「手つないで帰ろっか」「うん」『俺も混ぜてよ』「うん」『えっ』「えっ」

いずも

ごめんなさいそんなつもりじゃないんです炎上させないでください

 俺は百合の間に挟まっちゃうおじさん。

 口癖は「俺も混ぜてよ」

 おやおや~、なんか良い雰囲気のお二人さんを発見。

 一人は黒、もう一方は茶色がかった、どちらも腰まで伸びてる長髪は後ろ姿だけでわかるカワイコちゃん。

 あれは私立のお嬢様学校の制服のはず、グフフ、たまりませんなぁ。

 よっしゃ、今日はあいつらに決ーめたっと。



「ねぇ……手つないで、帰ろっか」

 黒髪の少女が勇気を振り絞ったかのだろう。手に力が入っているのがわかる。

「う、うん……」

 茶髪の子はいかにもお嬢様といった仕草でもじもじと体を動かす。フリフリのドレスが揺れているようにスカートの裾が翻る。体を左右にくねらせ、二人の手が触れ合うか触れ合わないか、じれったいやり取りが交わされる。


 ――さあ、ここで真打ち登場だ。

 このフローラル満開の百合空間を俺の言葉で穢してやるのさ。

 まさに仔羊のテリーヌに晩餐館焼肉のタレをぶち撒けるが如き悪魔の所業。

 ああ、注がれる視線を想像しただけでイキそう。


「俺も混ぜてよ」

「うん」

「えっ」「えっ」

 予想外の対応に黒髪の美少女と輪唱する。


「……聞き間違いかな? 今、うんって聞こえたような」

「はい。うんって頷きましたよ」

 茶髪の美少女はあっけらかんと言い放つ。顔面蒼白の黒髪美少女よ、俺も君と同じ顔をしたい。ていうかしてる気がする。


「え、待って。おじさんだよ。中年小太り汗っかきの脂ギッシュマイウェイだよ」

「それに頭髪も薄いですね」

 ぐっはぁ!? 可愛い顔してクリティカルヒット!

 もうやめて、おじさんのライフはゼロよ。


「そ、そうだよこんな不審者相手に何言ってるの!」

「うんうん君は話がわかるねぇ。おじさん嬉しい」

「触んなこのエロジジィ!」

 ぐぇぇぇ!!!

 なんてキレイな掌底打ち。君才能あるよ。


「えー」

「えー、じゃない」

「私は構いませんよ」

「えぇ……」

 こうして黒髪・禿頭・茶髪の図が出来上がる。


「い、いやいや待って待ってナニコレナニコレー!」

「? これがおじさんの望まれたことでは」

「そうなんだけど、そうなんですけど!? リアルに体験すると、この聖域サンクチュアリに侵入した途端に精神が清浄化されて昇天してしまうというか、この場にいてはいけないと脳内警報アラートがけたたましく鳴り響くわけですよ!」

「いいから手を離せクソオヤジ」


 え、なんなの。いい匂いがするとかそんなレベルじゃない。桃源郷はここにあった。三蔵法師も天竺行くの中止するレベル。おじさんには刺激が強すぎるっていうかもう蒸発しちゃう。存在が喪失ロストしちゃう。

「あっ、そうだ。ではこうしましょう」

「……はい?」

 友だちに提案するように胸の前で手を合わせる。

 どうしよう。おじさんもうどうにかなっちゃいそう。



「では、このぬいぐるみを私たちの間に挟みます」

「はい」

「このぬいぐるみはおじさんです」

「はい」

「私たちの間に挟まれたぬいぐるみになったと思って、実況してみてください」

「はい」


「えいっ、えーいっ」

「ちょっ、そんなに強く押さないでってば」

『おぅふ……デュフ、でゅふふふ』


「うふふふ」

「もう、やったなー」

「きゃっ、くすぐったーい」

『ぁ、ぁぁん……くぅっ、ぅぉおぉん』


「そーれっ」

「ここまでいくとぬいぐるみもう潰れてない? 大丈夫?」

「いいからいいからっ」

「まっ、いっか。むぎゅーっ」

『ぬわーーーーっっっっ!!!』



 あっ、これはこれで。



 おじさんは新たな性癖を開発した。

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「手つないで帰ろっか」「うん」『俺も混ぜてよ』「うん」『えっ』「えっ」 いずも @tizumo

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