妖精との出会い

 ガシャン


 私は冷たい金属音で目を覚ました。


 牢獄なのだろう。目の前の鉄格子の扉の前には見張りのための騎士がいる。


 これから翼を捨てた私は、王家最大の恥として名前すらも知られずにひっそりと姿を消していくのだろう。

 そう思えば少し楽しくなってくる。無機質な部屋―元王女だからか、かなり広い―に一人きりだからか、成人してからはなるべく明るい表情を出さないようにしていた口から笑い声が漏れる。


 もう翼を捨てた私は周囲から見て狂人なのだ。


 理由も知られず自殺した悲劇の王女様よりも断然ましだ。そう思えばもう愉快に思えて、さらに笑い声が大きくなる。


 そして、その笑いは小さな声に邪魔された。


 ―そこにいるのはだーれ?

 ―きれいなひと。きれいなひと。

 ―どうしてわらっているの


 その声に目を向ければそこには、光の珠に羽根が生えているものや、獣や天神族に羽根が生えているものがいた。それは妖精だった。

 妖精とは、すべての属性魔法をどんな種族よりも使いこなし、さらには魔の属性を持つ魔法を使うが、醜い感情を糧とする邪悪な存在だ。

 彼らの加護を受けた存在は次第に狂って、死に至る。


「これから私が死ぬからよ。それも悲劇の王女としてではなく、狂人として!」


 それもこれもこれから死ぬ私にとってはどうでもいいことだった。そして何よりも彼らのほうが、周囲の者よりずっと好感が持てた。

 だから私は答えた。


 ―どうして死んじゃうの、きれいなひと


「優しいわね。こんなにも醜い私をきれいだなんて。私はこの醜い体が嫌いなの、今すぐにでもぐちゃぐちゃにして目を潰して見えないようにしたいくらい。」


 ―おうさまならどう?

 ―おうさまならなおせる、おうさまなら。


「おうさま?おうさまってだれ、治せるなら会わせてちょうだい」


 本当は妖精のことなど気にしないほうが良いだろうが元の体を取り戻せるなら些細なことだ。


 ―おうさまはおうさま。

 ―あえばわかる

 ―つれてこ、つれてこ、きれいなひと。

 ―いこう


 そう彼らが言った瞬間私は光に包まれた。

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