「じゃあ今日の夜七時に京阪の伏見稲荷駅に集合ね。それじゃあまた夜に。」
「え、、ちょっと待って。」
彼女から言われた謎の約束。本当に謎でしかない。
驚きと不安を抱えながら俺は教室に戻った。
そこからの授業中の彼女はいつも通りで俺もいつも通り授業を受けた。
***
今日の授業が終わりしおんと帰路につく。
「空絵さんとはどうやった?!」
「まぁ友達?にはなれたのかな。」
「それは大勝利やな!
とりあえず言ってたアニメの原作探しに行くかぁ〜。話はそのあとやな!」
「 ちょっとそれはまた今度にしよ。」
「え、なんでやねん?」
「まぁ今度話すよ。」
「そか!じゃあまた明日!」
そう言ってしおんは家に入っていった。
何かあったのかはバレてはいるがそんな事よりも、これから空絵りあに会いに行く、というので頭がいっぱいだ。
自分の部屋でその時間を刻一刻と待つ。
時間が来てしまった。
頭がまだ整理されていないが行くしかない。
幸い駅は近いので自転車で駅までいった。
伏見稲荷駅に着くとやはり異彩なオーラを放つ彼女がいた。
「あのーこんばんわです。」
クラスメイトなのに変な敬語で挨拶をする。
「どうも結城さんこんばんわです。」
彼女も変な敬語で返してきた。
なぜか親近感が湧いてくる。
「では行きましょうか。」
そう言う彼女に俺はついていくしかないので、黙ってついていく。
これはデートなのでは、と思いつつ彼女の速度に全力でなおかつバレない程度に歩いていく。
ついたのは伏見稲荷神社。
千本鳥居で有名なあの場所だ。
夜にこの場所に来るのは初めてで、少し不気味な空気が漂っている。
「では、こちらです。」
「あ、はい。」
もう到着したのでは、そう感じる部分はあるが彼女的にはまだなのだろう。
その時の空絵りあの周りには何か揺らぐものがあった。それを感じ取れた時なぜかレアトには無数の鳥肌が立っている。本能で何かを感じ取っていた。
レアトがそうなっているのに気づかない空絵りあは早々と歩いていき、大きな鳥居をくぐった。すると、空絵りあは消えた。
空絵りあが消えた。
それは見えなくなったと言う次元の話ではない。
目の前から一瞬にして消えたのだ。
「え、おい!」
俺の呼びかけに返事が帰ってくる事はない。
俺は全力で彼女の歩いた方に走っていく。
鳥居をくぐるとそこには別の世界が広がっているのだった。
***
「あ、びっくりさせてごめんなさい。ちゃんとこっちに来れたのね。良かった。」
「あ、うん?」
そう俺に声をかける空絵りあ。
周りを見るとさっきまでいた伏見稲荷大社とは別の何か建物の中の景色が広がっていた。
「りあ様!!!申し訳ないのですが、出撃の準備の方を!」
「分かったわ。この人も一緒に連れてきてちょうだい。」
「え、ですが、、」
「いいから。言う事は聞きなさい。分かった?」
「承知しました。」
俺は周りの景色の事も全く理解が出来ずにただその会話を聞くしかできなかった。
「空絵さんここって、、稲荷大社ではないのね?」
「見たらわかるでしょう??とりあえず私についてきてください。」
そう言われて俺はさっきの部下みたいなやつに着替えさせられ、建物の外に出た。
外に出るとまず目に飛び込んで来たのは、自分が今まで生きてきた世界では見ないような景色。
そして、自分が生きてきた世界とは違う空気をレアトは肌で感じていた。
「結城レアト君。ここは分かっての通り私たちの住む世界とか違う異世界。死なないように気をつけて。」
「ですよね、、、それにしても違いすぎませんか??」
「それでも景色ぐらいでしょう?とりあえず今は私がいるので身の安全は確定してますので。」
「景色というかそれよりも空気?というのか何か感じるんですよね。」
そう聞くと空絵リアは少し驚きの表情を浮かべた。
「あなた、才能あるかもね。」
「俺に才能???」
「うん、才能。そんなことより早く行かないといけないので。飛んでいきます。」
そう言って彼女は空中に浮かびとてつもないスピードでどこかへ飛んでいった。
「では、我々も行きますよ。りあ様は特別なので、我々は地上ですが。」
さっきの部下のような人に車のような物に乗せられ、りあが飛んでいった方向に向かってそれを走らせる。
***
五分ぐらいだろうか、とてつもない速さの車のような物に俺は乗せられ吐きそうになりながらもどこかへ到着したようだ。
「りあ様は先に到着しているはずなので、あなたは安全なところに案内します。」
そういって俺は車のような物から降りると吐き気が一瞬で無くなった。
1キロ先ぐらいだろうか、大量の気味が悪い何かの大群がこちらに歩いてきている。
こちら側にはその半分ほどの兵隊達がいる。
その兵隊達の先頭に、一際異彩なオーラを放つ空絵りあがいた。
幸い俺がいるところは、山の山頂のような場所なので安心らしい。
「皆の衆!!!!やつらカラーミーの大群はこの世界にいてはいけない存在なのだ!!!
