ぬいぐるぐる神
最早無白
ぬいぐるぐる神
「ふぅ……」
体動かさんとずっと家で作業しとったから久しぶりに散歩したけど、まあまあ気持ちええもんやな。どっとくる疲れもええ感じや。
「――って、ここどこやねん。木めっちゃあるなぁ、森か!?」
あかん、つい歩くのに夢中で道に迷ってもうた。どうしたもんかなぁ、近くに人もおらんっぽいし……。
せや、携帯あるやん! なんやっけ、位置情報? ってやつあれば、ここがどこか分かるやろ。
「いや圏外やん……」
おい、どうすりゃええねん。とりあえず来た道戻る? こっから回れ右してちょい歩いてみるか。
しばらく歩いてみたけど、景色が全然変わらん。家帰れてるか? これ。
「そこの青年……」
――ん? なんか声したな、青年ーって。いや、確かに俺は
「ちょ、シカトすんなやそこのあんちゃん。ちょっと『青年……』ってカッコつけたかっただけやんか。わかるやろこの気持ち?」
なんやねんこの声。いきなり方言丸出しやがな。コイツに構っとる暇ないし、このまま黙っとこ。
「そんな怖い顔して歩かんと、はよワイのこと拾えや」
「いや拾うってなんすか。そんなん言うてますけどあんた、どこいてはるんですか?」
なんか食い下がってきたので、来た道を戻りながらテキトーに相手してやる。
「ん? なんかあるな。ちょい見たろ」
うわ、なんか小さいぬいぐるみ落ちてんねんけど。苔が生えてて、半分緑色のしろくまちゃん。さっき歩いてた時に、こんなんあったっけ?
「えっ、こわぁー……なんでこんなん落ちとんねん」
誰かが落としたんかな? まあでも、結構な時間経っとるよな。もしかして、これが喋っとるとか言わんよなぁ……?
「ようやっと拾ってくれたかあんちゃん! こら捨てる神あればなんちゃら、やな。あ、ワイも神様みたいなもんやったわ! ぶはは!」
「あんたやったんかい! さっきからじゃかしいのは!」
「おま、神様相手にじゃかしいってなんやじゃかしいって!」
「こっちは迷子でそれどころやないんやって!」
神様かなんか知らんけど、はよ家に帰りたいんや。このままやったら完全に頭おかしなるわ、第一ぬいぐるみが喋るわけないんやし。
「ははん、さてはワイのこと信じてへんな? ワイは神様の髪で編まれたぬいぐるみなんや。ぬいぐるみの神、ぬいぐる
「はいはい信じた信じた。とにかく俺は家に帰れればそれでええんよ、なんかいい方法あったりせぇへん?」
「わかった。手ぇ貸すから、この苔取ってくれへん? 寝てる間に固まってて動けんのよ」
本当やろうな? しゃーないから苔取ったるわ。よいしょっと……意外と固いやんけ。
「っし。こんなもんかね」
「おお! あんちゃんおおきに! じゃあ元の世界に戻したるか、えいよっ!」
気がつくと、俺は家の中におった。と思う。
「なんかようわからんけど戻れたー!」
――戻れた? いや、どっからやねん。俺知らん間にどっか行っとったっけ。あれ? 夢?
というか体が重い。普段部屋こもって作業しとるし、運動不足か?
「こりゃさすがにヤバいな。体動かさんと」
とはいっても、なんの運動したらええねん。とりあえず散歩にでも行っとくか……?
ぬいぐるぐる神 最早無白 @MohayaMushiro
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