第49話「ルージュの矜恃」

サイは第1トーナメントでAブロックを制し、第2トーナメントに出場する権利を得た。

客席からサイの戦う姿を見ていたアンジュは、サイの劇的な成長を目の当たりにして、その驚きを隠せなかった。


「サイ君凄いね!ジェネちゃんがシゴいたの?」


「まぁね。私が育てました。ふふん。」


アンジュの質問に対してドヤ顔でそう答えるジェネ。確かにサイはジェネによって強くなったと言っても過言では無いだろう。


「次はBブロックの決闘者の皆さんの番です。20分間の休憩を挟みますので、その後に決闘舞台に来てください。」


「だそうだ。行こうアンジュ。」


「やるぞ〜!」


「2人とも、が、頑張ってください!」


その時、Bブロックトーナメントが20分後に始まると言うアナウンスが決闘場に響き渡り、それを聞いたBブロックで戦うジェネとアンジュは、ゴーレムの最終確認をする為に控室へと向かい、ヘレスは2人を笑顔で送り出す。


そして、20分の休憩の後についにBブロックのトーナメントが開始の合図を告げる。


「では、Bブロックトーナメント戦を開始します。第1回戦は、ジェネ・レーナ・ライジン対ハルキー・エンセントリ」


第1回戦目はジェネと3年男子ハルキーとの対決。ジェネが使うゴーレムは、以前の決闘で使ったハイゴーレム、エッジに改修を施した、その名もリエッジ。

相手の使うゴーレムは獣のような四肢を持つ身体の上にゴーレムの上半身が搭載されたハイゴーレム、その名もハイロデュオ。


「第1回戦……開始!」


いよいよ始まったBブロックトーナメント第1回戦。しかし……。



「……ワンパンかよ……。」


「勝者、ジェネ・レーナ・ライジン!」


頭部を破壊されたハイロデュオを前にして空いた口が閉じないハルキー。

その試合は、ジェネのたった二撃の魔法で決着が着いたのだった。


試合が始まって出だしからリエッジはファイヤーショットを撃ち、それをハイロデュオは左手に装備された盾でガード。

これによって相手に隙ができた一瞬の内にジェネは瞬間移動魔法、ワープを使って相手の背後に回り、光刃のひと振りでハイロデュオの頭部を切り裂いた。


そして勝ち上がったジェネが戦う第2回戦、相手は2年の女子。使うゴーレムは大鎌を携えたハイゴーレム、デュナミロス。

リエッジは腰から抜いた剣で相手の大型の刀身を切り落とし、相手を無力化させた所を頭部を破壊して勝利した。


3回戦目、相手は2年の男子。使うゴーレムは身体の各部位に魔弾砲を備え付けた火力特化のハイゴーレム、その名もメガロバイト。

リエッジは、魔弾の雨を衝撃魔法、インパクトで跳ね除けて被弾しないようにし、相手に接近し相手の頭部を破壊し勝利。


第4回戦、相手はアンジュ。使うゴーレムは空中戦を得意とするハイゴーレム、その名もルミナイン。

普段は友人同士の2人だが、この時ばかりはライバルなので、2人とも容赦なく全力で挑む所存である。


「どっちが勝っても恨みっこ無しだからね!」


「もちろんそのつもりだ。」


南側からジェネを、北側からアンジュを見据える2人は、愛機を決闘舞台に立たせ、魔法操縦桿を握り締める。


「第4回戦……開始!」


2人の決闘者はアナウンスが聞こえた瞬間、自分のゴーレムをフライトアップで宙に浮かび上がらせ、相手目掛けて突撃させる。


「はぁーっ!!」


「行くよっ!!」


そして、2機のハイゴーレムはすれ違いざまに刃を振りかざし、空中でピタリと動きを止める。

果たして、頭部を切り裂かれたのはどちらか……決闘者に一時の静寂が駆け抜けた後、その勝者が決まる……。


「私の勝ちだね……!」


「……負けた!」


ジェネの言葉を聞いて、アンジュは自らの負けを悟った。その直後に、ルミナインの頭部が切り落とされる。

この勝負を制し、四天王と戦う権利が与えられたのは、ジェネに決まった。


「勝者……ジェネ・レーナ・ライジン!」


そうして、Bブロックのシード、ルージュと戦う相手はジェネだと決まった。その一方でルージュは、控室にて愛機の最終確認を行っていた。

そこに、ルージュの様子を確認する為にミリーが現れる。


「ルージュ様、愛機の調整は大丈夫ですか?」


「ええ、準備万端ですわ。この決闘、勝つのは私です!」


ミリーの問いかけに、不敵な笑みを浮かべてそう答えるルージュ。それを聞いて安心したミリーは、ロッソ隊の皆が彼女の勝利を祈願している事を彼女に伝える。


「私達ロッソ隊、ルージュ様を応援しています!」


「ありがとうございます。見ててくださいまし。私が勝つ所を!」


ルージュは愛機を片手に、ライバルの待つ決闘舞台へと歩を進める。

ルージュがその場所に現れ、決闘舞台に彼女が立つと、彼女のファン達は歓声を上げてルージュを迎え入れた。


「ルージュ様〜!!」


「頑張ってくださ〜い!!」


自分を応援してくれる生徒達に、手を振って応えるルージュ。客席から応援するロッソ隊の4人ももちろん彼女を応援していた。

4人とも彼女の勝利を疑ってはいない。例え相手がジェネだろうと、ルージュもそれに負けないようにこれまで絶え間ない努力をしてきた事を彼女達は知っている。


「ルージュ様、絶対勝ちますよね……?」


「絶対勝つよ!ルージュちゃんの新しい愛機、ホワイト・スノーなら!」


決闘舞台に愛機を置くルージュの姿を見ながら話し合うヘレスとアンジュ。

彼女らの言う通り、ルージュの愛機はニンギル・ヒルメスから大幅な改修を施した強化型、ホワイト・スノーへと進化しているのである。


ルージュは戦う。自分を慕ってくれる生徒達の期待に応える為に……。



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