ここで根絶やしにする!!雑魚どもはお前らに任せる!!」
空絵りあの演説に応えるかのように兵隊達も士気を高めていた。
そして、空絵りあ以外の兵隊達はその化け物達に突撃していく。
どんどんと倒れて行く化け物と兵隊達。
まさしく戦争だった。
化け物と人間と言えどここまで激しい戦いを見たのは教科書でしかない。
数が減っていき残りは見た目の違う化け物一匹になった。
ここで空絵りあが動く。
兵隊達は武器や連携などで敵を倒していたが、空絵りあはちがった。
「
彼女がこう叫ぶと周りには雷雲が立ち昇り化け物を雷が襲う。
化け物は空絵りあに対抗することも出来ず、ただボコボコにされていた。
見事こちら側の勝利で終わったこの戦い。
俺がこの世界にきてまだ一時間の出来事にしては内容が濃すぎる。
なぜ空絵りあは俺にこの異世界のことを教えたのか。
なぜ空絵りあはこの異世界で魔法が使えるのか。
そしてあの化け物はなんなのか。
聞きたい事が山ほどある中、俺の腹が大きな音を立てる。
そう言われると俺は昼の弁当から何も食べていなかったのだ。
「戦いも終わりましたし、一旦フェリシダットでご飯でも食べましょうか。」
空絵りあの部下にそう言われると俺は一気に気が抜けたのはその場に崩れ落ち気を失った。
***
目が覚めると俺は先程の建物のどこかの部屋にいた。
「おはよう。結城レアト君、体調は大丈夫ですか?」
そう俺に声をかける空絵りあ。
先程までの戦いの形相は一つのかけらも無かった。
「体調は大丈夫だけど、お腹が減ってます。昼から何を食べてないので、、」
「ご飯は今アリスが取りに行ってるので待っててください。」
少し気まずい空気が流れる。アリスというのは空絵りあの側近のことらしいが、今はそれよりも空気が悪い。
俺はここの事とか魔法の事とかなぜ異世界に連れてこられたのか、色々聞きたいことがあるが聞こうにも中々聞けない状況でいる。
「急にこんな異世界に連れてきて本当に申し訳ないです。悪気はないんです。ただ友達になってくれると言われたから、この秘密を共有したいと思ったので、、、、流石にダメでしたよね。」
空絵りあは少しずれている性格だと思ったが、礼儀はしっかりとしている方らしい。
「ダメではなかったけど、こんな状況になるの初めてだから理解が追いつかなくて、、、、
ゆっくりでいいから説明お願いしてもいいですか??」
空気は悪いままだが、この流れで聞かないとと思い俺は意を決して聞いた。
するとここで空絵りあの側近のアリスがご飯を持ってきた。
アリスというのは俺のそばにずっといた部下のことらしい。
アリスと空絵りあの二人から俺はこの世界の事や魔法の事など色々とご飯を食べながら聞いた。
今俺がいる建物はフェリシダットと呼ばれる組織の建物で、今日見たカラーミーと呼ばれる化け物を倒すために作られたらしい。
そしてこの異世界には魔力が漂っていてその魔力と人に元々秘められている魔力などを駆使する事で、魔法を使うことができその魔法が使える人の事をフェリシダットではフェリスといいアリスもその一人らしい。
色々と聞かされ頭がパンクしかけたがなんとか理解し、とっくの内にご飯を食べ終えていた。
アリスがご飯を片付けに行き部屋には俺と空絵りあの二人が残った。
「あのー」
俺が声をかけたタイミングで空絵りあの電話がなる。
(あ、空絵さんも一応携帯は持ってたんだ)
と、感心していた時空絵りあが慌てた表情でその電話に出た。
「こちら空絵りあです、、ハセリ様!承知しました。では。」
戦いの時の演説の声ぐらい大きな声でハセリと呼ばれる人物と会話をした空絵りあに俺は驚いた。
「結城レアト君ハセリ様が私たちをお呼びしていますので、今から行きます。」
切り替えがすごい空絵りあだが、その額には汗が少し残っていた。
「ハセリ様っていうのは誰なんですか?」
「ハセリ様はフェリシダットの創設者です。なのでご無礼の無いようにお願いします。」
歩く速度がやはり速い空絵りあに頑張ってついていきながらその説明を聞いていると、どうやら部屋に着いたらしい。
空絵りあの額の汗は先程より増えていた。
「失礼します!空絵りあ入室します。」
やはり普段聞かない大きな声だ。
ハセリという人物はそうとうやばい人に違いない。
俺は結構ビビりながらハセリ様と対面した。
「やぁ、君が結城レアト君だね。」
声だけで分かる、この人は強い。フェリスでもない俺でも分かるほどに強い。
汗が止まらないし悪寒も凄い。
そんな中ハセリ様は俺に問いかける。
「フェリスにならないかい???」
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