ぬいぐるみになったよフェルデンさん

冥沈導

ラブデビルぬいぐるみ! リールたん!

「……何だこれ」


 ある日の放課後、何気なくヲタメイトに入ると、入り口入ってすぐの棚に。


『本日発売! 100体限定! あのグロース兄弟が生み出したラブデビルぬいぐるみ! リールたん! 可愛さとリアルさを兼ね揃えた恐怖のぬいぐるみ!』


「……まんまフェルデンじゃん」


 俺はぬいぐるみを持ち上げた。15センチくらいの、ソフトボアで作られた遙坂ようさか高校こうこうの制服を着た、鉄仮面を被った、フェルトの髪は黒に近い紫色な女子。……一人しかいねぇじゃん。


「……はっ! まさか! この鉄仮面は取れる!? リアルなぬいぐるみなんだから! そしたらっ、ぬいぐるみとはいえ顔が見れる!?」


 やけにリアルな触ると冷たい鉄仮面を外すと、フェルデンの顔が!


「……のっぺらぼうかよ」


 なかった。


「呼んだぁー?」


「ん?」


 振り向くと。


「ギャー!」


 栗色髪の、のっぺらぼうがいた。


「ぷっ! ぶっひゃっひゃ! マジでウケるー、豆先輩のその顔ー!」


 のっぺらぼうから、聞き覚えのある男子より男子な笑い声が。


「ボクだよボク、ヴィエルだよ」


 のっぺらぼうが、下からめりめりっと顔を剥ぐと、ムカつく青い瞳のイケメンフェイスが出てきた。


「ビビらすなよ! コ◯ンかよ! ベ◯モットかよ!」


「あの人かっこいいよねー、憧れるよねー」


「うん、あの方はすごい」


 後ろからサージュが現れた。


「……お前はサージュか? それともサージュの顔を被った誰かか?」


「よくわかりましたね、実は僕が」


「え……」


 サージュが下からめりめりっと顔を剥ぐと。


「ヴィエルでしたー」


 ニコニコ顔のヴィエルが。


「そして、ボクが」


 ヴィエルがまた下からめりめりっと顔を剥ぐと。


「サージュです」


 栗色短髪のサージュが。


「いや、でも、声まんまだったけど」


「双子だしー」「双子ですし」


「いや、そうだけどよ」


「今、モノマネ芸人さんたちに弟子入りしてるんだー」


「……何がしたいのお前ら。マジで組織に入る気か?」


「それより見てよー、このぬいぐるみリールたん! めちゃかわでしょー!?」


 ヴィエルは棚に並んでいたぬいぐるみを手に取り、俺の顔に近づけた。


「……可愛いけどな」


 床に捨てられた三つのリアルマスクが不気味で、余計に可愛さが引き立つけどな。


「鉄仮面も本当に鉄製だしねー。それにー、何よりー」


 ヴィエルはぬいぐるみのスカートをチラッと捲った。


「下着がリアルだよっ」


「…………」


 満面のイケメンスマイル、ドン引くわー。


「しかもねー、これねー」


 ヴィエルはぬいぐるみを横に向け、スカートを少し捲ると。


「紐パンだから、紐、ほどけるよっ」


「……お前ら」


「んー?」「何でしょう」


「グッジョブ!」


 ヲタ双子にグッと親指サイン。


「でしょでしょー」「当然ですね」


 二人が満足げな顔をすると。


 じゅわーっと後ろから何かが焼けるような音がした。振り向くと。


「うおっ! フェルデン! いたのか! って煙煙!」


 フェルデンがいて、鉄仮面から煙が出ていた。紐パン取れるよ発言で、許容オーバーになっちまったんだろう。


 そんなフェルデンの煙が、火災感知器に反応しないように、必死で俺は扇いだ。


「リールお姉ちゃんにぜひ見てほしくてねー、呼んでいたんだー」


よ言えそれを!」


 両手でバッタバッタとフェルデンの頭上の煙を横に扇ぐ。


「あ、ちなみにー。制服を脱ぐとー、花柄のー」


 ボンッ、ジュワーと、鉄仮面の中で何かが爆発する音と、さらに強くなる煙!


「もうお前ら! お口チャーック!」



−−−−−−


 あとがき。


 変態街道、真っしぐら(笑)


 間に合わなかった、『本屋』のスピンオフも次に公開します。


 このスピンオフで、興味を持ってくださいましたら。本編こちらから↓

https://kakuyomu.jp/works/16816700427820675035

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ぬいぐるみになったよフェルデンさん 冥沈導 @michishirube

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