第51話「四天王達のプライド」

Bブロックを制したジェネ。彼女はリエッジを操縦して自分の元に近づかせ、それを決闘舞台から回収する。

ルージュも頭部を破壊されたホワイト・スノーを手に取り、自分の敗因は何だったのかと考える。


「マジックコーティングが魔法に破られた……何故?」


「現代の技術という物は凄いね。時代が進むに連れて新しい物が次々に生まれる……。でもそれを絶対的な物だと過信しちゃダメだよ。」


ルージュの零した言葉に対してそう返すジェネ。それを聞いたルージュはどういう事かと聞き返す。


「どういう事です……?」


「それはね……。」


ジェネがルージュに自分がマジックコーティングを破る為に使った魔法を説明する一方、サイは以前鑑定具でジェネの状態を見た時、彼女が「魔法創造」と言う魔法を持っていた事を思い出していた。


「そうか……魔法創造の魔法で、マジックコーティングを破る為の魔法を作ったんだ。」


「何それズルかよ!」


サイの右隣で彼の言葉を聞いたエルストは、そんな凄い魔法があるのかと驚きを隠せなかった。

サイはさらにエルストにジェネの凄さを教えようとするが……。


「うん。ジェネの魔法は本当に凄くて、例えば……むぐっ!」


「どうしたサイ?」


そうしようとした途端にサイの口が動かなくなり、彼は言葉を発せられない状態になってしまった。

まさか……そう思ってサイが決闘舞台前のジェネを見てみると、彼女はサイに「喋るな」とジェスチャーで伝えている。

サイは、ジェネの魔法によって彼女の秘密を他人に喋る事を禁じられたのだ。


それを見たサイが手で丸のマークを作ってそれをジェネに見せると、彼女はサイの口に施した魔法を解除してくれた。


「サイ君?ジェネさんがどうかしたの?」


今度はサイの左隣に座っていた四天王のアレンが、何やらサイがジェネとやり取りをしているみたいだと思い、彼にそう聞いた。


「な、なんでもないです。あはは……。」


「なんかジェスチャーで話してなかったか?それで相手の事が分かるとか、相思相愛かよ〜。」


「ち、違うって……。」


人の事を信じやすいアレンの事はなんとか誤魔化す事ができたが、エルストはサイをからかい、彼は困った表情を浮かべた。


その20分後に開始されるCブロックトーナメント。このブロックにはメメントがおり、彼女を決勝で待っていたのは、ハイゴーレムよりも大きな体躯を持つメガゴーレム使いの3年男子生徒、ゲレゾン・ゼアーデだった。


「俺は四天王を全て倒し、名を上げてみせる!そしたら今度はサイやジェネの番だ……俺のメガゴーレム、「ディオボロス」で、ハイゴーレムなんぞ叩き潰してやるぜ!」


決闘舞台を前にしたゲレゾンは、意気揚々とメメントの撃破を宣言し、舞台に愛機、ディオボロスを置く。背面には二門の魔砲、ツインエクシードキャノンを、両腕に実弾兵器の迫撃砲を装備。

腰部左右には魔力を注ぐ事で赤熱化し、相手を溶断する2振りのヒートブレードを装備する。


「四天王を全て倒す、か……いい心掛けだが、私達がそれを許すと思うかな?」


メメントはゲレゾンの宣戦布告を受け取り、自分も愛機を舞台に置く。

このハイゴーレムは、彼女の愛機であるアビス・ルビオンに大幅な改修を施した強化型、このゴーレムにメメントは「ゼネラル・アビス」となづけた。


「Cブロック決勝戦……開始!」


「メメントさん、前と人が変わったよね?」


「うん。もう女の子にキツく当たったりしないし、この武闘大会まで自分磨きもゴーレム磨きも頑張ってた。」


以前メメントの侍女として扱われてきた女子生徒達。彼女らはメガゴーレムを相手取っても引くことなく戦う彼女を見て、この1ヶ月間の事を思い出す。

改心した彼女を責める者はおらず、真っ当にゴーレム使いとして頑張る彼女を、メメントのファン達は応援していた。


「コイツ……!これがハイゴーレムの機動力かよ!」


「ハイゴーレムだからと油断したな。ゴーレムの性能差が勝負を決める訳では無いという事を……」


例え相手がメガゴーレムで、自機がハイゴーレムだろうと、四天王の誇りを掛けて戦うメメント。

アビスは、機動力を得る為に装甲の軽量化が施されており、その機動力を活かして徐々に相手を追い詰めていく。


「この……っ!」


「覚えておくんだな。」


そしてアビスはディオボロス目掛けて高く跳躍し、腰のアサルトナイフを抜いてそれを相手の頭部に勢いよく突き刺す。

その決定的な一撃により、メメントの勝利が確定した。


「勝者……メメント・サーベラス!Cブロック勝者は、メメント・サーベラスです!」


「……負けた……クソッ……!」


敗北し、表情に悔しさを滲ませるゲレゾン。それに対してメメントは、彼の元に行き、励ましの言葉を投げかける。


「私達四天王はいつでも挑戦を待っている。また挑戦したくなったら、いつでもかかってこい。」


「メメント……!」


相手に励ましの言葉を送って手を差し伸べるメメント。ゲレゾンは彼女の手を掴み、立ち上がってみせた。

彼女のスポーツマンシップを称え、客席からは賞賛の拍手が沸き起こる。


「メメント先輩カッコイイですね。」


「そ、そうだね……次は僕の番か……緊張してきたなー。でもそろそろ行かなくちゃ。」


Cブロックは終わり、次は最後のDブロックトーナメントが始まる。

このブロックのシードはアレン。彼は武闘大会が始まる前は、自分なんかにそんな大役が務まるのかと思っていたが、同じ四天王であるルージュに励まされ、腹を括ってシードになる事を決めたのだった。


「頑張ってください!アレン先輩!」


「う、うん!」


彼は自分を応援してくれるサイの存在に感謝しながら、控え室へと向かう。四天王の意地を掛けたアレンの戦いが始まる……。

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