第48話「勝利を掴め」

剣を交えるサイのフルアーマー・ジェネシスタと、カリバーのオーガ・ディザストロン。

この勝負を制した者がAブロックの勝者となり、第2トーナメントへの出場権を得るのだ。


「はぁっ!!」


カリバーは掛け声をあげ、ディザストロンに回し蹴りをさせてジェネシスタを蹴り飛ばす。

自分の身長の2倍もある相手に蹴り飛ばされたので、勢いよく吹き飛んだジェネシスタだったが、背部のバーニアを吹かして上手く空中での姿勢制御を取る。


「プチファイヤーショット!!」


そんなジェネシスタにカリバーは追撃を仕掛ける。脚部側面に備え付けられた砲門から小さな火球、プチファイヤーショットを連射し、相手を攻撃するディザストロン。

ジェネシスタ目掛けて飛んでくる無数のプチファイヤーショットに対して、サイは防御に徹した。


「結界!!」


サイはジェネシスタに結界を展開させ、ジェネシスタは自身を覆う長方形状の結界によって数発の火球から身を守った。その様子を客席から見つめるジェネ。


「結界はあれば決して損はしない魔法だ。よほど強力な魔法でない限りこれを突破する手段は無いからね。」


サイの戦いを見ながらそう呟くジェネ。サイは特訓中にも彼女から似たような事を聞いていた。

それと同時に、結界の弱点も教えられていた。


「ジェネの言ってた通り、確かに結界は強力な魔法だ。だけど……。」


サイがそう考えていると、カリバーは肩部に装備された、鋭く尖った武器を手に持ち、それをジェネシスタに向けて投擲する。

これは、ディザストロンを遠距離戦でも優位にする為にカリバーが作成した新武装、高硬度ブーメランである。


「!!」


それに対して、ジェネシスタは結界で身を守るのではく、フライトアップで飛行しながら向かってくるブーメランを回避し、さらに折り返して飛んでくるブーメランも回避した。

結界には「対魔法結界」と「対物理結界」の2種類が存在し、サイはこの1ヶ月で対魔法結界こそ習得できたが、対物理結界は習得できなかった。故にサイは、相手のブーメランに対してジェネシスタに結界を張って防御させるのではなく、回避行動を取らせてブーメランを回避させた。

だが、サイがブーメランに気を取られた一瞬の隙に、カリバーは攻勢に打って出ようとする。


「今だ!!ソードロンド!!」


彼がそう叫んだ瞬間、ディザストロンの剣の等身は分離し、5つの刃となり宙に浮かび上がった。

そして、ディザストロンがジェネシスタに剣本体を向けると、5つの刃はジェネシスタ目掛けて飛んでいき、相手に攻撃を仕掛ける。


「な……なんだこれは……!?」


宙を飛翔しながら突撃してくる5つの刃を見て、サイは驚く。

サイの目には、5つの刃がそれぞれ意志を持って、自分に襲いかかってきているようにも見えていた。

彼は光刃を振りかざしてソードロンドに対応していたが、このままでは自分が追い詰められていくだけだと考え、背部と脚部のバーニアを勢いよく吹かしてソードロンドを振り切り、ディザストロンとの急接近を試みる。


「やられる前にやる!!」


「やらせねぇ!!」


だがカリバーがそれを許すはずも無く……。ジェネシスタが振り切ったソードロンドは空中で連結し、まるで砲門のような形状になる。

そこから高エネルギーの光線が発射され、ジェネシスタの右足に直撃してしまう。

射線上にいたディザストロンは予め脚部バーニアを吹かして宙に飛び上がり、光線を回避していた。


「足が……っ!!」


足が破壊された事に驚いてしまい、その一瞬で隙ができてしまったサイ。

その機を逃すまいと、ディザストロンは膝の装甲の裏に隠された光刃柄を抜き、光刃を展開させる。


「しまっ……!!」


「トドメだ!!」


勝利を手にする為、武闘大会への出場を許可してくれた父と学長に報いる為、カリバーはディザストロンを操り光刃による最後の一撃を叩き込む。

そして、ディザストロンの光刃を受けたジェネシスタの頭部は……。


「なっ……!?」


「マジックコーティングに……助けられた!!」


ジェネシスタの頭部は光刃によって破壊されること無く、逆に虚をつかれたカリバーのディザストロンは、ジェネシスタの左腕の増加装甲に隠された物理武装、ニードルバンカーによって刺し貫かれ、破壊された……。


「勝者、サイ・トループ!Aブロック勝者は、サイ・トループです!」


そして、アナウンサーの一言によって、Aブロックを制したサイの名が第2決闘場に響き渡る。

カリバーを応援していたキーンとガリスは彼の敗北に落胆し、サイを応援していたロッソ隊の面々とジェネは彼の勝利に胸を撫で下ろした。

サイはいつの間にマジックコーティングを……そう思ったカリバーは彼に直接聞くことにした。


「サイ。お前いつの間にマジックコーティングを……?」


「この1ヶ月間……僕は過酷な特訓をしていましたが、その合間合間に、マジックコーティングの原料となる植物を探して、それをなんとかマジックコーティングにしようと頑張ってました。僕のような素人にマジックコーティングを作るのは難しく、それが完成したのは、大会が始まるギリギリの昨日の事でしたがら。」


「そうか……。」


サイは、なんとしてでもマジックコーティング塗料を作ろうとしており、その努力が実を結んで、ついに1人でマジックコーティング塗料を作る事ができたのだ。


「俺への最後の一撃に魔法を使わなかったのも、俺がマジックコーティングを使っているかもしれない、と考えての事か?」


「はい。いざと言う時のために物理武装を積んでおいて良かったです。」


「……やるな。」


「ありがとう……ございます。」


そうして、Aブロック最後の戦いは、マジックコーティングによって助けられたサイの勝利によって幕を閉じた。

ここからは、彼女達の番だ……。


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