第50話「予想外の一撃」

Bブロック最後の戦い、シードのルージュとジェネの戦いが今まさに始まろうとしている。

お互い負けられない理由がある者同士、引く訳には行かない戦いである。


「以前のゴーレムとは違う……油断はできないな。」


ジェネは以前のゴーレムと見た目が違うゴーレムを決闘舞台に置いたジェネを見て、相手の出方を警戒しながら戦おうと決心し、自分も舞台にリエッジを置き、魔法操縦桿を握り締める。


「負けませんわよ。ジェネさん。私も全力で挑みますので……貴方も全力で掛かってきなさい!」


「あぁ……魔導王の力を思う存分振るうとしよう。」


ルージュはこの戦いを悔いの残らない物にする為に、敢えてジェネを挑発し、やる気を出させようとする。

それを聞いたジェネは、それに答えるよう務めると返し、不敵な笑みを浮かべる。


「Bブロック決勝戦……開始!」


そうして始まったBブロック決勝戦。それを聞いた瞬間、ジェネはリエッジの腰部スラスターを吹かして、スノー目掛けて突撃させる。


「勝負だ、ルージュ!!」


「負けるつもりは毛頭ありませんわ!!」


相手の宣戦布告を受け取ったルージュは、スノーに背部に背負わせた2振りのホワイトソードを抜かせ、リエッジに応戦させようとする。

段々と距離が縮まるリエッジとスノー。2機の距離は限界まで接近し、そのタイミングを見計らってリエッジは光刃を手元に形成し、それを振り下ろしてスノーを攻撃する。


それをスノーはホワイトソードを交差させて受け止めた。ホワイトソードには、ルージュが最初に獲得したマジックコーティングが施されており、故に光刃を受け止める事ができていた。

鍔迫り合いをするリエッジとスノー。スノーはその隙に相手に攻撃を与える為に腰部魔砲を展開し、そこから魔力を元にしたレーザー光線を発射する。


だが、スノーが腰部の魔砲を展開するのをジェネは察知し、それによる攻撃も見越して、相手がレーザー光線を発射するギリギリの所でリエッジを後ろに飛び退かせて回避させる。

さらに結界を展開し、自分に向けて放たれたレーザー光線を防ぐリエッジ。


「ふっ……。」


「甘いですわ!」


だがその直後、結界を使える優位性に安心するジェネをルージュが驚かせる。

結界を張るリエッジにスノーがスラスターを吹かして急接近し、その右手で結界に触れる。

なんとその瞬間、結界が砕け散ったのだ。それに驚くジェネ。これはルージュが習得した対結界魔法「結界破砕」である。


「結界が……!」


「ファイヤーショット!」


そして驚いたジェネの隙を付いて、スノーはファイヤーショットを撃つ。相手の虚を着いた一撃。当たればいいのだが……そう思っていたルージュ。

しかし、ギリギリの所でリエッジは右手の手甲でファイヤーショットを防ぎ、身を守る事に成功した。


「やるなルージュ!」


「まだまだ!」


ルージュの攻勢は終わらず、脚部魔弾砲から魔弾を連射するスノー。それに対してリエッジは、背部に格納された追加武装、シールドロンドを宙に浮かせ、魔弾から身を守る。

シールド本体は小さな物だが、本体から魔力を元にしたマジックシールドが展開され、それによって身を守るのだ。


相手の魔弾掃射をシールドロンドで耐え凌いだジェネは今度は自分の番だと言わんばかりに、スラスターを吹かして飛び上がり、光刃を構えてスノーを上から奇襲する。


「喰らえ!」


「お断りしますわ!」


上から強襲しようとするリエッジに対して、スノーは背中のシールドを取り出してそれを左腕に装着、その左腕を上に掲げてリエッジの光刃を受け止めた。

用意周到なルージュはもちろんシールドにもマジックコーティングを施している。


「好きだねそれ!私のゴーレムには使われてないってのにさぁ!」


「教えを乞うのなら教えてあげても良いですわよ!マジックコーティングの作り方を!」


ジェネとルージュはそんな問答をしながらも戦いを続ける。スノーはリエッジの光刃を受け止めている右腕を勢いよく押し出して、相手を突き飛ばす。


「そりゃどーも!」


スノーに突き飛ばされたリエッジだったが、こんなものではジェネは動じない。

リエッジは後ろに突き飛ばされながらも脚部増加装甲に備えられたワイヤークローを伸ばし、その爪でスノーの両肩を捕まえ、自分の方に引き寄せる。


「無駄ですわ!」


相手に捉えられ、接近させられるスノーだったが、ルージュはスノーの盾を構えさせ、リエッジの攻撃に備える。


「もう同じ手は喰らわないさ!」


盾を構えてリエッジの攻撃に備えようとするスノーに対して、リエッジは腰部左右の装甲に格納された鋭いダガーを抜き、それをスノー目掛けて勢いよく投げ飛ばす。

投擲されたダガーはスノーの盾に直撃。それによってスノーの盾は砕けてしまう。

魔法を受け止める盾なら、物理攻撃で壊すしか無いとジェネは判断したのだ。


「今なら!」


これでスノーは身を守る物が無くなった。その隙にトドメを刺す。そう決意したジェネは、光刃を構えて接近する相手を待ち構える。


「貴方ほどのお方が考えてませんの?盾や剣にマジックコーティングをしているのですから、当然頭部にも……!そして私は光刃を弾かれた貴方の頭を反撃によって獲る!」


「そうかもしれないね……でも!」


「……?」


マジックコーティングの施された頭部に魔法は効かない。そう言うルージュに対して、そんな事は気にしてない様子をチラつかせるジェネ。

一体どういう事だと思ったルージュだったが、彼女は知らなかった。ジェネは、ごく一部の魔術師しか持ちえない最強の魔法を持っている事を……。


そして、リエッジのワイヤークローに捕まえられたスノーとリエッジの距離は限界まで縮まり、リエッジは光刃を勢いよく振り下ろす。


「光刃の1太刀を喰らえ!」


「無駄です!マジックコーティングによって貴方の光刃は弾かれ……!?」


リエッジの光刃はスノーの頭部に弾かれる、そう思っていたルージュだったが……彼女の愛機の頭部は、リエッジの光刃の1太刀によって両断されてしまった。


「勝者……ジェネ・レーナ・ライジン!!Bブロック勝者は、ジェネ・レーナ・ライジンです!!」


決闘場に響き渡るアナウンスが、ジェネの勝利を知らせる。

このBブロックを制した者、それはジェネだった。


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