第46話「小さな戦士の快進撃」
ついに始まったゴーレム武闘大会。生徒達は第2決闘場のモニターを見て、自分たちがどのブロックで戦うかを確認する。
サイとジェネは、自分がいるブロックの四天王は一体誰なのかと思いつつ自分のブロックを確認した。四天王は戦わずとも決勝まで行く事ができるシードと設定されている。サイとジェネが見たモニターに移されていたのは……。
「僕のブロックは……Aブロックでカリバー先輩か。最終戦まで勝ち残ればシードのカリバー先輩と当たるのか。それまでは負けられないな……!」
「私のBブロックにいる四天王はルージュだ。シードになれるとは、四天王とはいいご身分だね。」
「それでは、決闘者の皆さんは20分後のAブロックトーナメントまで控え室で待機していてください。」
自分達のブロックの確認をした生徒達は、決闘委員会の2年の女子生徒、メイルの案内で控え室に向かう事になる。
A〜Dまでの順番で行われる第1トーナメント戦は20分後に開始される予定であり、それまでの間後で控えている生徒達はゴーレムの最終調整を行い決闘への準備を整え、余裕のできた者は観客席での武闘大会の観戦が許されている。
サイは控え室で、20分の内にジェネシスタに強化武装を取り付け、ジェネシスタをどんな相手とも戦える万全な状態、言うなれば「フルアーマー・ジェネシスタ」へと換装させた。
20分という短い時間はあっという間に過ぎ去り、ついに第1トーナメント、Aブロック戦が始まりの合図を告げた。
「第1トーナメント、Aブロック戦開始の時刻が近づいています。Aブロックの生徒の皆さんは決闘舞台まで来てください。」
「行かなきゃ……。」
そして、メイルのアナウンスを聞いたサイは、控え室を出て決闘舞台へと向かっていく。
他のAブロックの生徒達も決闘舞台へと向かっていたが、皆やる気に満ちた表情をしており、サイは負けてられないな、と自分の頬を叩き自分を奮い立たせた。
ここは第2決闘場だが、客席が第1決闘場よりも増えたものの、決闘舞台自体は第1決闘場と大差なく、シンプルな闘技場のようなものになっている。
その理由は、生徒達が慣れ親しんだ決闘舞台で戦って欲しいからだと、学長は考えている。
「では、Aブロックトーナメント戦を開始します。1戦目は、サイ・トループ対アルマ・デンジス。サイさんは南方に、アルマさんは北方に立ってください。」
サイとその対戦相手の2年の男子生徒、アルマは決闘委員会の生徒の言う通りに、サイは決闘舞台の南方に、アルマは北方に立ち、それぞれの愛機を舞台に置き、2つの魔法操縦桿を出現させてそれを両手で握りしめる。
そして、決闘者の準備ができたのを確認し次第、メイルによってゴーレム武闘大会の火蓋は切って落とされる。
「それでは、ゴーレム武闘大会、第1トーナメント第1回戦、開始!」
メイルの言葉によって、第1トーナメントは、サイとアルマによる第1回戦は始まった。
アルマの駆るハイゴーレムは、ロングソードを装備し、茶色の装甲が特徴のゴーレム、その名はザングラム。
「行くぜ!」
アルマは早速ロングソードを抜刀し、サイに襲いかかる。その様子を見ているカリバーは、サイがいつもと違うことを感じ取った。
「サイの奴、ゴーレムにジェネシスタの魂は宿ってないのか?ジェネシスタの魂が宿ってるとしたら自分で操縦する必要は無いはずなのに……。」
カリバーの考察した通り、今のジェネシスタに魔導王の魂は宿っていない。サイはその状態で武闘大会に出ることを自ら望んだからだ。
サイはジェネに頼ること無く、向かい来るザングラムの動きを見極め、回避のタイミングを探っている。
「四天王を倒したと言えど相手はプチゴーレムだ!ロングソードの重さと鋭さを兼ねた一撃を喰らえば容易く頭部を破壊できるはず!喰らえ!」
そして、ザングラムは刃がジェネシスタに届くまでに接近し、そのロングソードを振り上げ、頭部を破壊する為に勢いよく振り下ろす。
その瞬間、サイはジェネシスタのバーニアを吹かして回避の動きをさせる。
「ここだっ!」
左側の腰部増加装甲に取り付けられたバーニアを吹かしたジェネシスタはサイから見て右方向に回避し、そのまま滑らかな挙動で飛行魔法とバーニアを上手く利用して宙に巻い、手元にジェネから教わった光刃を出現させ、それによってザングラムの頭部を切り落とした。
「なっ……!」
「頭、とった!」
「勝者、サイ・トループ!」
まさかプチゴーレムに負けるとは……と驚愕したアルマ。その瞬間、メイルによって第1回戦の勝者の名が決闘場に響き渡る。
「彼が使ってるの、大きさから見てプチゴーレムだよね?」
「それでハイゴーレムに勝てるなんて凄いな。」
「プチゴーレムでハイゴーレムを倒すなんて、そんな事できる人は貴重な存在だぞ。」
第1回戦の様子を見ていたギルドの職員達は、プチゴーレムでハイゴーレムに勝ったサイを見て、その実力に興味を示していた。
「まさかサイが自分の実力だけでハイゴーレムに勝つとはな。」
「サイ、成長したね……。私も魔導王の名にかまけてる場合では無いかもしれないな。」
戦うサイの姿を傍で見ていたカリバーと、観客席から見ていたジェネは、サイの成長を肌で感じ取り、彼に対する対抗意識を密かに燃やしていた。
ゴーレム武闘大会はまだ始まったばかりだが、ここからこの大会は例年にも増して激化していく事になる事を、彼らはまだ知らない……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます